【図表で解説!】マーケティングオートメーションに必要なシナリオ設計と事例

マーケティングにおける「シナリオ」とは、顧客の購買意欲を育成するためにストーリーを設計することです。
MAツール(マーケティングオートメーション)を用いてリードナーチャリングを行う上で、シナリオ設計は欠かせません。効果的に見込み顧客の意欲を高められるように、「どの状態の見込み顧客に」「どのタイミングで」「どのコンテンツを」提供するか、しっかりと考えられるようになりましょう。
この記事では、MAツールに使えるシナリオ設計の作り方について、詳しく解説していきます。
また、「マーケティングオートメーションについて、1から教えてほしい!」という方向けに、「マーケティングオートメーションの教科書」を作りました。ぜひ、こちらからダウンロードしてください。
マーケティングにおけるシナリオとは?
マーケティングにおけるシナリオとは、見込み顧客の検討フェーズに合わせて、適切なコンテンツを適切なタイミングで提供するための設計図を指します。
マーケティングにおけるシナリオの例を具体的に見ていきましょう。リード獲得のために出稿しているリスティング広告の場合、「検索ワードによって適切な広告文が違います。以下、2つの例を挙げて説明します。
- 例1:「マーケティング効率化」で検索した場合
- 表示される広告:「マーケ支援ツールなら○○」「BtoBマーケティングを支援します」
- →幅広い訴求の広告が表示される
- 例2:「マーケティングオートメーション 比較」で検索した場合
- 表示される広告:「比較表プレゼント」「MAツール活用方法」
- →1よりターゲットを絞った広告が表示される
前者は「課題がはっきりしていない」人に対する広告、後者は「マーケティングオートメーションの導入を検討中」の人に対する広告です。
前者はこれから課題に気づかせて自社製品の導入を検討してもらうことがゴール、後者は課題が分かっていて検討段階なので、検討ユーザーの背中を押してあげることがゴールと、各広告主が考え広告文を設定しています。
シナリオ設計するメリット
マーケティングオートメーションでシナリオ設計することで得られるメリットは以下の3つです。
・業務の効率化
シナリオ設計することで、これまで膨大な時間とリソースをかけて手動で行ってきた業務を自動化することができます。これにより、マーケティング業務の効率化につながり、空いたリソースを別の業務に充てることもできるでしょう。
・機会損失の削減
全ての見込み顧客に手動でアプローチを行うことは難しく、フォローできていない間に他社から購入していたということもあります。
しかし事前にシナリオ設計しておけば、特定の行動に対して自動でメールを配信するなど、適切なタイミングでアプローチを行うことが可能となり、機会損失の削減につながります。
・コンバージョン率の向上
シナリオ設計を行うことで、見込み顧客ごとに合わせてそれぞれ適切なタイミング・内容でアプローチを行えることから、コンバージョン率の向上につながることもメリットと言えるでしょう。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能
・メール配信機能
マーケティングオートメーションでは、メールの開封や、URLのクリック、資料のダウンロードなど特定の行動に応じて、あらかじめ設定したシナリオに沿ったメールが自動配信されます。
・リアクションに応じたシナリオ分岐
メール配信後の見込み顧客の行動に合わせ、次のシナリオを分岐させることもできます。
例えば、配信したメールから自社のWebサイトへのアクセスがあった場合、営業から直接電話でのアプローチを行い、シナリオを停止させますがメールが開封されたもののWebサイトへのアクセスがなかった場合は別のコンテンツのメールを配信する。といったように見込み顧客の行動に基づいてシナリオを分岐させることができます。
シナリオの作成手順
いきなりシナリオ作成に取り掛かろうとしても、どこから手を付けてよいか分からないですよね。そこで、基本的なシナリオ設計の手順を解説するので、参考にしてみてください。
シナリオ設計は「誰に、いつ、なにを、どのように」を基本に作成していきます。
手順1.ターゲットの設定
まずは、「誰」をターゲットにしたシナリオを作成するのか設定しておきましょう。
このとき「ペルソナ」を設定することでターゲットの設定がより明確なものになります。ペルソナとは、自社製品・サービスが最も価値を提供でき、今後もターゲットにしていきたい顧客「像」のことです。
シナリオは、自社のマーケティングをベースに考えるのではなく、顧客の購買行動をベースに設計していくため、まずは見込み顧客の輪郭となる「ペルソナ」を想定しておく必要があるのです。
BtoBの場合、ペルソナは「企業」と「購買に関わる担当者・決裁者」の2軸で考えます。企業のペルソナでは、企業属性(規模や業種)や自社製品に関わる業務課題の状況や製品の導入状況を想定しましょう。
一方、担当者・決裁者については、企業内で自社製品を検討する際に関わる人を洗い出し、どういう人がどの課題を持っているかを想定します。 もし、自社ターゲット企業の規模・業種などが幅広いのであれば、規模・業種、担当者の課題別など、さまざまなペルソナを考えましょう。
ペルソナについては、こちらの記事でも解説しています。
手順2.配信するタイミングを設定
ターゲットが明確になったら、次に「いつ」アプローチを行うのかタイミングを決めていきましょう。配信のタイミングや配信頻度によっては、見込み顧客との関係性を悪くしてしまうことも考えられるため、慎重に考える必要があるでしょう。
このとき、カスタマージャーニーマップを活用することも効果的です。
カスタマージャーニー
見込み顧客が最終的に購買するまでの行動や心理の流れを旅に見立てて表現したものを、マーケティングでは「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。
BtoBの場合、見込み顧客は課題を発見し、解決手段として製品導入を検討します。その様子を地図のようにまとめていくのです。例えば、「課題解決のためにセミナーへ参加し、自社製品に興味を持った」「解決法を検索していたら自社の記事を発見、製品資料をダウンロードした」など、その経路はさまざまです。
またカスタマージャーニーマップの作成をするときには、実際に顧客と接する営業担当から情報をヒアリングすると、購買するまでの様子を理解する良いヒントが得られるでしょう。
カスタマージャーニーマップの作り方は、こちらの記事でも説明しています。
手順3.配信するコンテンツの作成
次に「何を」配信するのか設定していきます。ここでは、設定したターゲットが興味・関心のあるコンテンツである必要があります。
見込み顧客との関係性構築のためにも、顧客視点に立ち検討することが大切です。見込み顧客の検討フェーズに合わせ、有益な情報を提供できるコンテンツとなるようにしましょう。
手順4.配信チャネルの設定
さいごに「どのように」コンテンツを配信するのか設定します。最も一般的なチャネルがEメールです。配信コストがかからず、ダイレクトに自社サイトへ誘導できるという利点があります。
しかし配信するターゲットやコンテンツによって最適なチャネルが異なるため、それぞれのメリットやデメリットを踏まえて設定する必要があるでしょう。
- 代表的なオンラインチャネル
- ・Eメール
- ・SNS
- ・自社サイト
- ・オウンドメディア
- ・アウトバウンドコール
シナリオ設計例
MAツールではホワイトペーパーや事例のダウンロード、セミナー参加、メール開封・URLのクリックなどを通して見込み度合いをセグメントし、シナリオ分岐を設定します。シナリオを設定しておけば、自動でメール配信ができます。
以下、MAツールでできるシナリオ例を見てみましょう。
ターゲット例1:売上規模△億、○○業界の会社
・シナリオ1:導入事例の配布で自社製品を検討フェーズに引き上げる
どのような状態の顧客に | ○○業界の将来が不安、自社サイトで公開している「〇〇業界の将来性」のホワイトペーパーを読んで課題に気づく |
---|---|
どのタイミングで | 自社サイトでホワイトペーパーをダウンロードした3日後 |
どのコンテンツを | 自社製品を導入し、成功した事例をメール配信で紹介。導入事例のダウンロードリンクを配布する。 |
→メールから導入事例をダウンロードした人をシナリオ2へ
・シナリオ2:アポ打診で営業に引き渡す
どのような状態の顧客に | 導入事例を読み、自社製品に興味を持つ |
---|---|
どのタイミングで | シナリオ2で導入事例をダウンロードした2日後 |
どのコンテンツを | アポ打診のメールを配信 |
ターゲット例2:営業支援ツールを使いこなせていない、運用方法が分からないが、具体的な解決方法が分からない人
・シナリオ1:セミナーで見込み顧客の購買意欲を育成、アンケートで確度が高い見込み顧客を抽出する
どのような状態の顧客に | 「営業支援ツール活用」セミナーに申し込んだ人 |
---|---|
どのタイミングで | セミナー参加直後 |
どのコンテンツを | アンケートを配信、回答した人にセミナー資料がダウンロードできるリンクを送信する |
→アンケートに回答「ツールの導入を検討」「乗り換えを検討」している人をシナリオ2へ
・シナリオ2:有望な見込み顧客を営業へパスする
どのような状態の顧客に | 営業支援ツールの運用法が分かった。ツールの導入、乗り換えを検討中。 |
---|---|
どのタイミングで | シナリオ1でセミナー資料をダウンロードした3日後 |
どのコンテンツを | アポ打診メールを送る |
このように見込み顧客の検討フェーズに合わせ、タイミングよくコンテンツを配信することを意識して、シナリオを設計していきます。
シナリオ作成のポイント
ここまでシナリオの作成手順や、シナリオ例について解説してきました。ここでは実際に作成する前に押さえておきたいポイントを説明します。
より多くの顧客データを集める
シナリオ設計では、ペルソナ設計やカスタマージャーニーの作成が重要になるため、顧客のデータを多く集めましょう。
顧客の情報は、展示会やセミナーでの名刺交換、お問合せフォームやセミナーでのアンケートなどから収集できます。顧客の情報が多いほど、効果的な施策を考える材料になるでしょう。
また、既存顧客にヒアリングを行うことも効果的です。既存顧客は何かのきっかけで自社製品やサービスに関心を持ち始めた人たちです。まずは既存顧客をペルソナとしてイメージし、課題に対して製品をどのように提案するかを考えましょう。
見込み顧客の課題やニーズは日々変化していくので、定期的にヒアリングしシナリオを改善していくのが大切です。
いきなり高度なシナリオを作らない
ハウスリストが少ない企業が分岐のありすぎるシナリオを作ってしまうと、最後までたどりつくリードがいなくなります。リードがいなくなりすぎる一歩手前でアポ打診の架電やメール配信をしてみましょう。
- 【高度すぎるシナリオ例】
- セミナー参加→お礼メール配信→開封し、導入事例を5分以上閲覧→別のメール配信→開封し、製品価格ページを5分以上閲覧
上記のシナリオの最後の「製品価格ページを5分以上閲覧した人」に対し、自動で「アポ打診メールが配信される」設定をし、まずはセミナー参加者500人にお礼メールを配信したとします。
メールを開封したのが30%(150人)→導入事例を5分以上閲覧したのが20%(30人)→導入事例ページを見たのが10%(2人)
この2人はたしかに有望なリードですが、必ずアポにつながるとは限りません。ここでアポ獲得に失敗したら営業に渡すリードがいなくなってしまいます。それならば、導入事例を5分以上閲覧した30人に営業が直接アプローチしたほうがアポイントに繋がりやすいでしょう。
特にMAツールを導入したばかりの頃は、自社製品にとってのホットリードが明確になっていないことがほとんどでしょう。まずはざっくりとしたシナリオからはじめ、試行錯誤してホットリードの行動パターンをつかんでいきながら、徐々にシナリオを作りこむのがおすすめです。
おわりに:改善しながら少しずつ効果的なシナリオを設計しよう
「シナリオ設計」というと少し難しそうな印象を受ける方もいますが、大切なのは、見込み顧客の課題や状況を理解して、それに合わせた営業やマーケティングを行うことです。一気に全て実施するのが難しい場合には、できるところから始めてみましょう。
また、シナリオは一度作って終わりではありません。施策を実行した後は必ずその結果を分析・改善し、次回に活かすことが大切です。思うような効果が得られない場合でも、改善と再チャレンジを繰り返すことでシナリオの精度を高めていくことができるでしょう。
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