【図解あり】ファネルとは?マーケティングでの使い方や分析方法・活用事例まで完全解説

ファネルとは、多数の見込み顧客が商品・サービスを「認知」してから「購入」するまで、ふるいにかけられ段々と少数になっていく様子を図式化したものです。マーケティングに携わる人であれば、一度はこの用語を聞いたことがあるのではないでしょうか。売上をアップするには、ファネルの概念・考え方を理解して効果的な施策を打つことが大切です。今回は、ファネルの意味を図解で解説し、事例を交えながら分析方法をご紹介していきます。
BtoBマーケティングには、ファネル以外にも押さえておきたい考え方やフレームワークが多くあります。
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- ▼この記事でわかること
- ・ファネルとは何か、基本概念と役割
- ・ファネルの種類と具体的な活用例
- ・ファネル分析に役立つツールの活用方法
ファネルとは?
ファネルは直訳すると「漏斗」という意味です。漏斗は、逆三角形のすり鉢状の形をした器具であり、これを商品を認知してから購入に至るまでの顧客の購買フェーズに当てはめて図式化したものが、マーケティング用語の「ファネル」です。
ファネルは認知から購買へ進む各段階で、見込み顧客の数は徐々に減っていきます。たとえば、商品の名前だけ知っている人はたくさんいますが、商品に興味を持ち、購入を検討し、実際に購入するとなると、人数が段々と減っていきます。その様子を図式化すると、ちょうどファネル(漏斗)の形になるのです。
ファネル分析はなぜ重要?
商品やサービスをより多くの顧客に購入してもらうためには、購買フェーズのどの段階に課題があるのか明確にし、適切な改善策を講じる必要があります。ファネル分析では、実際の売上データなどと照らし合わせながら購買フェーズを可視化することで、顧客がどこで離脱したのかが明確になり、離脱の原因や課題を見つけやすいのです。
「商品を認知したばかりの顧客に購入を促す」「とにかく広告費を使って認知度を上げる」などの的外れな施策を実施しないためにも、ただデータの数値を眺めるだけでなくファネルの段階ごとで適切なマーケティング施策を実行することが重要です。
ファネルが「古い」と言われる背景
最近では、「マーケティングファネルは古い考え方だ」といった意見も聞かれるようになりました。その理由の一つが「消費者行動の多様化」にあります。
ファネル分析は、消費者が購買に至るまでの「認知」から「購入」のフェーズを直線的に進むことを前提とした手法です。しかし、インターネットの普及などによって顧客が収集できる情報量は急増し、複数の商品を比較・検討することが容易になりました。その結果、現在では顧客の購買に至るまでの行動は多様化し、直線的ではなくなってきていることから、ファネル分析は今では通用しない古い考え方という意見が聞かれるのです。
ただし、上述した内容は主にBtoCでの話であり、BtoBにおいてファネルはいまだ有効な価値のある考え方とされています。たとえばBtoCでは、商品の情報収集をしている間に別の商品に興味が出て、当初求めていた商品ではないものを購入することもあります。しかしBtoBでは、商品の選定者や決裁者など関係者が複数おり、企業の予算で購入をするため、個人の興味で商品の変更や購入が決まることはありません。
このように、BtoBの購買フェーズはBtoCに比べてシンプルで直線的であり、マーケティングファネルは今でも有効な考え方であるといえます。
ファネルとカスタマージャーニーの違い・関係性
マーケティングにおいて「ファネル」と「カスタマージャーニー」は混同されがちですが、それぞれの概念は異なります。
ファネルは、見込み顧客が商品やサービスを認知し、興味を持ち、購入に至るまでのプロセスを段階的に絞り込んで捉えるフレームワークです。一方、カスタマージャーニーは、顧客がサービスや商品と出会い、接点を持ちながら購買・利用・継続まで進んでいく一連の体験や行動の流れを可視化したものです。
たとえば、ファネルは「認知→興味→比較→購入」というステージに注目しますが、カスタマージャーニーでは「どのチャネルで知ったのか」「どんな感情を抱いたのか」「どのコンテンツが意思決定に影響したのか」など顧客目線のタッチポイントと感情の変化にフォーカスします。
つまり、ファネルは企業側の視点での行動段階の把握、カスタマージャーニーは顧客側の視点の可視化といえます。両者を併用することで、マーケティング施策はより具体的かつ効果的になり、見込み顧客に合わせた最適なアプローチが可能になります。
マーケティングファネルの3つの種類
マーケティングファネルには3つの種類があります。それが「パーチェスファネル」「インフルエンスファネル」「ダブルファネル」です。それぞれ詳しく解説していきます。
1. パーチェスファネル【認知から購入までの心理】
パーチェスとは英語で「購入・購買」のことを指し、消費行動の流れを図式化したものです。「認知→興味・関心→比較・検討→購入・申込」という段階を経るに従って、だんだん少数に絞り込まれていく様子が、逆三角形の漏斗のような形になることを表しています。
パーチェスファネルは、購買に至るまでの心理プロセスの変化を示した略語、AIDMA(アイドマ)モデルを発展させて生まれた考え方です。マーケティングの世界でファネルというと、まずはこのパーチェスファネルを指すことが多いでしょう。

2. インフルエンスファネル【他の顧客に与える影響】
パーチェスファネルとは逆に、消費者が購入した後の行動を図式化したものがこのインフルエンスファネルです。
インターネットやSNSの普及に伴い、だれでも気軽に情報を発信できるようになったことにより、消費者による商品・サービスのレビューが容易に発信され、情報が多く集まるようになりました。その結果、購入後の消費者が自ら商品の広告塔となりえるようになったのです。
とくにBtoCの業界では、消費者の口コミやレビューが多く集まりやすく、企業の広告などよりも大きな影響を与えやすくなっているため、「消費者にどのようなイメージを持ってもらいたいか」「周りの人に対してどのように紹介してもらえるか」を検討する際に利用する概念です。

3. ダブルファネル【購入前から購入後までの一連の行動】
これまでご紹介したパーチェスファネル・インフルエンスファネルを組み合わせ、より大きな効果を生み出そうとする考え方です。
インターネット上にレビューなどが多く登場するようになった結果、消費者が購入を検討する際に参照する情報として、口コミやレビューも入るようになりました。その結果、SNSでの発信や友人・知人への紹介を通して、商品の認知拡大や検討の後押しができるようになるという考え方も広まっていったのです。

ファネル分析の活用方法
ファネル分析の概要が理解できたら、実際に活用して効果的な施策を打っていきましょう。ここからは、ネットショッピングの例を使ってファネル分析の方法を解説していきます。
分析例①ネットショッピングをファネル分析する
まずは、ネットショッピングで買い物をする際の行動をファネルの各段階に当てはめていきましょう。
たとえば、「商品一覧を見る」→「商品詳細を見る」→「カートに入れる」→「購入」が一般的なネットショッピングでの購入までの流れになります。各段階から次の段階に進んだ人の数字を集計して、ファネルに書き込んでみましょう。
下の図のように、商品一覧を100人として、商品詳細が80人、カートに入れるが20人、購入が10人だったとしたらば、「商品詳細までは見たが購入意欲を持てなかったユーザーが多い」ということや、「カートに入れたにも関わらず購入しなかった人が5割もいる」ということが分かります。
分析結果から考える改善施策を
分析の結果、「もっと商品詳細の情報を魅力的にしよう」「カートに入れたら、最短距離で購入できるようなボタン配置にしよう」という改善施策が立てられます。また、そもそもの商品一覧100人という数字が少ないと感じるのであれば、「より認知量を増やしていくための施策を打つ必要がある」と考えることもできます。
このように、ファネル分析によってゴールとなるアクションに至るまでの課題が明確になり、商品やサービスの売上アップのために適切な施策を打つことができるのです。
【参考】BtoBでの各段階(フェーズ)の施策・コンテンツ例
今回は、ネットショッピングという身近な例を取り上げましたが、ファネルはBtoBマーケティングで有効な分析方法です。
各段階から次の段階へ少しでも多くの見込み顧客を遷移させる(ナーチャリングする)ためには、適切なコンテンツを提供する必要があります。ここでは、各段階ごとの具体的なコンテンツ例を参考としてご紹介します。
- 【認知】
- イベント登壇、オウンドメディア、展示会、レスポンシブ広告、ディスプレイ広告、SNS、外部メディアへの掲載
- 【興味・関心】
- メルマガ、ホワイトペーパー、セミナー
- 【比較・検討】
- Webサイト、サービス詳細資料、導入事例、レビューサイトの口コミ
- 【購入・申込】
- 無料トライアル
分析例②BtoBセールスをファネル分析する
次に、BtoBの営業活動における行動をファネルの各段階に当てはめてみましょう。
たとえば、「リスト作成」→「電話・メールでの初回接触」→「商談設定」→「提案書提出」→「受注」という流れが一般的な営業活動のプロセスになります。各段階でどれだけの顧客が次のフェーズに進んだかを数値で可視化してみます。
100件のリストから初回接触ができたのが60件、商談に進んだのが30件、提案書を提出したのが15件、最終的に受注したのが5件だったとします。この数値から「初回接触の成功率は高いが、商談以降の成約率が低い」というボトルネックが見えてきます。
- 分析結果から改善施策を考える
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このような結果から、以下のような改善施策が立てられます。
- ・商談フェーズ以降のコンバージョン率を向上させるために、提案書を見直す
- ・顧客ニーズのヒアリング精度を高めるトレーニングを実施する
- ・受注率が低い業界・ターゲットを見直し、最適なリストを精査する
また、そもそものリスト作成数が少ないと感じる場合には、リード獲得施策を強化してファネルの入口を広げる必要も出てきます。このように、セールスプロセスをファネル分析することで、営業活動全体のボトルネックを明確化でき、効率的な営業戦略の立案につなげることができるのです。
営業部門でも使える!ファネル分析の応用方法
上述した分析例のように、ファネル分析は営業部門でも活用することができます。たとえば、マーケティングでは「認知」→「興味関心」→「比較検討」→「購入」としていたフェーズを営業部門では「テレアポ」→「訪問」→「クロージング」→「成約」のように設定し、各フェーズに顧客数を当てはめることで、どの段階に課題があるのか可視化することができるのです。
また、訪問からクロージングの段階で購買検討者の割合が下がっている場合、「営業資料の内容をわかりやすくする」「プレゼンスキルを高めるために先輩とロープレを行う」「サービス知識を深め、顧客からの質問に的確に答えられるようにする」などの対策が考えられます。
このように、営業部門でもフェーズごとの課題を明確にすることで、段階ごとに応じた効果的な施策を講じることができるようになります。
ファネル分析に役立つツールの活用
ファネル分析を正確かつ効率的に行うためには、SFA、CRM、MAといったツールの活用が効果的です。これらのツールを導入することで、営業やマーケティングの各段階における数値を可視化し、課題の発見や改善施策の立案を支援することができます。
SFA(営業支援ツール)
SFA(Sales Force Automation)は、商談管理や案件の進捗、行動履歴などを一元管理するツールです。営業ファネルの「初回接触」→「商談」→「提案」→「受注」といった各ステージごとのコンバージョン率を把握でき、どこで顧客が離脱しているかを可視化できます。
CRM(顧客管理ツール)
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報の蓄積・管理を行うツールで、顧客ごとの接点や行動履歴を時系列で追うことができます。ファネル分析では、リード育成や顧客ロイヤリティの段階を把握するのに役立ちます。
MA(マーケティングオートメーション)
MAツールは、見込み顧客の行動をトラッキングし、スコアリングやナーチャリングを自動化するツールです。マーケティングファネルの「認知」→「興味」→「検討」フェーズでの施策効果を数値化できるため、効率的なリード育成につながります。
これらのツールを組み合わせて活用することで、マーケティングから営業まで一貫したファネル管理が可能となり、施策の最適化や成果の最大化が実現できます。
MAツールについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
【2024年版】MAツールとは?おすすめツール5選を徹底解説!
まとめ:ファネルの活用で適切なマーケティング施策を
闇雲に広告配信を強めたり、商品の魅力を長々と語ったりしても、それ相応の結果が出るものではありません。場合によっては何の効果もないものに、一生懸命コストやマンパワーを掛けてしまった、ということもあります。
しかし、しっかりとファネル分析していけば、どの段階の顧客に対してどのような施策を打つべきかが明確になります。さらに、各段階の顧客心理の移り変わりに注目すれば、ターゲットの特性が具体的になり、広告配信時の訴求先をさらに絞っていくこともできるかもしれません。ファネルを上手に活用してマーケティング活動で成果を出しましょう。