そのヒアリング、非効率かも? ~SPIN法から営業ヒアリングを考える~

「営業には、トーク力よりも"聞く力"が大切です!」という話をよく聞きます。営業のスキルとして、確かにこれは基本中の基本だと思います。決しておしゃべりが上手ではない営業でも良い成績を出す方もたくさんいますし、逆に、私も営業を受ける場面がたくさんありますが、ひたすら一方的に商品の説明をされたりすると、元々そのサービスに興味があったとしても、気分が下がってしまうということがあります。ですので、「営業は"聞く力"から始まる」というのは、誰からも異論はないことなのだろうと思います。
そこで今回は、この営業にとっての「聞く力」をもう少し掘り下げて、この「聞く力」をどう捉えるべきか、売るものの違い・商談の規模を軸にして考えてみたいと思います。
売るものの違いとは、この記事では大型(契約金額が年間数百万円~数億円)と小型(月額数千円~数万円)の商談の違いと定義しておきたいと思います。
大型商談の場合
まずは大型商談からみていきましょう。
関連する書籍も沢山出版されていますが、《SPIN営業法》はご存知でしょうか?セールスパーソンの行動様式を統計分析した英国人行動心理学者のニール・ラッカム氏により開発・体系化されたセールスの技法です。簡単に言いますと、
- ・状況質問(Situation)→顧客の現状を理解する
- ・問題質問(Problem) →顧客のニーズを明確にし、気付かせる
- ・示唆(Implication)質問→問題の重要性を認識させる
- ・解決(Need payoff)質問→理想の状態をイメージさせる
という段階がありますよ、と書かれています。非常にわかりやすいと思います。特に大型商談をする場合には、このステップで質問することが効果的だと思いますし、ポイントは、顧客が質問に回答していくと、頭の中が整理されて購入意向が高まる効果がありそうな点だと思っています。
小型商談の場合
さて次に、小型商談の場合はどうでしょうか?
私は、基本は顧客への質問プロセスは前述の大型商談と同じパターンで間違いはないと思っていますが、ただし、話の順番が異なってくるのではと思っています。なぜなら、小型商談の場合、短時間の商談あるいは少ない訪問回数でクロージングまでを要求されるからだと思います。要するに、商談は効率的に!ということが求められるのです。
ですので、大型商談の質問の順番は、S→P→I→N でしたが、小型商談の場合は、S→N→I→P(発音の仕方はわかりませんが・・・)の順番でも良いだろうと考えています。
- 状況質問(S) ○○様の部署は主にどういった役割を担ってらっしゃるのですか?
- 解決質問(N) 当社で提供できる製品(サービス)では、こんな問題解決ができますが、ご興味ありますか?
- 示唆質問(I) 現在の状況で、このサービスを導入せずに、結果的に機会損失などで無駄が発生していた場合どうしますか?
- 問題質問(P) やっぱりこれって問題だと思いますよね?
このような流れでしょうか。ではなぜそうなるのでしょうか。
大型と小型の商談の大きな違いは、提供するサービスや解決できる範囲の大きさと言っても良いと思います。すなわち、小型の商談の場合には、解決できる領域はある程度限られており、最初からその限定的な解決範囲に興味をもっているかどうかによって、その後の商談に進むか進まないかの判断をつけることが必要です。
また、数を多く売ることで売上目標の達成を目指すパターンが多いと思います。つまり、「受注コスト」と言ってしまうと味気ない感じもしてしまうのですが、その単価をある程度抑えていかないと事業や会社の成長はついてきませんし、営業が担当する企業が増えてくると1社あたりに多くの時間を費やすことも難しいのだろうと思います。
また、この考え方にはもう一つのメリットがあると思っています。小型の商談で扱うサービスは数を多く売るため、営業マンの人数も増える場合も多いと思いますが、そういう場合、営業マンの提案スキルの標準化に悩みをもたれるケースもあると思います。しかし(聞き方は別にして)解決質問で、サービスに興味があるか?ないか?は、ある程度誰でも聞けると思いますので、そこを徹底していれば、その後の商談管理は比較的楽になるだろうとも思います。
理想としては、顧客の潜在意識から問題意識を顕在化させ、そこに自社のサービスを活用して、理想の状況をイメージしてもらう、S→P→I→Nの流れで商談ができれば完璧なのだと思いますが、小型商談の場合、時間的にも人員的にも、そこまでの余裕がないのが実情ではないかと思います。
さいごに
"聞く営業"は良い営業ですが、小型の商談やサービスが増えてきている今、"聞く営業"がイコールデキる営業であるとはかぎりません。扱っている商材やサービスによっては、ある程度早めの段階で相手の興味度合いや商談の確度によってアプローチを変えるなど、営業の仕組み化をおこなうことも、考えてみてはいかがでしょうか。
解決質問より先に話しが進まなかった顧客には、定期的なメールマガジンなどで、各社の解決事例などを読んでもらうことで、その後に興味をもってもらうことも重要だと思います。
もちろん状況によっても異なるとは思いますが、小型商談を扱ったりスキルが標準化しない営業チームで、潜在顧客へのアプローチから課題提起・意識変革までを現場の営業が担当するのは、もしかしたら非効率なことなのかもしれないと考えてみましたが、みなさんはどのようにお考えでしょうか?
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