営業ヒアリングのコツや役立つフレームワーク4選|商談成功の秘訣を徹底解説

商談全体は良い流れだった気がするのに、いざクロージングになると成約に至らないという経験はありませんか? その"良い流れ"は自分の思い込みかも知れません。普通のトークが上手でも、営業になると成功しない人もいます。
商談時に大切なのはトーク力ではなく、正しい流れでコツを掴んだヒアリングを行うことです。 今回は商談を成約へと導くヒアリングの流れとコツをご紹介します。
- ▼この記事でわかること
- ・営業ヒアリングの基本的な流れと進め方
- ・ヒアリングの質を高める5つのコツ
- ・商談で使える4つのフレームワーク
- ・営業ヒアリングが苦手な人に向けた克服法
営業におけるヒアリングとは?
まずは、ヒアリングについて改めて確認しておきましょう。営業においてのヒアリングとは、商談の中で提案を行う前のプロセスで、顧客のニーズや要求を理解するための聞き取りを行うことです。商談の中でも最も重要なプロセスであるといえます。
ヒアリングでは、営業担当者が顧客の問題や要望を把握し、それに対する解決策や提案を行います。顧客の課題やニーズを正確に理解することで、顧客に合わせた提案を行うことができるでしょう。これにより顧客との信頼関係を築き、その結果売上の拡大につながります。
なぜヒアリングが重要なのか?
ヒアリングが重要視される最大の理由は、顧客が真に求めているものを正確に理解することが、成果につながる提案の出発点だからです。たとえば、課題の本質を捉えずに商品・サービスを売り込んでも、顧客の関心は得られず、競合に流れる可能性が高くなります。
さらに、ヒアリングには以下のような効果があります。
- ・顧客との信頼関係を構築できる
- ・顧客のニーズに合致した提案ができる
- ・競合との差別化が図れる
- ・無理なクロージングが不要になる
特に最近では「顧客体験(CX)」の向上が営業成果に直結するようになっており、押し売りではなく「顧客に寄り添った提案」ができるヒアリング力の重要性が増しています。営業ヒアリングの正しい流れ営業ヒアリングは以下の流れで進めていくことが効果的です。
- 1. 事前準備
- 2. アイスブレイク
- 3. ヒアリング
- 4. クロージング
営業ヒアリングができない人は、営業の流れを具体的に把握できていないかもしれません。ここでは、準備からクロージングまでの流れをポイントと合わせて説明します。
1.事前準備
ヒアリングにおいて最も重要なことは仮説を立てることですが、そのためには「事前準備」がポイントとなります。 顧客との商談の前に顧客について詳細な情報を仕入れることで仮説を立てることができ、適切で的確なヒアリングが可能となります。
特にインターネットが普及している現代社会においては、事前にさまざまな情報を仕入れることができます。
たとえば、コーポレートサイトには企業規模、財務状況、事業内容が掲載されています。 また、競合他社や業界のことまで把握すると、業界において顧客の置かれている立場・状況が見えてきます。 包括的に情報を仕入れることで、顧客の営業的戦略や課題について、より現実的な仮説を立てることができます。
- ポイント
- ・顧客企業・業界の最新動向や競合環境を事前に調査する
- ・想定されるペルソナやキーマンを洗い出す
- ・課題仮説を複数パターンで立てておく
- ・情報収集にはSNS・口コミサイトなども活用する
参考記事:これだけは押さえる!訪問前に営業がすべき事前準備のフレームワーク
2.アイスブレイク
いきなり本題に入るよりも一旦アイスブレイクを挟むことで相手の会話のテンポを掴むことや、興味を引き出すことが出来ます。
アイスブレイクとは、特に初対面の人同士が出会うとき、その緊張をときほぐすための手法です。集まった人を和ませてうまくコミュニケーションを取りやすい雰囲気を作るテクニックであり、商談における関係構築の第一歩です。
よく使われるアイスブレイクの例としては「最近寒くなりましたね」、「今日はあいにくの雨模様ですね」などの季節や天候の話題があります。また、「事前準備」で得た業界に関する情報や共通点に基づいた会話なども、アイスブレイクとしては有効です。
- ポイント
- ・天気や季節など、誰もが答えやすい話題から会話を始める
- ・相手企業や業界のニュースなど、事前に調べた情報を活用する
- ・相手の話し方・ペースに合わせてテンポを調整する
- ・政治・宗教・否定的な話題などは避ける
参考記事:【鉄板ネタ11選】商談前に勝負が決まる!アイスブレイクとは?
3.ヒアリング
ヒアリングの基本は、相手が答えやすい順番で質問を組み立てることです。営業として本当に聞きたいのは「商品を買ってもらえるのか?」「提案させてもらえるのか?」といった「未来」の話です。しかし、「未来」のことはどうなるかわからない不確定な要素が多いため答えにくいのです。
そこで、「現在 → 過去 → 未来」の流れで質問するのが効果的です。顧客が現在抱える課題から、その課題がどう生まれたのか、そして今後どうしていきたいか(未来)へと、自然な会話の流れをつくることで、深いニーズまで引き出すことが可能になります。
この順番で聞くことで、顧客の現状の課題やその背景を理解し、それによって顧客の持つ理想を実現するために自社の商品・サービスが貢献できるという流れで商談を進められることになります。
- ポイント
- ・【現在】業務状況や課題、使っている製品・ツールを聞き出す
- ・【過去】課題が発生した背景、改善の取り組みなどを確認する
- ・【未来】理想の状態や今後の目標・スケジュールを尋ねる
- ・キーワードが出てきたら「なぜですか?」で深掘りする
4.クロージング
クロージングは、商談のゴールであると同時に、失敗すると関係性が断たれるリスクもあるデリケートなフェーズです。そのため、いきなり一回でクロージングせずに仮クロージングで温度感を確認することもポイントです。なぜならば、クロージングによって「買いません」「契約しません」と結論が出されてしまったら、それまでにかかった時間が全て無駄になってしまうからです。
クロージング前であればヒアリングのやり直しをすることで、クロージングしてからの引き返せない状態を回避できます。 仮クロージングでは、提案に対する相手の反応を探りながら、導入意欲や懸念点を把握します。仮の承諾を得たうえで、相手の意思やニーズが明確になってから本クロージングに進むことで、提案の通過率も上がります。
- ポイント
- ・最初に「仮クロージング」で導入意向や次のアクションを確認する
- ・相手の反応から、懸念点や導入時期などを読み取る
- ・懸念が見えたら、再度ヒアリングや提案内容の修正を行う
- ・本クロージングでは、導入後の成果や期待効果を具体的に伝える
営業ヒアリングで失敗しない5つのコツとは?
正しい流れを把握したら、次はヒアリングの実践フェーズです。ここでは、営業ヒアリングで失敗しないコツも理解してしっかり備えていきましょう。
1.質問攻めにならない「聞き役」としてのスタンスを持つ
ヒアリングでは、営業側が必要な情報を集めるために「質問攻め」になりがちですが、会話の主導権は顧客に持たせることが大切です。必要な情報を聞き出すことに必死にならず、主に相手に話して貰う環境を作ることを心掛けましょう。
相手を配慮せず、聞きたいことだけ聞く、話したいことだけ話すというスタンスでは相手の信頼を勝ち取ることはできません。営業はあくまでも「聞き役」に回ることが重要です。自分の思い通りに誘導したりせず、相手に気持ち良く話してもらえるように心掛けましょう。
- ポイント
- ・自分の話は最小限にとどめ、相手の話を中心に展開する
- ・話の腰を折らず、相手のペースに合わせる
- ・話の流れをコントロールしすぎない
2.顧客を主語にした会話を意識する
営業トークが「当社では」「私たちは」という自社視点ばかりになっていませんか?顧客の課題や目標を主語にした話し方に切り替えることで、顧客の関心や共感を引き出しやすくなります。
たとえば、「御社の業務フローではどのような点で負担が大きいですか?」のように、顧客の立場を起点にした質問を意識しましょう。
- ポイント
- ・「あなた(御社)」を主語にした質問を心がける
- ・自社視点の説明は、必要最小限+後半に配置する
- ・顧客の課題や感情に寄り添う
3.相手が話しやすくなる合いの手・リアクションを意識する
良いヒアリングには「適切なリアクション」が不可欠です。うなずき・共感・簡単な相づち・要約返しなどを活用することで、相手に「ちゃんと聞いてくれている」という安心感を与えます。
反応が乏しいと、相手も会話に熱を持ちづらくなり、本音を引き出せなくなるため注意しましょう。
- ポイント
- ・「なるほど」「それは大変ですね」などの共感ワードを使う
- ・話の要点をまとめて返す「リフレクション」も有効
- ・話に被らないように、タイミングを見て相づちを打つ
4.顧客に具体的にイメージさせる事例を活用する
ヒアリング中や提案前には、顧客に自社製品・サービスの導入後をイメージしてもらうことが重要です。
顧客が何に困っていて、何を必要としているのかをきちんと把握しましょう。そのためには、相手に具体的にイメージしてもらうため、他の顧客、特に同環境の事例を用意すると良いでしょう。プレゼンのときには、なるべく相手と同規模、同環境の事例を用意しておくと自社に置き換えやすくなり、イメージをわかせやすくなります。
- ポイント
- ・同じ業界・規模・課題の事例を事前に準備しておく
- ・顧客の言葉や状況に似た事例を意識的に選ぶ
- ・「導入前→導入後」の変化がわかる構成で伝える
5.商談を次のステップにつなげる意識を持つ
ヒアリングで終わらせず、次のアクションにつなげる視点を持つことが重要です。顧客の反応をもとに、「では次回〇〇をご提案いたします」「一度お見積りにまとめてみましょうか」など、相手が自然に次の行動をイメージできるように話を締めると、商談の成功率も上がります。
- ポイント
- ・ヒアリング中も「次に進める条件」を探り続ける
- ・クロージングにつながる伏線を張っておく
- ・ヒアリング結果をその場で軽く要約し、次回アクションを示す
ヒアリングに役立つ4つのフレームワーク
ヒアリングでは、必要な情報を必ず聞き出せるような流れを組むことも大切です。ここでは、商談の際に有効なフレームワークを紹介します。
1.SPIN営業法
SPIN営業法とは、以下4種類の質問によって顧客の課題を明確化し、提案の納得度を高めるフレームワークです。
- ・状況質問:Situation Questions
- ・問題質問:Problem Questions
- ・示唆質問:Implication Questions
- ・解決質問:Need-payoff Questions
「状況質問」は相手の現状を確認するための質問です。顧客の現状はどうなっているか、客観的事実を確認することが重要です。「問題質問」は相手の抱えている問題、困りごとを確認するための質問です。
顧客が認識している顕在的な問題や、認識していない潜在的な問題もあるため、「示唆質問」によって、相手に問題に気付かせることも重要となります。 そして、最後にここまでの質問によって相手に認識させた問題を解決するとどうなるか、を確認する質問が「解決質問」です。
その問題が解決するとどんな良いことが起きるのかをイメージしてもらうことで、提案内容を受け入れてもらいやすくなります。
参考記事:SPIN営業とは?~営業ヒアリングを効率化しよう~
2.BANT情報
BANT情報は、特に法人営業で失注リスクを減らすために必須の4要素を確認するフレームワークです。
- ・予算:Budget
- ・決裁権:Authority
- ・必要性:Needs
- ・導入時期:Timeframe
「いま抱えている課題に対していくらお金をかけることができて、誰がその意思決定を行い、その必要性がどのくらいあって、またいつまでに解決したいのか。」この情報の内容次第で、提案内容や、商談の進め方も変わってきます。
これらの情報をヒアリング中に押さえることで、商談の優先度判断や提案内容の具体化に直結します。BANTの内容がそろっていないと、いくら良い提案でも進展しないケースが多いため注意が必要です。
3.3C分析
3C分析とは、マーケティングの基本フレームですが、営業ヒアリングにも有効です。3Cは以下の3要素の頭文字です。
- ・顧客(Customer):相手企業の課題やニーズ、行動背景
- ・競合(Competitor):競合製品・サービスの存在や比較検討状況
- ・自社(Company):自社が顧客に提供できる独自価値や強み
ヒアリングでは、「顧客が何に困っていて、他と何を比較しているか、なぜ自社を検討しているのか」という視点で使うと効果的です。事前準備とも相性が良く、提案の差別化にもつながります。
参考記事:3C分析とは?自社が行うべき事業戦略を明確化する方法
4.MEDDIC
MEDDICは、特に決裁ルートが複雑な大企業営業や高単価商材の提案時に威力を発揮するフレームワークです。以下6つの要素から構成されます。
- ・測定指標(Metrics):数値での改善目標やKPI
- ・決裁権限者(Economic Buyer):意思決定に影響力のある人物
- ・意思決定基準(Decision Criteria):選定時に重視される条件
- ・意思決定プロセス(Decision Process):社内での承認フロー
- ・課題(Identify Pain):顧客が感じる本質的な痛み
- ・擁護者(Champion):社内で味方となってくれるキーパーソン
MEDDICは情報量が多いため、複数回に分けたヒアリングや提案フェーズで徐々に網羅していく設計が効果的です。
参考記事:BANTだけじゃない!顧客を見極めるMEDDICとは?
営業ヒアリングが苦手な人の対策とは?
ここまで、営業ヒアリングの重要性や失敗しないコツなどを確認してきましたが、「聞き出すのが苦手」「何を話せばいいかわからない」という悩みを持つ方も少なくありません。ここでは、営業ヒアリングが苦手な方向けに実践しやすい対策法を4つ紹介します。
1.話す順序に迷うならヒアリングシートを活用する
ヒアリング中に「何を聞けばよいのか分からなくなる」「質問が抜けてしまう」など聞き出すことを忘れてしまうのを回避するためにはヒアリングシートの活用が効果的です。ヒアリング項目は、提案する商品やサービスなどによって異なってきますが、基本の項目は同じです。ヒアリングシートを作成する場合は、最低限下記の項目を抑えてください。
- 基本項目の例
- ・現状
- ・課題やニーズ
- ・予算
- ・決裁権者、その他キーマン
- ・導入時期やスケジュール
- ・競合の検討状況
- ・想定される懸念点
聞けるようであれば、競合状況や導入の際にネックになりそうなポイントなども聞けると良いでしょう。
2.ロープレで具体的なトークイメージを持つ
商談やヒアリングに対して苦手意識のある営業マンは、話すことに慣れていないだけなことも多いでしょう。そこで、営業マン役と顧客役に分かれ実際の商談に近いスタイルでロールプレイングを行いましょう。
ロープレ後は、良かった点や改善すべき点をフィードバックしてもらうことで、実践に活かすことができます。また、切り返しや質問の想定も立てやすくなり、苦手意識をなくすことにもつながるでしょう。
3.トップセールスに同行してリアルなヒアリングを学ぶ
社内のトップセールスに同行し、実際の商談現場を見ることも非常に効果的な学習方法です。
優秀な営業は、相手の表情・トーン・沈黙の空気感などを敏感に読み取りながら、絶妙な間と質問を使って会話を進めています。そうした「言葉にならない情報」の扱い方は、テキストだけでは学べないポイントです。
4.苦手な相手タイプ別に対策を持っておく
営業ヒアリングの難しさは、相手の性格や対応スタイルが十人十色であることにもあります。特定のタイプ(無口・感情的・細かいなど)に苦手意識がある場合は、事前に対処法を想定しておくことが有効です。
- よくある苦手タイプと対策例
- ・無口で反応が薄いタイプ:クローズド質問から始めて徐々に深掘る
- ・話が脱線しやすいタイプ:要点を都度整理して戻す
- ・論理重視で細かいタイプ:具体的な数字やロジックを中心に話す
- ・感情的・防御的なタイプ:共感を優先し、反論は避ける
タイプごとに仮説を持って臨むことで、ヒアリング中の焦りを抑え、自信を持って対応できるようになります。
さいごに
営業が上手な人の多くは聞き上手の人ばかりです。商品の素晴らしさを売るよりも会社や相手のことを深く理解し、問題解決に真剣に向き合うことで相手の本音を引き出すことにつながります。
正しい流れとコツを理解し、日ごろから繰り返すことで確実に営業力はUPするでしょう。





