DevRelの潮流から考えるマーケティング手法のこれから
昨今DevRelという言葉が様々なイベントやメディアで散見されるようになってきました。これから更に注目されるであろうDevRelというマーケティング手法を今のうちから広めることで、多くの企業様にとってマーケティング施策の選択肢のひとつになればと思い、エンジニアである筆者が本記事にてご紹介します。
DevRelとは
そもそもDevRelとは何なのでしょうか?DevRelとは、開発者(デベロッパー)向けの製品/サービスを販売するベンダーが、ユーザーとの関係性を構築し、その結果として自社製品/サービスの認知を広げたり、ブラッシュアップを行うマーケティング手法のひとつです。
DevRelは"Developer Relations"の略で、似たような言葉だと
・Public Relations = PR
・Investor Relations = IR
などがあります。
PRが世の中に向けて、IRが投資家に向けて情報発信を行い関係性を構築するのと同じで、DevRelは文字通り「開発者向けに行うマーケティング手法」ということになります。(なぜDRじゃないかは不明ですが・・・)
DevRelの目的と必要性と背景
ではそもそもなぜDevRelという手法が必要とされ、注目されているのでしょうか。devrel.jpはDevRelについて
インターネットの発達により次々に似たようなサービスが乱立するような世の中において、自社のサービスと他のサービスの差別化を行うための手段である
と述べています。その中でも、teratail(開発者向けQ&Aサイト)のDevRel担当である木下氏によると
「ユーザーとの繋がりを作るとっかかりとして、開発者の勉強会はかなりの重要性を持っている」
とのことです。特に東京は会場も多いため、かなり頻繁に開催されているようです。
このような考え方はザッポスに代表されるような「企業文化によるサービスの差別化」に近しいものがありますが、DevRelにおいては「外部との関係性やコミュニティ」が重要なファクターであるようです。
※ザッポス:http://www.zappos.com/
アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスに本拠を構える靴を中心としたアパレル関連の通販小売店。2009年7月からアマゾン・ドット・コム傘下に入っている。
つまりDevRelとは、コミュニティを介在して、自社製品/サービスを広める、エヴァンジェリズム(伝道)活動なのです。
エヴァンジェリズム活動の重要性については、IoTプラットフォームを展開するSORACOMの玉川氏も
「良いものを作れば勝手に売れるとか、自然と使ってもらえるとは思っていません。放置していると広がらないのです。デベロッパーマーケティングや広報も必要です。地道なエコシステム作りには現地でのチーム作りが大事です」
と、言及しています。
また、海外においては既に「DevRelCon」というカンファレンスが注目を集めています。Twiio、AmazonWebServices、Atlssian、Sendgrid,Maicrosoftといった名だたる企業がスポンサーとなっている事を見ても、その注目度の高さがわかります。
ちなみに、海外ではDevRelの旗振り役であるデベロッパーエヴァンジェリスト(伝道師)という職種が定着しているようです。(※呼称に関しては画一的でなく企業ごと呼び方は様々あるようです)
DevRelの活動
DevRelでは一般的には以下のような活動を通してユーザーとの関係性を構築していきます。
- ・イベント/勉強会の開催
- ・Q&Aの運営
- ・ブログの執筆
- ・自社サービスの実装サンプルの公開
- ・SNSの運営
- ・メルマガ
その中でも、teratail(開発者向けQ&Aサイト)のDevRel担当である木下氏によると「ユーザーとの繋がりを作るとっかかりとして、開発者の勉強会はかなりの重要性を持っている」とのことです。特に東京は会場も多いため、かなり頻繁に開催されているようです。
他マーケティング手法との違い
マーケティングというと、「製品/サービスをいかに利用してもらうか」という販促的なイメージを持つ方が多いと思いますが、DevRelは、コミュニティを介在することで、「共創的なサービス開発」という側面も持っています。
一般的なマーケティング手法では、マーケティング対象の母数が多くなるにつれ、効率化の側面から、メールマーケティングやセミナーなどの一方向のコミュニケーション手段が選択され、近年では、そのようなコミュニケーション手段を自動化する機能を持つ「マーケティングオートメーション」という手法やサービスが取り上げられています。
しかしながら、DevRelにおいては双方向のコミュニケーションを重要視しているため、対面で直接的なコミュニケーションをとるような活動が多くなってきます。
(もちろんDevRelにおいても適切な目標設定を行った上で、活動を行う必要性はありますので、参加者の募集など一対他的な活動においてはメールマーケティングなど適切なコミュニケーションも行います。)
翻って「開発者」という顧客像の特殊性が、他のマーケティング手法では補えないDevRelの領域となるわけです。
また、AARRRなどの観点から比較されているサイトもあるのでそちらも合わせて読んでいただけると良いかと思います。
なぜこのように特別なマーケティング手法がとられているのか
ではコミュニティーマーケティングというマーケティング手法もある中でなぜDevRelは"Dev"Relなのでしょうか。それは一般的な販促活動とは異なり、プログラミングなどに対する専門性がないと外部開発者とのコミュニケーションが円滑にできないからです。
MozillaのテクニカルエヴァンジェリストであるChristian Heilmannも、「It needs to be someone who is technical」と、同様の指摘をしています。
裏を返せば、「高い専門性が求められるようなものであれば、他の職種をターゲットとしたマーケティングを行う上でも同様に○○Relという手法が当てはまるのでは?」と思いますが、公開されたAPIを用いてサービスを作るなど、実際にモノを作れるという特殊性にも、DevRelが"Dev"Relたる所以がありそうです。
これからのマーケティング
BtoBにおいても現場レベルでの製品/サービスの検討が進み、情報収集の方法はインターネットの発達により多様化していく一方です。また、フリートライアルを基軸に現場導入から促進し、実際に有償化までをフォローアップしていくような施策も、多くの企業が実践し始めています。
DevRelにおいては、マーケティング施策の基軸を現場のユーザーと捉え、自社製品/サービスのマーケティング活動を行ってゆきます。
"自社製品/サービスの顧客は誰で、何を求めているのか"
それを考えた先にもしかしたらDevRelがあるのかもしれません。
さいごに
この記事でご紹介した「DevRel」は開発者向けサービスのマーケティング手法ですが、"自社製品/サービスの顧客は誰で、何を求めているのか"という考え方は、全ての製品やサービスに当てはまります。
常にその視点を忘れずにマーケティングを行うことが一番重要なのではないでしょうか。
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