営業分業化は必要?メリット・デメリットと成功のポイントを解説

皆さんの会社の営業活動はどのように行われていますか?特に法人営業の現場では、アポ取りから商談、受注後のフォローまでを一人の営業担当が担う「一気通貫型」の体制がまだ多く見られます。しかし、その負担は大きく、教育や人材定着の難しさから組織全体のリスクにもつながります。
最近では、雇用体系の流動化にともない、営業活動の分業化も進んできています。この記事では、そんな営業プロセスの分業化についてご紹介いたします。
- ▼この記事でわかること
- ・営業分業化とは何か、従来の一気通貫型営業との違い
- ・営業分業化の種類
- ・営業分業化のメリットとデメリット
- ・営業分業化を成功させるための導入ステップと実践ポイント
分業化とは?
分業化とは、業務やプロセスを複数の人やチームで役割ごとに分担し、それぞれが専門性を発揮できるようにする仕組みのことです。営業の世界においては、従来の「一気通貫型」(アポ取りから商談、受注後のフォローまで一人で担当)の体制に代わり、
- ・新規顧客へのアプローチ
- ・商談や提案
- ・受注後のサポートやカスタマーサクセス
といった各フェーズを分業する形が広がっています。
一気通貫型から分業化へ
| 一気通貫型 | 1人の営業担当がすべてのプロセスを担う。顧客理解が深まりやすい反面、教育コストや離職リスクが大きい。 |
|---|---|
| 分業化営業 | プロセスごとに役割を分担し、専門性を活かして効率化を図る。組織全体の生産性向上や人材活用の幅が広がる。 |
これまで法人営業では、自身の担当する企業や地域などが決まっていることも多く、案件の創出から受注後のアフターフォローまで、各々が全ての営業プロセスを担っていました。このような状況下では、「いかに全ての営業プロセスをこなせる優秀な営業を育てるか」が重要視されてきたと言えます。
しかし、終身雇用制度が崩壊し雇用の流動化が進んでいる現代では、育成に時間とコストがかかる従来の一気通貫型の営業体制は、「業績への直接的なリスク」となることが指摘されるようになりました。
- ・全てのプロセスをこなすため、教育に時間がかかる
- ・雇用の流動化により、離職してしまうリスクが高い
- ・組織拡大のハードルが高い
上記のような理由から、企業が安定した組織運営を行い利益を生み出すためには、1人の優秀な営業に依存することは大きなリスクが伴うのです。
営業の分業化が求められる背景
上記のような背景から法人営業のプロセスに対する考え方も徐々に変化しており、重要視されるポイントも「いかに優秀な営業を育てるか」から「いかにリスクを分散させるか」にシフトしてきていると言えます。
そこで注目されたのが営業プロセスの分業化です。1人が全ての業務を行うのではなくそれぞれに人員を配置することで、業務ごとの特定の範囲のプロフェッショナルを育成し、一部の優秀な営業に依存しない組織力の向上が求められるようになってきました。
営業プロセスごとの分業モデル

営業活動は「リード獲得 → 商談化 → 提案・受注 → 顧客フォロー」という流れで進みます。分業化の仕組みを導入すると、それぞれの役割に特化したチームを育成でき、組織全体のパフォーマンスを高めることができます。ここでは代表的な4つの役割を紹介します。
1.マーケティング
マーケティングは営業活動の最初の段階を担い、見込み客(リード)を獲得する役割を持ちます。具体的には、広告運用やSEO、オウンドメディア、展示会やセミナーの開催、ホワイトペーパーの配布、SNSの発信など、多様な施策を通じて見込み顧客を集めます。
営業分業化の観点では、マーケティングが「量と質の両面で適切なリードを提供できるか」が後続のインサイドセールスやフィールドセールスの成果を大きく左右します。そのため、マーケティング活動と営業活動を切り離すのではなく、連携を前提とした仕組みづくりが重要です。
2.インサイドセールス
インサイドセールスは、マーケティングが獲得した見込み顧客に対して電話・メール・オンライン会議など非対面でアプローチを行い、商談機会を創出する役割を担います。
特にBtoB営業では、マーケティングが獲得するリードの中には「すぐに商談できる顧客」と「まだ検討段階にある顧客」が混在しています。インサイドセールスは顧客のニーズや温度感を見極め、タイミングを見てフィールドセールスへとつなぐことが使命です。
また、インサイドセールスには以下の2つの形態があります。
- ・SDR:問い合わせや資料請求など、顧客からのインバウンドに対応する役割
- ・BDR:アウトバウンドで新規顧客へ積極的にアプローチする役割
こうした分担により、効率的かつ体系的に商談を増やせるのがインサイドセールスの強みです。
3.フィールドセールス
フィールドセールスは、実際に顧客との商談を行い、提案からクロージング(契約)までを担当します。従来型の営業職といえば、このフィールドセールスを指すことが多いでしょう。
分業化の仕組みにおいては、フィールドセールスは「商談・提案・クロージング」に集中できるため、成約率を高めやすい点が特徴です。顧客への提案資料作成やプレゼン、価格交渉といったスキルが求められるため、営業の花形ともいえるポジションです。
インサイドセールスが温度感の高い見込み客を引き渡してくれることで、フィールドセールスはより効率的に成果を出すことが可能になります。
4.カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、契約後の顧客を支援し、導入の定着や成果創出をサポートする役割です。特にSaaSやサブスクリプション型ビジネスでは、解約を防ぎ、継続率を高めるために欠かせない存在になっています。
従来は「アフターフォロー」や「カスタマーサポート」と呼ばれていた領域ですが、カスタマーサクセスは単なる問い合わせ対応ではなく、顧客が自社サービスで成果を出せるように積極的に支援する点が特徴です。結果的に、アップセル・クロスセルの機会創出やLTV(顧客生涯価値)の向上につながります。
営業活動を分業化する際には、カスタマーサクセスを営業体制に組み込むことで「新規獲得だけでなく顧客維持も強化する」戦略が実現できます。
カスタマーサクセスについては、以下の記事をご覧ください。
カスタマーサクセスの取り組みでLTV最大化へ
分業化のメリット
営業分業化には、単なる業務の切り分けにとどまらず、組織全体の成果を高める多くのメリットがあります。ここでは、営業分業化の代表的なメリットを具体的に見ていきましょう。
教育工数の削減による生産性の向上
営業プロセスを分業化することで、教育にかかる工数の削減に大きく寄与します。たとえば、同じ法人営業のプロセスの中にあるといっても、
- (A)案件を創出するテレアポのスキル
- (B)顧客に合わせた提案書を作成するクロージングのスキル
この2つは全く違います。業務単位での育成を行うことで、全ての営業プロセスの教育を行う時よりも早期のスキル向上・立ち上がりが期待できるようになります。
適材適所のリソース配置による組織力の向上
また、個々人の性格や特性に合わせた配置も可能になるため、多様な人材の確保や組織の拡大にも耐えうる組織運営が可能になります。優秀な人材といっても性格や特性は千差万別で、コミュニケーションスキルの高い人材もいれば、課題分析が得意な人材もいます。
分業を行うことによって、得意な分野に集中して業務を行うことができ、組織全体のパフォーマンスを高めることが可能です。
業務集中による効率性の向上

分業化を進めると特定の業務に集中できる環境が整備されるので、効率が上がることが期待できます。たとえば見込み顧客創出のためのテレアポをするのであれば、それにあった環境で行うことが望ましく、成果も上がりやすいです。
分業をすれば、テレアポインターは最適な環境下で電話に集中することができますし、外回りをする営業は、移動中は顧客からのメールをチェックするなど、移動中でも適切な業務を行うことができます。このように、業務集中型の環境整備をすることで業務ごとの効率を上げ、全体的な生産性も向上すると言えます。
分業化のデメリット
営業分業化には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットや課題も存在します。これらを理解したうえで導入することが、組織全体の成果最大化につながります。
情報共有の手間が増える
一気通貫型では営業担当がすべてを把握できていましたが、分業化ではメンバー間の連携が必須になります。CRMやSFAなどを導入し、誰でも最新情報にアクセスできる仕組みを作らなければ、情報の抜け漏れや対応の遅れが発生する恐れがあります。
業務が単調化し、モチベーション低下につながる
分業化によって担当領域が狭まると、同じ業務を繰り返すことになりがちです。とくにテレアポやフォロー業務のように単調に感じやすいプロセスでは、担当者のモチベーションが下がりやすく、離職リスクにつながる可能性があります。
評価や成果の測定が難しくなる
一人がすべてを担当する場合と比べ、分業化では成果が分散されます。そのため「どのプロセスがどれだけ売上に貢献したか」を数値化する必要があり、KPI設計や評価制度を工夫しなければ不公平感が生じる恐れがあります。
分業化を進めるステップ
営業分業化は、ただ業務を分ければよいというものではありません。自社の状況に合わせて段階的に導入していくことが成功の鍵です。ここでは代表的な6つのステップを紹介します。
1.現状の営業プロセスを洗い出す
まずは自社の営業活動を「リード獲得 → 商談化 → 提案・クロージング → 契約後フォロー」といった流れで整理します。属人的に進められている部分や、非効率になっている部分を可視化することが出発点です。
2.ボトルネックを特定する
営業成果を阻害している要因を探ります。
- ・アポイントが不足しているのか
- ・商談数は十分だが受注率が低いのか
- ・契約後のフォローが弱く解約率が高いのか
など、プロセスごとの課題を明確にすることが重要です。
3.分業化するプロセスを決める
すべてを一度に分業化するのではなく、まずは課題が大きい領域から切り出します。たとえば「テレアポ専任チームをつくる」や「カスタマーサクセス部門を新設する」といった形で小さく導入するとスムーズです。
4.適材適所で人員を配置する
社員の強みや適性に応じて役割を振り分けます。コミュニケーション能力が高い人はインサイドセールス、分析や資料作成が得意な人はクロージング担当など、適材適所を意識することで成果が出やすくなります。
5.ツールや仕組みを整備する
分業化を進めると情報共有が複雑になるため、CRM、SFA、MAツールなどを導入してプロセス全体を可視化します。さらに、チャットツールやナレッジ共有の仕組みを整えることで、部門間の連携がスムーズになります。
ツールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
知っておきたい!MA・SFA・CRMの違いとは?
6.定期的に効果を検証・改善する
分業体制を導入して終わりではありません。KPIを設定し、商談化率や受注率、解約率などの数値を追いながら、定期的に体制を見直すことが大切です。改善を繰り返すことで、営業組織全体のパフォーマンスが高まります。
分業化を成功させるためのポイント
営業分業化は、単に業務を分けるだけでは十分な成果を生み出せません。チーム全体が高いパフォーマンスを発揮するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1.情報共有を徹底する
分業化を進めるときには、メンバー間での情報共有や連携が非常に重要になることに留意する必要があります。これまでは自分だけで把握してさえいればよかったものも、分業化が進み関わるメンバーが多くなれば情報共有は必須となります。
この点はチャットツールを使ったりして、共有しやすい環境を整えましょう。
2.メンバーのモチベーション維持に配慮する
営業プロセスを分解してリソースを配置すると、同じ業務を繰り返し行ったり、事務的な作業に業務が偏るメンバーも出てくると思います。そういったメンバーにもしっかりと気を配り、モチベーションが維持できるような環境を整えたりマネジメントを行う必要性があります。
ただ、本質的には、いかにこの仕事が重要かなどをしっかり伝えていくことが重要と言えるでしょう。
3.顧客体験を損なわない仕組みを整える
分業化は効率性を高めますが、顧客からすると「毎回担当者が違う」という不満につながりかねません。これを防ぐためには、「顧客接点ごとの役割を明確化する」「顧客情報を一元管理し、どの担当者でも同じ水準で対応できるようにする」など、顧客にとって一貫した体験を提供できる体制が重要です。
まとめ
営業分業化とは、一気通貫型の営業体制を見直し、リード獲得・商談創出・クロージング・契約後フォローといったプロセスを分担する仕組みです。これにより教育コストの削減や適材適所の配置、業務集中による効率化が実現できます。
一方で、顧客体験の分断や情報共有の負担、モチベーション低下などの課題も伴います。導入にあたっては、現状分析から始め、段階的に分業化を進めることが重要です。さらに、情報共有の徹底、評価制度やツールの整備、メンバーのモチベーション管理を行うことで、営業分業化は組織全体の成果を最大化する有効な戦略となります。
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