【図解】購買プロセスとは?BtoBとBtoCの違い・購買行動モデル・活用法を解説

BtoB企業では、以前に比べターゲット顧客に商品・サービスを購入してもらうことが非常に難しくなってきています。これは市場の変化やテクノロジーの大きな発展により顧客の購買プロセスが大きく変化しているからです。
顧客企業も市場の変化に合わせて、購買対象商品の品質や価格をより吟味するようになり、購買に至るプロセスの登場人物も各フェーズに合わせて、より複雑になってきました。そのため、BtoB企業が商品・サービスを買ってもらうためには、まず顧客の購買プロセスを考えることがとても重要になります。
今回の記事では、BtoBの取引においての購買プロセスについて考えてみましょう。
- ▼この記事でわかること
- ・購買プロセスの定義と購買行動・消費行動との違い
- ・主要な購買行動モデル
- ・BtoB特有の購買プロセス
- ・購買プロセスを活用する際の注意点
購買プロセスとは
ここでは、購買プロセスの定義と、なぜ今その理解が重要なのかを解説していきます。
購買プロセスの定義
購買プロセスとは、顧客が商品・サービスを認知してから、比較検討し、最終的に購入に至るまでの一連の流れを指します。これは単なる「購入の瞬間」ではなく、情報収集・感情の変化・意思決定プロセスまで含めた包括的な概念です。
また、購買に関する用語には「購買行動」「消費行動」「購買プロセス」という似た言葉がありますが、それぞれ指す範囲が異なります。まず購買行動とは、顧客が商品を探す・比較する・実際に購入するといった具体的なアクションを指します。これに対して、消費行動は、購入後に商品やサービスを利用したり、口コミを発信したり、満足度に応じてリピート購入するといった行動を含みます。
そして購買プロセスは、この「購買行動」と「消費行動」をつなぐ心理的・行動的な流れ全体を表す概念です。顧客が課題を認識し、情報を集め、比較検討して意思決定に至るまでの一連のステップを示すものであり、単なる購入の瞬間ではなく、その前後の思考や行動を包括的に捉えたものといえます。
なぜ今、「購買プロセスの理解」が重要なのか
近年、顧客の購買プロセスは大きく変化しています。
- 情報チャネルの多様化
- 検索エンジン、SNS、動画、口コミサイトなど、顧客は多様な情報源から商品を比較・検討しています。そのため、企業は複数のチャネルをまたいだ一貫性のある情報提供やコンテンツ戦略が求められています。
- 購買行動のデジタル化
- BtoB市場でも、顧客は営業担当と会う前にすでに購買プロセスの7割前後を終えているといわれています。つまり、営業が接点を持つ時点で候補が絞られているケースが多いのです。
したがって、オンライン上での認知獲得から比較検討の段階までを支援できる仕組みづくりが欠かせません。
- 感情要素の影響
- BtoCだけでなくBtoBでも、「信頼できる企業か」「ブランドとして共感できるか」といった感情的要素が購買判断に影響を与えるようになっています。論理的な条件面を満たすだけでなく、顧客に安心感や共感を与えるブランディングが成果に直結します。
このような背景から、企業が効果的に営業・マーケティング活動を行うためには、「売り手の都合」ではなく「買い手のプロセス」を正しく理解し、顧客がどの段階にいるのかを見極めて施策を設計することが不可欠になっています。
BtoBの特徴とBtoCとの違い
BtoBの購買プロセスについて知るために、まずはBtoBの特徴やBtoCとの違いについて把握しておきましょう。
BtoBの特徴
1.購買までの関係者が多い
BtoBの場合、商品の購入には担当者と決裁者が異なる場合がほとんどです。担当者が商品についてリサーチし、決裁者が認可をして初めて購入が決定されます。また、購入金額が大きい場合には、社内の役員稟議を通す必要があることも多く、さらに関係者が多くなります。
一方BtoCの場合、担当者と決裁者が同じです。個人の買い物なので、どんな商品を選ぶのか、また実際に購入するのかも自分で決められます。
2.検討期間が長い
BtoBは担当者と決裁者が異なるため、他部門や役職者を巻き込んで検討したうえ、最終的には社内稟議を通す必要があり、成約までには数か月〜1年かかることもあります。
一方のBtoCは、車や家などの一部高額商品を除き、基本的には一人で決められるため、店頭で見たり、ネット広告で見かけたから買うといった行動になります。購買まで一瞬〜数日と検討期間が短いのです。
3.論理的かつ合理的な意思決定
BtoBで購入に至るには、「納期の明確さ」や「費用対効果の高さ」、「品質」などを総合的に見て購入の判断が下されます。このようにBtoBでは購入が論理的かつ合理的であることが求められます。
一方BtoCでは、「CMで見たから」、「好きなタレントが使っていたから」などの直感的な心理により購入が決定されることが多くあります。このようにBtoBとBtoCでは購入の意思決定にも大きな違いがあるといえます。
BtoCとの違い
さらにBtoCとの違いを図で確認しておきましょう。このようにBtoBはBtoCと比べ、購買に至るまでが複雑で難易度が高いといえるでしょう。そこでBtoB企業では、まず顧客の購買プロセスを考えることがとても重要になります。
代表的な購買行動モデル
顧客が商品やサービスを購入するまでの心理や行動を理解するために、さまざまな購買行動モデルが提唱されてきました。これらのモデルは、時代や情報チャネルの変化に合わせて進化しており、マーケティング戦略を考えるうえで欠かせない指標となっています。
ここでは、古典的なモデルからインターネット時代、そしてSNS時代に登場した代表的なモデルまでを整理し、それぞれの特徴を見ていきましょう。
これまでの購買行動モデル
購買行動を説明する古典的なモデルとして、代表的なものにAIDAやAIDMAがあります。
- AIDA
- ・Attention(認知)
- ・Interest(興味)
- ・Desire(欲求)
- ・Action(購買)
AIDAは、広告や営業活動を通じて「認知 → 興味 → 欲求 → 購買」という心理の変化を表したモデルです。
- AIDMA
- ・Attention(認知)
- ・Interest(興味)
- ・Desire(欲求)
- ・Memory(記憶)
- ・Action(購買)
AIDAに「記憶」を加えたもので、テレビCMや雑誌広告が主流だったマスメディア時代の消費行動を説明するために重視されてきました。
これらのモデルは、購買プロセスの基本形として現在でも参考にされますが、情報源や購買体験が大きく変化した現代においては補足が必要です。
インターネット時代のモデル
インターネットの普及により、購買行動には「検索」や「比較検討」といったステップが加わりました。代表的なモデルには次のようなものがあります。
- AISAS
- ・Attention(認知)
- ・Interest(興味)
- ・Search(検索)
- ・Action(購買)
- ・Share(共有)
AISASは、購買前の検索行動と、購買後にSNSや口コミで「共有」する行動を含んだモデルです。特にECサイトやオンライン広告との相性が良いといわれています。
- AISCEAS
- ・Attention(認知)
- ・Interest(興味)
- ・Search(検索)
- ・Comparison(比較)
- ・Examination(検討)
- ・Action(購買)
- ・Share(共有)
AISASをさらに細分化し、「比較」や「検討」の要素を明確にしたものです。特に高額商材やBtoB取引における購買行動を説明する際に有効です。
SNS時代のモデル
SNSが購買意思決定に与える影響が大きくなるにつれて、顧客が「共感」や「拡散」を重視する新しいモデルも登場しています。
- SIPS
- ・Sympathize(共感)
- ・Identify(確認)
- ・Participate(参加)
- ・Share & Spread(共有&拡散)
SNS上で共感し、自分ごと化し、参加して共有・拡散していく流れを表したモデルです。ブランドのストーリーテリングや共感を重視したマーケティングに活用されています。
- DECAX
- ・Discovery(発見)
- ・Engage(関係構築)
- ・Check(確認)
- ・Action(行動)
- ・eXperience(体験・共有)
消費者が情報を「発見」し、関与したうえで「体験」を重視するプロセスを示すモデルです。インフルエンサーマーケティングや体験型コンテンツ施策との親和性が高いとされています。
モデルごとの特徴・メリット・デメリット
| モデル | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| AIDA | 「認知 → 興味 → 欲求 → 購買」というシンプルな心理の流れを説明 | 広告や営業活動の基本理解に役立つ | 現代の複雑な購買行動には対応しきれない |
| AIDMA | AIDAに「記憶」を加え、マスメディア時代の消費行動を説明 | 購買前に記憶が果たす役割を重視できる | オンラインやSNS中心の購買行動には不十分 |
| AISAS | 「検索」と「共有」を追加し、インターネット時代を反映 | ECサイトやオンライン広告に適している | 高額商材やBtoBには対応しきれない |
| AISCEAS | 「比較」や「検討」を明確化したモデル | 高額商材やBtoB取引のプロセスに有効 | フローが複雑で理解や活用に知識が必要 |
| SIPS | SNS上で「共感 → 自分ごと化 → 参加 → 拡散」を重視 | ブランドの共感やコミュニティ形成に強い | 認知や検索といった要素は弱い |
| DECAX | 「発見 → 関与 → 確認 → 購買 → 体験」を強調 | インフルエンサーマーケや体験型施策に最適 | まだ新しい概念で事例が少ない |
購買行動モデルは時代やチャネルの変化に応じて多様化しています。すべてを網羅的に使う必要はなく、自社の商品やターゲットに合ったモデルを選ぶことが大切です。BtoBの高額商材や長期検討が前提の商材では、比較・検討を重視するAISCEASや、意思決定者の複雑な関与を想定したASICAといったモデルが有効です。
重要なのは、モデルをそのまま当てはめるのではなく、自社の顧客行動や購買データを踏まえて柔軟に活用することです。
BtoBにおける購買プロセス
購買行動モデルは消費者一般の購買心理を整理したフレームワークですが、BtoB市場にはより複雑で特徴的な購買プロセスがあります。特にBtoBの場合、担当者と決裁者が異なり、社内の複数部門が関与するため、購買の流れは長期化・複雑化しやすいのが特徴です。
それでは、顧客企業が商品・サービスの購入に至るまでのフローを具体的に見ていきましょう。
フェーズ1:「知る」
ありのままの状態から何かのきっかけで現状の問題を意識し、
- 「その問題はどれほど深刻なのか」
- 「同じ問題を抱えている企業はいるかどうか」
- 「その解決策とは何か」
を把握するために、情報収集・研究フェーズに入ります。ここまでは具体的な商品・サービスに対して、顧客のニーズはまだ潜在的です。
フェーズ2:「検討する」
情報収集の結果、問題の原因と解決策がある程度明確になってきました。現状を改善するために、「何をすべきか」「どのような施策を実施すべきか」という課題を整理する必要があります。
さらに、自社のリソースを参考に、要件を定義することができます。この要件が明確になると、その要件に合ったソリューションを提供している企業を探し、比較検討のフェーズに入ります。ここからは顧客のニーズが顕在化していきます。
フェーズ3:「選ぶ」
比較検討のフェーズを終えて選択肢を絞ることができました。これからは実際に営業担当者などの話を聞き、商品・サービスの理解をより深めます。案件を交渉するフェーズでは価格や機能の豊かさ、サポート体制等が勝負ポイントです。 顧客は、最終的に自社の問題を解決するために一番適切なものを選択し、導入します。
このように、顧客の課題や問題意識は無関心の状態から始まり、各プロセスを辿って商品の検討フェーズに進んでいきます。ターゲットとする顧客が現在どの段階にいるのかを理解しないと営業活動、マーケティング活動の成果に結びつけることは難しくなるといえるでしょう。
BtoBの購買プロセスを踏まえたマーケティング施策設計の手順
BtoBの購買フローを把握したうえで、ここからはマーケティング施策の設計方法についてみていきましょう。
1.購買プロセスの登場人物は誰か考える
BtoB市場はBtoCと比べ商品・サービスの購入に至るまでに様々な登場人物が出てきます。
たとえばIT商材の検討の場合、情報システム担当者が検討をしていても、最終的には部門長や役員の意思決定も必要であり、セキュリティや契約書関連は企業の法務チェックも入るなど、購買に至るまでの時間やプロセスが非常に複雑です。
各購買プロセスの中で自社の商品に対して、顧客企業のどんな登場人物がどのフェーズで出てくるか認識をしたうえで、営業・マーケティング活動を考えることが必要です。
2.各フェーズの登場人物はどのようなことを考えているのか
購買プロセスに対して各登場人物を考えたあとはそれぞれのフェーズでどんな課題やニーズを感じているか、そしてどんな情報を求めているかを考えていきます。同じ登場人物でも各フェーズによって必要となる情報やコミュニケーションも変わってきますし、つぎのフェーズへあげるためのハードルが出てきます。また同じフェーズで登場する人物であってもその人物の役割や立場によっても必要となる情報が違います。
もちろんこの購買プロセスは企業規模、業種などによっても顧客企業の状況は違いますので自社のターゲット顧客の状況や受注実績などの情報をもとに考えていくことが重要になってきます。
3.購買プロセスに合わせた営業・マーケティング活動を行う
ここまで顧客の購買プロセスを考えてきましたが、ここからは、それぞれのフェーズに合わせて自社の営業やマーケティング担当がどんな活動を行えば良いのか、考えていきたいと思います。
各フェーズによって営業が行うテレアポやメールマーケティングなどのPUSH型施策が必要な場合もあれば、Webサイトに集客をして様々なコンテンツを提供しながら、資料請求やデモ依頼につなげていくPULL型の施策も必要です。
特にWebコンテンツに関しては、担当者の役割やフェーズによって必要なコンテンツも違ってきますので、アクセス解析やマーケティングオートメーションツールなどをうまく活用して、どの顧客がどんなコンテンツを閲覧しているかを確認し、その興味や関心・フェーズに合わせて次の施策に結びつける活動も重要です。
常に「誰が」「どのプロセスの」「どの立場の人なのか」購買プロセスに関与する人たちの役割を理解したうえで、「今回のコンテンツは担当者向けに」や「今回は決裁者向けに」というように、ターゲットを決めたうえでメッセージを伝えた方がより相手の興味を引き出せます。
誰に向けたメッセージかを熟慮したうえで、オンライン、オフラインからの全方位的なアプローチをすることで、相手との関係性を構築していくことができます。
購買プロセスモデルを活用する際の注意点
購買行動モデルや購買プロセスは、顧客の意思決定を理解するうえで役立つフレームワークですが、あくまでも「典型的な流れ」を示したものに過ぎません。実際の購買活動には、次のような注意点があります。
ステップが省略される場合がある
顧客は必ずしも「認知 → 興味 → 検討 → 購買」と順を追うわけではありません。特にリピート購入や衝動買いの場合、いくつかのプロセスが飛ばされることがあります。そこで、リピーター向けには購入までの導線を短く設計し、すぐに行動に移せる仕組みを用意すると効果的です。
順序が前後するケースも多い
情報収集の前に口コミやSNSで「共感」から入る場合もあれば、先に価格を確認してから比較検討に進む場合もあります。モデルは直線的ですが、現実の購買行動はジグザグに進むことが一般的です。複数のチャネルで顧客と接点を持ち、どの入口から入ってきてもスムーズに検討段階へ進めるようにコンテンツを整備しましょう。
業種や商品によって最適モデルが異なる
高額なBtoB商材と日常的なBtoC商品では、検討期間も関与する人の数も大きく違います。モデルをそのまま当てはめるのではなく、自社の商材や顧客特性に合わせたカスタマイズが必要です。過去の受注実績や顧客データを分析し、自社に適した購買プロセスを再設計することが有効です。
環境変化によりモデルは常に変化する
SNSやレビューサイトの普及、生成AIやチャットボットなど新しい情報チャネルの登場により、購買行動は今も進化し続けています。モデルは「固定の答え」ではなく、変化に合わせて見直す必要があります。定期的に市場調査や顧客インタビューを行い、購買行動の変化を把握して柔軟に戦略をアップデートすることが重要です。
最後に
企業活動をおこなううえでは、自社の売上や事業拡大のために、どんなマーケティング施策を行い営業活動につなげていくか、つまり「売り方」中心の考え方になりがちです。
しかし、本記事でご紹介したように、顧客企業の「買い方」を中心に考えたマーケティング・営業活動に変えていくと、中長期的に顧客と良い関係が築け、以前よりも営業の生産性を高められ、自社の事業拡大につながるのではないでしょうか。
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