MECEとは?マーケターなら押さえておきたい"超"分解術
マーケターなら押さえておきたい「MECE」の考え方。用語は知っているけれど、どのように考えたらよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、この「MECE」の考え方について、おさらいをしていきます。マーケターの皆さま必見の内容ですので、ぜひご覧ください!
MECEとは?
MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略語で、
- Mutually(お互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体的に)
- Exhaustive(漏れがない)
つまり「モレなく、そしてダブりなく」という意味です。「ミッシー」または「ミーシー」と読みます。
ビジネスにおいてロジカルシンキング(論理的思考)の基本とも言える重要な概念で、戦略用語やマーケティング用語としてよく使われます。
MECEが必要とされる背景
ビジネスにおいて、消費者や社会の抱える複雑な問題を解決するためには論理的で、シンプルに切り分ける必要があります。
MECEの活用は、モレやダブりなく物事を整理することができ、効率的かつ論理的に課題を解決することができるため、マーケティングや営業などさまざまなシーンで重要視されているのです。
MECEの具体例
それではMECEの例を日本の切り分け方を取り上げてみていきます。
- ・日本を「東日本」「西日本」に切り分ける→MECEな状態
- ・日本を「東北地方」「関東地方」「中部地方」「近畿地方」「中国・四国地方」「九州地方」に切り分ける→「北海道地方」がモレているためMECEでない
- ・日本を「東日本」「西日本」「関東」に切り分ける→「東日本」と「関東」にダブりがあるためMECEでない
MECEを用いるの2つのメリット
MECEを用いることで得られるメリットについて見ていきましょう。
メリット①論理的な整理ができる
ビジネスにおいてMECEを用いるメリットはさまざまあります。その中でも一番のメリットは、主観的になってしまいがちな思考に客観性をもたせ、論理的に整理できる点にあります。
相手になにかを説明するとき、その対象にモレやダブりがあると、説得力に欠け、こちらの結論をスムーズに理解してもらえなくなってしまいます。そこで、このMECEを意識して論理を組み立てることで、相手に納得感を与える強力な論理展開を可能にすることができるでしょう。
特に、考え事をしていると視野がどんどん狭くなってしまう人や細かいところにこだわり過ぎてしまう人は、MECEを意識することで部分から全体へと思考を広げることができるため大変効果的です。
メリット②マーケターに必要な「ロジカルシンキング」に有効
ビジネス全体におけるMECEのメリットは客観性を持った思考により論理的な整理を実現することでした。それではマーケターにおいて特に必要だと言われるのはなぜでしょうか。
それは、マーケターが分析をする対象のほとんどは複雑で、一見して互いの因果関係が分かりづらいからです。そのため、一つ一つの事象をシンプルに整理していく必要があります。そもそもロジカルシンキングとは、主張と根拠をロジックで積み重ねていく思考方法で、マーケターには必要不可欠な考え方です。
ロジカルに思考を重ね、結論を導いていくためには、その結論を支える主張が必要十分である必要があり、ヌケモレがあってはロジカルシンキングは実現できません。そこでMECEを用いることで、結論への説得力を高めることができるのです。
MECEを実践してみよう
ここからは、実際に仕事においてMECEを用いるための2つのアプローチをご紹介します。
トップダウンアプローチ
全体から詳細へとブレークダウンしていくのがトップダウンアプローチです。全体を見て大枠を決め、そこに要素を当てはめていく手法で、「演繹的なアプローチ」とも言えます。
例えば、「営業に求められるスキルとはなにか?」を考えるとしましょう。そのときに「聞く力」「話す力」「思考力」などと分類していくのがトップダウンアプローチです。
トップダウンアプローチが有効なのは、全体を見たときに分解の方向性が見える場合や全体像自体が明確な場合です。逆に、分解の方向性が見えない、全体像が不明確といった状況で分解してしまうと、分類にヌケモレが発生してしまう可能性が高くなるため注意が必要です。
ボトムアップアプローチ
トップダウンアプローチとは逆に、詳細を集め全体像を描いていく手法がボトムアップアプローチです。「演繹的アプローチ」と対照的に、「帰納的アプローチ」とも言えるでしょう。
例えば、営業のコツについて社内でアンケートを取り、そのアンケート結果から営業に求められるスキルを考えていくのがボトムアップアプローチです。「お客様の話をきちんと聞く」「お客様の目を見て話しを聞く」「相手の話に応じて適切な相づちを入れる」というアンケート結果から、「営業に求められるスキルは『聞く力』である」というようにグルーピングを行うのです。
事前にどのような分類をしていいのかわからない場合や、各要素をブレーンストーミングで洗い出していくような場面では、有効なアプローチだといえるでしょう。しかし、要素自体に偏りがある場合は、分類にダブりが出る可能性が高まってしまうため気をつけてください。また、グルーピングの精度が粗すぎるとヌケモレが発生してしまうため、MECEになるよう訓練が必要です。
この2つのアプローチはどちらが優れているということはありません。双方の特徴を正しく理解したうえで、使い分ける・組み合わせることが重要です。MECEの精度を向上させるためにも、2つのアプローチを両方使いこなせるようにしておきましょう。
MECEの分析方法
MECEに考えるためには「どのような切り口を設定するか」が肝です。MECEにさえなっていれば、ビジネスですぐに役に立つというわけではありません。思考をする対象である課題や目的に合わせて適切な切り口を設定するためには4つのポイントがあります。それぞれ見ていきましょう。
- 1.要素分解
- 思考の対象を要素へと分解していき、分解した要素の総和が全体になるように切り分けるのが要素分解です。総和が全体になるため「足し算型」や「積み上げ型」と言われることもあります。
- 2.時系列・ステップ分け
- 時系列やステップで分解する方法です。例えば、業務を行うときの手順に切り分ける、プロジェクトを準備・実行・改善のフェーズに分けるなどが該当します。
- 3.対称概念
- 課題を相反する概念によって分解する方法です。「質/量」や「クオリティ/スピード」などの対になる概念から、マーケティング活動や営業活動を分析します。
- 4.因数分解
- 要素分解は「足し算型」でしたが、因数分解は「掛け算型」とも言われます。例えば、企業の売上を「顧客数×顧客単価」などと分解するのが因数分解です。
MECEを進めるためのフレームワーク
ここではMECEを活用した4つのフレームワークを解説していきます。
3C分析
3C分析とは、外部環境を分析するフレームワークです。「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの頭文字を取って3C分析と呼ばれます。 比較的少ない情報量から分析を行うことが可能で、企業の置かれている状況を客観的に把握し、自社の事業戦略などを明確にできます。
この3C分析では、ダブりのない市場分析が可能となりMECEを考えるときにも用いられるようになりました。
SWOT分析
SWOT分析とは、内部環境である「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」と、外部環境である「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの要素から構成されており、自社の強みだけでなく、課題となる弱みなど、さまざまな角度から自社を客観的に判断し、ビジネス機会を発見する分析手法です。
4P分析
4P分析とは、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」の4つの頭文字を取ったものです。商品やサービスを販売する際、顧客のニーズに応える製品を提供するために、どのように売るか4つの領域を分析し、企業側視点のマーケティング戦略を立案するための分析手法です。
PEST分析
PEST分析とは、「政治面(Politics)」「経済面(Economy)」「社会面(Society)」「技術面(Technology)」の4つの要因に分類し、現在もしくは将来的に自社に与える影響や機会と課題を洗い出す分析手法です。
自社を取り巻く外部環境には、マクロ環境とミクロ環境の2種類があり、PEST分析は自社でのコントロールが難しいマクロ環境の分析に適した手法といえます。
MECEを活用するうえでの注意点
マーケターが分析を行ううえで重要なMECEですが、注意点もあります。特にMECEを活用してマーケティング活動や営業活動を分析すると、うまくグルーピングできない場合があります。
たとえば、IT企業に向けたメルマガリストを作る時、「IT企業だけど、コンサルティングや不動産をしている」など、複数の事業をする企業も出てくるでしょう。IT事業のみをしている企業をグルーピングするのは簡単ですが、IT企業だが、いくつかの事業があるのでIT企業のリストとしてグルーピングしてよいか迷ってしまいます。
このようにうまくグループ化できない場合、あまり効果的ではありません。正確にグルーピングするためにも「基準」をつくったうえで「ヌケ・モレ・ダブリ」をなくしましょう。
さいごに
マーケターにとってMECEを押さえておくことがなぜ重要なのかご理解いただけましたでしょうか。各手法の特徴やポイントを正しく理解し、MECEを意識した分析を心がけてください。
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