プロダクトライフサイクルを活用!ステージに合わせたマーケティング戦略とは?

マーケティング戦略を考える上で、市場・競合関係を見渡しながら製品の方向性や取るべき戦略を考え、それに基づいて広告施策やマーケティング施策を考えていくことは多いと思います。
この時に忘れてはいけないのが、自社の取り扱っている製品やサービスがターゲットの顧客や市場にとって、今、どういう位置づけにあるのかということを捉えることです。更には、その市場はどうなると予測され、自社の製品やサービスがどのような立ち位置になるべきかを考えることは持続的な成長を考える上で重要となります。
今回はその一つの考え方である、「プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル)」という考え方についてご紹介していきます。
プロダクトライフサイクルとは
プロダクトライフサイクルとはその名の通り、製品・プロダクトが世の中に登場してから衰退していくまで4つのステージを経るという考え方を示した言葉です。
わかりやすく言うと、製品が世の中に登場して間もないころは新しいものが好きな一部の人が導入し、その製品での事例や実績が出てくると世の中の多くの企業や人が導入するようになっていくという考え方で、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つのステージに分かれます。重要なのはそれぞれのステージで取るべきマーケティング戦略が変わってくるという点です。
プロダクトライフサイクルを理解しておくことで、市場における自社製品の状況を把握し、製品やサービスの導入タイミングや競合他社の参入時期、他社との差別化、市場からの撤退時期の判断をすることができます。
プロダクトライフサイクルのステージ
プロダクトライフサイクルには、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つのステージがあります。ここでは、そのステージについて一つずつ解説していきます。
導入期
導入期は、製品が市場に投入されて間もない段階です。そのため、需要も小さく売上も大きくありません。
市場における認知度も低く、多くの企業や担当者がその製品の名前すら知らないか、知っていても自分の会社や自分にはまだ関係ないと感じているフェーズです。
この段階で製品を導入するのは「新しいもの好き」の企業や担当者で、イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれます。
- イノベーター
- 新しいテクノロジーや技術に関心を持ち、提供側が正式にマーケティングを始める前に製品を導入したり検討したりする、いわゆる「ITマニア」 。 イノベーターは常にスペックの最先端を先取りし、新しいモノが出ると進んで採用する傾向にある。
- アーリーアダプター
- 他社の導入事例や実績がなくとも導入・検討を行う層。テクノロジーや技術を理解し、新しい技術を利用した製品でも積極的に導入する、いわゆる「チャレンジャー」。 アーリーアダプターは「オピニオンリーダー層」とも呼ばれている。
成長期
市場に製品が認知され、一気に普及する段階です。市場の拡大により売上が伸びる時期ですが、競合他社の参入が増えるのもこの時期となります。
このようなときに製品を導入するのはアーリーマジョリティと呼ばれる人たちです。
- アーリーマジョリティ
- いわゆる実利主義者で、技術やテクノロジーではなく実用的なことと実績や事例を重んじて導入及び検討を行う層。市場成長後期の購入者層はアーリーマジョリティ層がメイン。
成熟期
競合他社が増えることで類似製品が溢れ、市場が成熟します。導入企業が上限に達しつつある中で、価格の下落による売上の減退が始まります。
このステージで導入をするのはレイトマジョリティと言われる層で、前述の層より保守的な層の導入が進みます。
- レイトマジョリティ
- 新しいものにはどちらかと言うと懐疑的で、「他社もやっているから」という導入モチベーションが強い層。他社に追随して検討・導入する。
衰退期
製品自体のニーズが減少し、売上が減少していく時期です。製品の提供する価値に対して代替する新規の手段やツールが登場するなど、同製品の市場が衰退していきます。
この時期に新規導入や検討を行う企業や担当者はあまり多くありません。
押さえておくべきキャズム理論
IT製品・サービスのプロダクトライフサイクルにおいていうと、このプロダクトライフサイクルの中において、押さえておくべき重要な考え方があります。それが「キャズム」です。
キャズムとは
キャズムとは、日本語で言うと深い溝のことです。プロダクトライフサイクルの中においてこのキャズムとは、簡単にいうと「落とし穴」です。プロダクトライフサイクルの中で、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にこの大きな落とし穴(キャズム)があり、これをきちんと捉えないといけません。
落とし穴についてもう少し補足しましょう。アーリーアダプターはチャレンジャーであり、「新しさ」を理由に購入や導入を決めます。しかし、アーリーマジョリティはチャレンジャーではない実利主義者です。そのため、「安心感」に重きを置く傾向にあり、導入のためには「実績や事例」などの実利に繋がる根拠を求めます。
つまりこの2つの層の間には大きな価値観の違いがあり、それがキャズムが生まれる理由となるのです。
多くのIT製品やサービスの場合、技術・テクノロジー先行でマーケティングをしがちで、それがある程度の規模まで拡大して行き止まるのは実利主義者に訴求できないから、つまりこのアーリーアダプターとアーリーマジョリティの導入期の間のキャズムに陥るためと言われています。
キャズムを超えるには
このキャズムを超えなければ、アーリーマジョリティへの導入が進まない(つまり、市場の多くのお客様に導入されない)ため、売上は大きく増えません。ではどうしたらいいのでしょうか。
キャズム超えの基本戦略は「ボーリングレーン」と言われています。ボーリングの1番ピンを倒すと、そのピンが2番ピン、3番ピンを次から次へ倒してくれることに比喩される戦略のことです。市場を細分化して、まず1番ピンに相当する市場を攻略することで圧倒的シェアを獲得し、その勢いで隣のセグメントに波及していくというものです。
実利主義者に対して、特定のセグメントで実績・事例を多数創出して「実利があるものだ」という認識を作り、2番ピンを倒しに行くということです。
ボーリングレーンの1番ピンはどの市場なのか、そこに対してどのようにマーケティング戦略を取っていくのか、がポイントになりますね。既に自社の製品がある程度導入されている場合(イノベーターやアーリーアダプターなど)には、その実績のある業界や類似する企業をマーケットとして捉えるのがヒントになるかもしれません。
プロダクトライフサイクルを把握するメリット
最適なマーケティング戦略を立てられる
プロダクトライフサイクルを理解することで、自社が4つのステージのどの位置なのか客観的に把握することができます。それにより、売上を伸ばす時期なのか、撤退すべき時期なのか最適なタイミングに合わせた戦略を立てることができます。
利益を上げ、コストを削減できる
プロダクトライフサイクルに基づいたマーケティングを行うことで、利益を出せる時期やコストをかける時期の判断ができます。成長期には、販路の拡大など利益拡大のための施策を行い、反対に衰退期には売上の減少を見込んで広告を抑えたり、撤退を検討するなど無駄なコストをかけないなどのコスト管理が可能となるのです。
ステージに応じたマーケティング戦略
ここでは実際に、プロダクトライフサイクルのステージに合わせたマーケティング戦略をご紹介します。
導入期には認知向上
導入期は、製品の知名度が低い状態です。製品の認知度を高め、市場を拡大させるためにもまずは、発表会や展示会、試供品の提供などを通じて、ユーザーとの積極的なコミュニケーションを図ることが大切です。
成長期にはブランディング
成長期は、製品の認知度が一気に高まる時期です。競合他社も参入する時期でもあるため、製品の差別化や、新機能の追加による改良などを行い製品のブランディングを図ります。また、市場拡大に合わせた製造ラインの拡充など、売上向上に合わせた対応も必要です。
成熟期には差別化戦略
成熟期は、市場の成長が鈍化する時期です。上位企業では、顧客のニーズに合わせた施策を行いリピーターを獲得するといったシェアを維持することが大切です。
反対に下位企業は、生き残りのため、特定のターゲットを狙った差別化戦略が重要となってきます。
衰退期には撤退を検討
衰退期に入ると製品の需要が減り、売上や利益が減少していきます。売上を拡大するのは困難となるため撤退を検討します。
存続する場合にも、製品リニューアルや新たなコンセプトの打ち出しなど新しい市場の開拓を模索する必要があります。
まとめ
このようにプロダクトライフサイクルにはその時その時で登場人物が変化していき、それによってどういう戦略を取るべきかが変わります。今のマーケットや競合を分析することも重要ですが、今の自社製品のプロダクトライフサイクルはどのポジションなのかをレビューしてみてもいいのではないでしょうか。
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