マーケティング活動における費用対効果(ROI)とは?計算方法や考え方を解説!

展示会出展や新しいWeb施策の導入など、マーケティング担当者であれば目標達成に向けた手段を日頃から考えているのではないでしょうか。
いざ新しいことを始めたいとなった際に必ず上司から聞かれるのは「で、費用対効果はどのくらいなの?」という言葉です。咄嗟に費用対効果を答えられずに悔しい思いをした方も多いはず。今回はマーケティング担当者が知っておきたい費用対効果の考え方をお伝えします。
- ▼この記事でわかること
- ・費用対効果の定義と基本的な考え方
- ・BtoBマーケティングにおける判断のポイント
- ・効果を最大化する方法とツール活用法
そもそも費用対効果(ROI)とは?
費用対効果とは、「施策の実施にかけたコスト」に対して「それによって得られた成果(効果)」が適切かどうかを判断する指標のことです。施策の実施やツール導入の判断をしたり、施策実行後の検証をしたりする際によく使われます。また、コストパフォーマンスという言葉にも置き換えられることもあります。
では、ここで言う「費用」とは何でしょうか。マーケティング担当者が真っ先に思い浮かべるのは、おそらく「広告費」「展示会出展費」「ツール導入費」だと思います。どれくらいかかっているのかが一目瞭然なので、計算もしやすいですね。
しかし、それ以外にも施策を実施するにあたって発生するコストがあります。それは「人件費」です。施策やツールの導入にどれくらいの工数がかかるのかをしっかり念頭に置くことが大切です。
費用に含まれるもの
マーケティング施策における「費用」は、単なる広告費だけではありません。以下のような項目が含まれます。
- ・広告費
- ・展示会出展費
- ・ツール導入費
- ・人件費
効果に含まれるもの
一方、「効果」には何が該当するでしょうか。リスティング広告等の広告施策であれば、広告配信量やコンバージョン数などが挙げられます。また、展示会出展であれば、獲得した名刺の枚数や受注数もしくはトライアルのお申込み数などかもしれません。
コストと比べると、さまざまな考え方があり、施策や会社の立ち位置などによって大きく変わってきます。
- ・売上や利益の増加
- ・ホットリードの獲得数
- ・名刺やリードの獲得件数
- ・サイト訪問数や流入数
- ・メルマガ反応数(開封・クリック・CVなど)
費用対効果を考える前に、「この施策の効果は何か」をしっかりと固めておくことが重要といえるでしょう。
費用対効果が重要視される理由
費用対効果が重要とされる理由は、マーケティング施策において「限られたリソースで最大限の成果を得る」ことが求められるからです。予算・人員・時間などのリソースには限りがある中で、何にどれだけ投資するかを判断するためには、各施策がどれほどの成果を生み出しているのかを数値で把握する必要があります。
施策の良し悪しを感覚や印象で判断してしまうと、成果につながらない施策に無駄なリソースを割いてしまい、本当に効果的な施策への投資ができなくなるリスクがあるのです。費用対効果を定量的に評価する視点があれば、どの施策に投資すべきかを判断しやすくなります。また、得られた成果を数値で示すことで、上司や関係部署への説明や報告もスムーズになり、納得感を持ってもらいやすくなります。
さらに、効果の薄い施策を早期に見直したり、成果につながる施策に優先的にリソースを配分したりする判断も的確に行えるようになります。結果として、マーケティング活動全体の生産性と効率が高まるのです。
費用対効果の計算方法
代表的な計算方法は以下の通りです。
ROI(%)=(得られた利益 − 費用)÷ 費用 × 100
たとえば、あるWeb広告で50万円の売上があり、広告費が20万円だった場合、ROI =(50万円 − 20万円)÷ 20万円 × 100 = 150%というように計算することができます。
関連指標
費用対効果をより正確に捉え、施策の成果を多角的に評価するためには、費用対効果(ROI)以外の関連指標も把握しておくことが重要です。以下に、マーケティング施策で活用される代表的な関連指標を紹介します。
ROAS
ROASは「広告費用対効果」を表す指標で、広告に投資した費用に対してどれだけの売上が得られたかを示します。広告施策が売上にどの程度寄与したかを把握するための重要な指標であり、数値が高いほど広告の効果が高いと判断できます。
広告媒体ごとの比較や、同一キャンペーン内での成果評価にも活用されます。
ROE
ROEは「自己資本利益率」の略で、企業が自己資本に対してどれだけの純利益を生み出しているかを示す経営指標です。マーケティング単体ではなく、企業全体の収益性を評価するために用いられます。
マーケティングの成果が最終的に企業利益につながっているかを測る間接的な指標とされることもあります。
CPA
CPAは「顧客獲得単価」を意味し、1人の顧客(もしくは1件のコンバージョン)を獲得するためにかかった費用を表します。費用対効果を測定する際に非常に直感的で使いやすい指標であり、特にWeb広告やキャンペーンなどの施策単位での成果比較によく使われます。
数値が低いほど、効率よく顧客を獲得できていることになります。
LTV
LTVは「顧客生涯価値」と呼ばれ、ある顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額を表す指標です。一時的な売上ではなく、継続的な取引やリピート購入も含めて評価するため、長期的なマーケティング戦略や顧客関係管理において極めて重要です。
LTVが高い顧客ほど投資価値が高く、たとえCPAが高くても、LTVが上回れば十分に投資価値があると判断できます。
事例でわかる目的に応じた費用対効果の評価の違い
「効果は何か」を先に固めておきましょうというお話をしました。それはなぜか、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
- ◆ケース1
- 『今期(残り3カ月)の数値目標を達成するための施策を求められた場合』
- ◆ケース2
- 『中長期的に投資対効果の高い施策を求められた場合』
この場合(もちろん会社の考え方にもよりますが)、ケース1の場合は直近で成果を上げる必要があるため、成果が出るまでに時間がかかるような施策は向いていません。そのため、短期的な施策を提案・実施すべきですし、費用対効果や成果としては今期内の目標への貢献のみでの判断が必要です。
反対にケース2の場合、中長期で継続的かつ大きな効果が見込めるようであれば、初期投資として最初にある程度のコストがかかる施策でも良いでしょう。「いつの時点で」の成果を求められているのかを理解し、投資に対して実施する施策の効果の出るタイミングや継続性がどうかを考慮して費用対効果を考えましょう。
また、次のケースはどうでしょうか。
- ◆ケース3
- 『売上向上のためにツールの導入を求められた場合』
- ◆ケース4
- 『業務効率化のためにツールの導入を求められた場合』
ケース3の場合、マーケティング担当者は「商品単価」と「販売効率(受注率や営業人数など)」、「ツール費用」について考える必要があります。
たとえば、毎月10件の商談から1件の受注を獲得する営業担当がいるとします(受注率10%)。ツールの導入によって受注率が倍に向上した場合、その営業担当は毎月2件の受注ができることになります。
この時、商品単価が100,000円、ツール単価が月額300,000円、営業人数1名では、費用対効果は見合わないですよね。営業人数を増やすか、または受注率がもっと向上するような同額のツールを導入するべきです。
ケース4でマーケティング担当者が考えるべき指標は、「業務にかかる工数(時間)」と「一人あたりの時給」です。ある作業を行うにあたり、ツール導入前は5時間かかっていたとします。これがツールの導入によって2時間に作業が短縮された場合を考えてみましょう。社員の給与を時給換算した場合1時間5,000円だとすると、
- (ツール導入前)5時間 = 25,000円
- (ツール導入後)2時間 = 10,000円
つまり作業1回あたり15,000円のコストが削減できることになります。ツールの月額費用が30,000円だとすると、月にその作業を2回以上行えば費用対効果が良いと言えますね。このように、「成果指標が何か」によっても、費用対効果のとらえ方が変わってくるのです。
費用対効果を考えるうえでのポイント
ここまで、費用対効果の事例について解説してきましたが、「何だか面倒くさいな...」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、費用対効果の指標を決めずに施策を進めると、「施策の結果は良かったのか?」「売上に直結していたのか?」の判断ができず、『感覚』で仕事をすることになります。
「良いか、悪いか」の判断は『数値』で行うよう、まずは「費用対効果の定義を決める」ことが重要です。先述の費用対効果のケースを参考にしながら、まずは定義を決めて数値化し、PDCAを回してみましょう!
費用対効果を向上させる方法
どんなに魅力的な施策でも、かけたコストに対して十分な成果が得られなければ意味がありません。マーケティング活動の生産性を高めるには、単に施策を打つだけでなく、その費用対効果を継続的に改善していくことが求められます。
ここでは、費用対効果を向上させるために意識すべき3つのポイントを紹介します。
コストの削減
費用対効果を高めるための最も基本的なアプローチは、無駄なコストを見直して削減することです。広告運用においては、効果の低いキーワードやターゲットを見直したり、展示会などのオフライン施策では、費用対効果が見込めない支出を精査することが重要です。
また、業務効率化によって人件費を抑えることも、見落とされがちな改善ポイントです。
収益性の向上
同じコストをかけても、得られる成果が大きければ費用対効果は改善します。そのためには、Webサイトのコンバージョン率を高めたり、顧客単価を上げるためのクロスセル・アップセル施策を行ったりと、1件あたりの成果を最大化する取り組みが有効です。
また、継続的な購入を促すことでLTV(顧客生涯価値)を高めることも、収益性を向上させる重要な手段です。
ターゲティングの最適化
施策の対象となる顧客層を精度高く絞ることで、無駄打ちを減らし、より成果につながりやすくなります。たとえば、広告配信においてはペルソナ設計を明確にし、ニーズの高いセグメントに絞ることで、より高い反応率と低い獲得単価を実現できます。
適切なターゲティングは、限られた予算の中で最大限の効果を得るための鍵となります。
MAツールで実現する費用対効果の最適化
費用対効果を正確かつスピーディに把握するには、施策ごとの数値を一元管理し、成果との関連性を可視化することが不可欠です。しかし、複数チャネルでの施策や長期的なナーチャリング施策では、効果測定が煩雑になりがちです。そこで役立つのが、マーケティングオートメーション(MAツール)の活用です。
MAツールを導入すれば、顧客の属性や行動データ、メール開封やクリック、コンバージョンなどの情報を一元的にトラッキングできます。たとえば、どの施策からリードが流入し、その後どのチャネルで商談や受注につながったのかといった情報を可視化することで、各施策の費用対効果をより正確に評価できます。
また、スコアリングやセグメントごとの効果測定も自動化できるため、PDCAサイクルを効率よく回せるのも大きなメリットです。数値に基づいた判断と改善がスピーディに行える環境を整えることで、施策の優先順位づけやリソース配分の精度も高まります。
定量的な評価を日常的に行えるようになることで、属人的な判断や感覚頼りの運用から脱却し、戦略的なマーケティングを実現できます。費用対効果を本気で改善したいのであれば、MAの導入は非常に有効な手段と言えるでしょう。
MAツールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【2024年1月更新】マーケティングオートメーション(MA)とは? 効果、特長...基礎知識を解説!
さいごに
「で、費用対効果はどのくらいなの?」と上司に聞かれたときに、どんな指標をどの期間で考えたらよいかをざっくりとつかんでいただけたでしょうか。実際にさまざまな施策を組み合わせて戦略を練る場合、費用対効果を考えたうえで優先順位をつけたり、取捨選択をしたりする必要があります。
さらに売上や利益などに対する費用対効果を考えていく上ではLTV(顧客生涯価値)という視点が欠かせません。LTVに関しては、ぜひ以下の記事を参考にしていただければと思います。
まずは基本を押さえて、効率よくマーケティング施策をおこなっていきましょう。