4P分析とは?顧客ニーズに合わせた商品戦略を立案する方法

マーケティングに関わる業務をしている方であれば、一度は聞いたことのある4P分析。自社のマーケティング戦略の立案を行う際に活用する最もメジャーなフレームワークです。 この記事では、4P分析についての基本から具体的な活用場面についてご紹介します。
また、マーケティング活動で押さえるべきフレームワークは他にもたくさんありますが、その中でも特に重要な10のフレームワークの解説と、印刷して使えるテンプレートをご用意しました。ぜひこちらもご覧ください。
4P分析とは?
まず4P分析の「4P」とは、
- ・Product(製品)
- ・Price(価格)
- ・Place(流通)
- ・Promotion(販促)
の4つの頭文字を取ったものです。
商品やサービスを販売する際、顧客のニーズに応える製品を提供するために、
- 「何を」
- 「いくらで」
- 「どこで」
- 「どのようにして」
売るのかといった4つの領域を分析し、企業側視点のマーケティング戦略を立案します。では、それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
- Product(製品)
- Productは「何を売るのか」にあたり、製品やサービスのコンセプトについての設定を行います。
顧客に購入してもらうためにどのような品質、デザインにするのか、さらに購入後の保証などについてもProductとして考えます。 - Price(価格)
- Priceは「いくらで売るのか」にあたる部分で、価格の設定を行います。
価格設定で顧客層が決まることも多いため、製品価値との整合性のとれた価格設定を行う必要があります。 - Place(場所)
- Placeは「どこで売るのか」、製品を顧客に届ける流通経路の設定をします。
実店舗での販売を行うのか、インターネット販売か、顧客層に合わせた販売経路を設定することが大切です。 - Promotion(プロモーション)
- Promotionは「どのようにして」製品を顧客層に知ってもらうのか、また購入してもらうためのプロモーション方法を決めていきます。
いくら良い製品であっても認知されなければ販売につながらないため、重要な要素と言えます。
4P分析と4C分析の違いと関係性
4P分析と類似したフレームワークに4C分析があります。4C分析の「4C」とは、
- ・Customer Value(顧客価値)
- ・Cost(コスト)
- ・Convenience(利便性)
- ・Communication(コミュニケーション)
の4つの頭文字を取ったものです。
4P分析が企業側視点の戦略であるのに対し、4C分析は買い手側、つまり顧客目線で考えたマーケティングです。
これまでは企業主体の製品開発や販促が主流であったことから、4P分析を活用したマーケティング戦略が主流でしたが、時代の変化と共に顧客主体の考え方へと変化してきました。こうした背景から、4P分析と4C分析の双方向からの視点で考え、より適切なマーケティング施策を立案することが重要視されてきているのです。
では、対になる4Pと比較しながら4Cの要素について見ていきましょう。
4P | 4C | |
---|---|---|
Produc (製品) | ⇔ | Customer value (顧客価値) |
Price (価格) | ⇔ | Customer Cost (コスト) |
Place (場所) | ⇔ | Convenience (利便性) |
Promotion (プロモーション) | ⇔ | Communication (コミュニケーション) |
- ・Customer Value(顧客価値)
- 顧客価値とは、顧客側が考える製品やサービスの価値のことです。商品の品質だけでなくパッケージやブランド力、ニーズに合っているかなど、あらゆる観点から顧客にとって価値のあるものになっているかを考える必要があります。
またこの「Customer Value」は4P分析の「Product」と対の関係となり、設定したProductが顧客のニーズを満たしているか、顧客にとって価値のあるものになっているかも考慮する必要があります。 - ・Customer Cost(コスト)
- 4C分析の「Customer Cost」は4P分析の「Price」と対になります。
企業側の利益ではなく、4P分析で設定したPriceが顧客のコストとして「妥当な価値があるか」ということを考慮します。また、商品の価格だけでなく購入にかかる時間や、交通費も顧客のコストと考え、その製品に対して顧客はどれだけコストをかけてくれるのか考える必要があります。 - ・Convenience(利便性)
- 製品の購入しやすさである「Convenience」は「Place」と対になります。
インターネット上での販売は、移動コストや、時間的コストがかからず、いつでも購入できるため一見利便性が高いと判断できますが、決済方法や、ウェブサイトの使いやすさなどといった顧客層に合わせた利便性も考える必要があります。 - ・Communication(コミュニケーション)
- 「Communication」は「Promotion」と対になります。このコミュニケーションでは、企業側が売り込みを行うのではなく、顧客側が求める情報を届けることで企業と顧客の良好なコミュニケーションを図ることが求められます。
このように企業と顧客の双方向からの視点で考えることで、適切なマーケティング施策を検討することができるのです。
3C分析との違い
混合しやすいフレームワークとして3C分析もあります。
3C分析とは、
- ・Customer(顧客)
- ・Competitor(競合他社)
- ・Company(自社)
この3つの要素から競合他社や市場環境を分析するフレームワークです。分析のポイントを3つに絞ることで比較的少ない情報量から分析を行うことが可能となります。企業の置かれている状況を客観的に見た成功要因や課題を発見し、自社が今取り組むべきことを明確にすることができます。
この3C分析で得たデータをもとに、4P分析ではマーケティング戦略の立案を行います。
- ・Customer(顧客)
- Customerの分析では、市場や顧客といったターゲットについての分析を行います。
市場分析では、自分たちではコントロールできない部分である、消費や景気、流行などについての分析をします。さらに、競合状況や自社の収益性についての分析を行い、2つの分析結果から、顧客のニーズや価値観への影響を把握します。 - ・Competitor(競合)
- 次にCompetitorについての分析を行います。先に分析した顧客・市場の変化に対応した競合がどのような結果だったのか、またその結果につながった要因について把握します。
- ・Company(自社)
- Companyの分析では、自社がこれから取り組むべき戦略を洗い出します。これまでに分析してきた顧客・市場、競合分析の結果と照らし合わせることで、競合企業に対抗できる手段となる差別化ポイントを見つけだします。
マーケティング戦略における4P分析の位置づけ
一般的にマーケティング戦略の立案には6つのプロセスがあり、4P分析はそのプロセス中の1つです。ここでは、マーケテイング戦略を立案・実行するための一連の流れについて解説していきます。
1.環境分析と市場機会の発見(3C分析・SWOT分析)
マーケティング戦略を立案するためには、まず自社を取り巻く業界の内部環境と外部環境の情報収集を行います。今企業が置かれている状況を客観的に把握することで、自社が参入できる市場機会の発見につながります。
ここで環境分析を行うことで、競合他社との差別化を図り、顧客ニーズをより明確に洗い出すことができるのです。その結果、自社の課題の明確化だけでなく、強みを活かした戦略立案につながります。
この環境分析には、3C分析やSWOT分析が活用されます。
2.自社の立ち位置の明確化(STP分析)
ここではSTP分析を活用し、市場ニーズの細分化、狙うべき市場の絞り込みを経て、その中で自社の立ち位置を明確にしていきます。
- ・セグメンテーション
- セグメンテーションでは、市場に存在する膨大な数の顧客を顧客の持つニーズごとにグループ化していきます。このセグメンテーションを行うことで自社の商品やサービスを必要としている顧客層を明確化します。
- ・ターゲティング
- セグメンテーションされた市場の中から、自社がターゲットとする市場を絞るのがターゲティングです。自社の強みを活かすことのできる市場を判断します。
- ・ポジショニング
- ターゲティングにより選択した市場の中で、自社の立ち位置を把握していきます。ここでは、競合他社の価格や、機能、品質などを調査し、自社製品と差別化できる点や優位性について明確にします。
3.マーケティングミックス(4P・4C分析)
STP分析を行い自社の立ち位置が明確化したら、商品やサービスをどのように販売していくのか、具体的な実行戦略の設計を行います。
このことをマーケティングミックスと言い、ここまでに解説してきた4P分析を用いて策定していきます。
4.マーケティング戦略の実行と評価
策定した戦略を実行に移し、その結果をもとに評価を行います。結果が伴わない場合は、再び戦略の見直しを行います。
4P分析の進め方
ここでは、4つのPそれぞれの分析方法について詳しく見ていきましょう。
- Product(製品)を分析する
- Productでは、製品やサービスのコンセプトについて設定します。
自社商品やサービスにはどのような強みがあるのか、顧客に購入してもらうためにどのような品質、パッケージ、デザインにするのか、さらに購入後の保証といったアフターフォローについても考えます。
また、自社の製品を選んでもらうためには、他社と差別化できる点なども踏まえたコンセプトを考えることが必要です。 - Price(価格)を分析する
- Priceでは、価格の設定を行います。価格は「利益」「需要」「競合」の3つの視点を考慮し分析してみましょう。
購入するかどうかを大きく左右する要素となるのが価格です。価格設定で顧客層が決まることも多いため、製品価値との整合性のとれた価格設定を行う必要があります。
また低価格帯設定の場合、適正な利益を得られるのかどうかも設定時に分析する必要があります。 - Place(流通)を分析する
- Placeでは、製品を顧客に届ける流通経路の設定をします。
流通経路とは、商品やサービスを「どこで売るのか」ということです。実店舗での販売にするのか、ネット販売か、自社の顧客層に合わせた販売経路を分析し、設定することが大切です。 - Promotion(販売促進)を分析する
- Promotionでは製品を顧客層に知ってもらい、購入してもらうためのプロモーション方法を決めていきます。
いくら良い製品であっても認知されていなければ販売につながりません。Promotionでも自社の顧客層に合わせて、有効な販路を分析することが重要です。
商品の魅力をより多くの人に知ってもらうことのできる販売促進方法を検討しましょう。
4P分析を行う際のポイント
4P分析の手法を解説してきましたが、ここからは分析の際に意識しておきたいポイントについても確認しておきましょう。
4つの「P」は統合して考える
4P分析を行う際は、1つの要素のみを活用しても効果的な結果が出せません。4つのPにはそれぞれ関係性があり、全ての分析を行うことで整合性の取れた戦略の立案につながります。
また4つの関係性を踏まえたバランスも重要な視点となります。例えば、低価格を売りにした製品に対し、巨額の広告費をかけた販促を行っては適正な利益の獲得が難しくなります。他にも、高価格帯の商品を低価格志向のスーパーで展開しても売れる可能性は低く、その商品に合った適切な販売場所とは言えません。
こうならないためにも、4Pの矛盾を解消しバランスの取れた戦略の立案を行う必要があるのです。
4C分析も合わせて行う
4P分析は企業側の視点で分析を行う手法であり、戦略を立案する際には、顧客側の視点である4Cとの整合性も踏まえて検討する必要があります。
例えば、高性能な自社サービスを開発しても、それを必要とする顧客がいなければビジネスとして成功することはありません。商品が売れるには、顧客が求める製品であること、ニーズを満たすことが必要となるのです。
そこで重要となるのが、企業側の視点だけでなく、顧客視点で商品やサービスを分析することです。4P分析と4C分析、2つの各要素を組み合わせることで、自社に最適なアプローチ方法を検討することができるでしょう。
サービス業では7P分析も活用する
4P分析は主に、メーカーでのマーケティングに効力を発揮するとされており、サービス業ではうまく活用できていませんでした。そこで登場したのが、4P分析に「3つのP」を加えた「7P分析」という分析手法です。
3つのPとは
- ・People(人)
- ・Process(プロセス)
- ・Physical Evidence(物的証拠)
となり、Peopleは、接客スタッフやサービスの質、Processは、サービスをどのように提供するのか、プロセスの工夫などを指します。さらにPhysical Evidenceは、ミシュランガイドの星の数や、顧客満足度のように、サービス業という目に見えない価値を客観的評価でアピールすることを指します。
このように7P分析を活用することで、サービス業のマーケティング戦略にも効果的な分析を行えるようになります。
まとめ:顧客視点に立つことを忘れない
いかがでしたでしょうか。4P分析では、戦略を立案することがゴールではありません。分析の結果、いかに顧客のニーズや課題に合った商品にしていくかということが重要となります。
分析の際は顧客側の視点に立つことを忘れずに、日々変化する市場に合わせ分析結果の見直しを行うことが、企業にとって意味のある分析となるでしょう。