PEST分析でチャンスとリスクを発見する!手法と注意点

自社の事業戦略を立案する際には、自社を取り巻くさまざまな要因について分析する必要があります。その中の一つであるマクロ環境は、自社でコントロールできない部分でありながら、事業には大きな影響を及ぼします。そこでPEST分析を活用し、マクロ環境の分析を行うことで市場の変化で起こりうる「機会」と「脅威」を早い段階で発見し、事業戦略の設計を行う必要があるのです。
この記事では、事業戦略の立案の際にPEST分析を活用する方法と、注意点についてご紹介します。
また、マーケティング活動で押さえるべきフレームワークは他にもたくさんありますが、その中でも特に重要な10のフレームワークの解説と、印刷して使えるテンプレートをご用意しました。ぜひこちらも御覧ください。
PEST分析とは

PEST分析とは、外部環境をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)Technology(技術)の4つの要因に分類し、現在もしくは将来的に自社に与える影響や機会と課題を洗い出すための分析手法です。
自社を取り巻く外部環境には、マクロ環境とミクロ環境の2種類があり、PEST分析は自社でのコントロールが難しいマクロ環境の分析に適した手法といえます。常に変化し続けるトレンドや市場といったマクロ環境は、ビジネスにも大きな影響を与えるため、PEST分析を活用し、中長期的に外部環境を把握することで早い段階でリスクやチャンスを発見することが重要となるのです。
外部環境の分類
マクロ環境
マクロ環境とは、政治、経済、社会、技術といった企業にとって間接的に影響を与える自社ではコントロールすることのできない外部環境のことです。例えば、人口統計や流行の変化、技術革新などがこれにあたります。
PEST分析では、このマクロ環境を5年、10年といった中長期的なスパンで捉えます。
ミクロ環境
ミクロ環境とは、自社を取り巻く市場や競合他社など直接的に影響を与える外部環境のことです。例えば、市場規模や成長性、他社との競争状況などがこれにあたります。
ミクロ環境は、3C分析や5フォース分析といったフレームワークを使って分析することができます。
PEST分析を行う目的
PEST分析は、効果的なマーケティング戦略を立案することを目的としたフレームワークです。
ビジネスにおいて戦略や事業計画を立てるためには、自社の現状だけでなく競合企業、市場の将来性といった複数の要素を正しく把握し、分析することが必要不可欠となります。
PEST分析では、この複数の要素のうち、ビジネスに大きな影響を与えるとする社会情勢や経済状況といった自社でのコントロールが難しい外部環境を細かく分析し、自社に与える影響や機会と課題を洗い出すことができます。
PEST分析の4つの要素
ここでは、PEST分析の4つの要素について、それぞれ解説していきます。
P(Politics:政治的要因)
1つ目は政治的要因であるPoliticsです。
法律や法改正、減税や増税、政権交代など、事業に関連する政治的要因は多くあります。法改正など市場のルールを変化させるものは市場競争に関わる場合も多く、自社にどのような影響があるかしっかりと把握し分析する必要があります。
E(Economy:経済的要因)
2つ目は経済的要因であるEconomyです。
景気の変化や株価など経済の動向も事業に影響することが多くあります。国内だけでなく各国の経済状況なども踏まえ、中長期的に分析する必要があります。
S(Society:社会的要因)
3つ目は社会的要因であるSocietyです。
人口動態の変化や流行、ライフスタイルの変化、社会問題などが要因として挙げられます。例えば少子高齢化などの需要構造に影響を与える環境変化が起きたとき、タイムリーに変化に対応することができればビジネスチャンスとなることもあるため、事前の分析が重要といえます。
T(Technology:技術的要因)
4つ目は技術的要因であるTechnologyです。
ITやインフラ、特許の取得などは事業に大きく関連します。新しい技術により既存事業の競争力の低下が起きたり、反対に新規市場が生まれることもあるため、技術革新の流れを踏まえた事業戦略の設計が重要となります。
PEST分析の手法
ここではPEST分析の手法について6つのステップでご紹介します。
1.目的の設定
PEST分析の最終的な目的は環境分析を行うことで市場の変化を先読みし、この先の自社の新規事業のチャンスや、リスクを明確にすることです。
分析結果を意味のあるものにするためにも、何のために分析を行うのかまずは、明確な目的を設定しておきましょう。
2.情報収集
目的を設定したら、自社事業に関連しそうな情報収集を行います。
正確な情報を収集するためにも公的機関や業界団体から発信された情報など、信頼性の高い情報を集めましょう。
3.情報を4つの要素に分類
情報収集できたら「政治」、「経済」、「社会」、「技術」のPEST4つの要素に分類します。自社に影響を与える要素であるかどうか精査しながら振り分けましょう。
4.情報を事実と解釈に分類
PESTの4つの要因に振り分けた情報を今度は「事実」と「解釈」に分類します。
解釈を戦略に取り入れてしまうと、結果が伴わないことが多いため、PEST分析では事実だけを使って分析を行います。
5.事実を機会と脅威に分類
次に、収集した情報の事実のみを「機会」と「脅威」に分類します。
機会は自社にとってチャンスとなり得、脅威はリスクとなります。しかし、脅威が新規事業などのチャンスとなることもあるため、広い視野で分類することが大切です。
6.反映と実行
分析をしたことがゴールではなく、分析の結果を戦略の立案へと反映し、実行することがPEST分析の最終的な目的となります。
脅威を明確にすることでリスクを避け、機会を明確にすることで今後の事業戦略へと活かすことが重要です。また、短期的に行う施策なのか、長期的な戦略なのかを分類することでより明確な戦略の設計へとつながります。
PEST分析を行う際の注意点
PEST分析を行う際に意識しておきたい注意点について確認しておきましょう。
短期的な分析には向かない
PEST分析は、中長期的かつ大規模な外部環境の変化に対して行う分析であり、来月の事業戦略などの直近の設計を立てるために行うものではありません。
収集した情報の現状に対してではなく、今後の変化や市場の移り変わりに対応した事業戦略の設計をすることがPEST分析の目的といえます。
内部環境の分析はできない
マーケティング戦略の立案には、外部環境だけの分析では不十分であり、内部環境分析も合わせて行う必要があります。しかしPEST分析は、自社を取り巻く外部環境の変化を分析するフレームワークであり、企業の内部環境までは分析を行うことができません。
そこで、PEST分析以外の内部環境分析を行えるフレームワークを組み合わせて活用することが効果的です。
分析することが目的とならないようにする
PEST分析を行う際には、情報収集や分類など多くの工数があり、手間も時間もかかります。そのため、分析を行うこと自体に注力しすぎてしまい、本来の目的である「戦略の立案」が疎かになってしまうこともあります。
分析を行うことはあくまでも手段であることを忘れずに、本来の目的を見失わないように取り組むことが大切です。そのためにも、事前にしっかりと手順を理解し、分析を進めていきましょう。
PEST分析以外の環境分析フレームワーク
目的ごとに複数のフレームワークと組み合わせ、多角的に分析を行うことでより精度を高い戦略の立案につながります。ここでは、PEST分析と組み合わせることで、より効果的な分析にできるフレームワークを3つご紹介します。
・3C分析
3C分析とは、「顧客(Customer)」「自社(Company)」「競合(Competitor)」の3つの要素からマーケティング環境を分析するフレームワークです。PEST分析でマクロ環境分析を行った後、より詳細を明らかにする際に活用されます。
3C分析は、比較的少ない情報量で分析を行うことが可能なフレームワークで、企業の置かれている状況を客観的に把握し、成功要因や課題の発見、自社が今取り組むべきことを明確にすることができます。
・5フォース分析
5フォース分析とは、自社がさらされている脅威を、「業界内の競合の脅威」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つに分類することで、自社の収益性を分析するフレームワークで、環境分析における外部環境を分析する手法です。
独占状態である業界以外は、常に自社の存在を脅かす競合他社が存在します。このような環境下で生き残るためにも、収益性に影響を及ぼす5つの要因を分析し、自社を取り巻く業界を客観的に把握し、自社のマーケティング戦略の立案に活かします。
・SWOT分析
SWOT分析は、市場環境を分析できるフレームワークです。内部環境である「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」と、外部環境である「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの要素から構成されており、自社の強みだけでなく、課題となる弱みなど、さまざまな角度から自社を客観的に判断する分析手法です。
5フォース分析で得られた収益構造を反映させてSWOT分析を行うことで、より詳細で精度の高い戦略の立案を行うことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。常に変化し続ける市場の中で、自社でのコントロールが難しい部分についても分析を行うことで自社にとってチャンスを見つけるだけでなく、リスクに対しても早い段階で対応することが可能となります。またそのリスクがチャンスとなり得る場合もあるでしょう。
このように、自社を取り巻く環境をさまざまな視点で見ることで今後の成果へとつながる戦略の立案を行いましょう。