結局のところ、人工知能(AI)でマーケティングの何が変わるの??

人工知能、またの呼び名をAI(Artificial Intelligence)。Google社の開発した囲碁AI "Alpha-Go"が囲碁の対局で人を倒したり、Microsoft社が作ったAIがTwitter上で人種差別発言をしたりするなど、2016年に入ってからも多くのAIに関するトピックスが世間を賑わせています。
マーケティング界隈でもAIという言葉が徐々に使われはじめていますが、実際のところ、AIはマーケティングに対して、どのような影響をあたえるのでしょうか。
AIは目新しいものじゃない!?
現在実用化されているAIは、機械学習をベースとした「予測」と「識別」が主です。「予測」は、膨大な過去データを元にした傾向の割り出しのことで、「識別」は、いわゆる自然言語処理や音声認識、画像認識といった情報の判別や仕分けのことです。
たとえばGmailのスパム除去機能や、Google Photoでの自動アルバム生成機能、Shazamの音声認識、Apple社のiPhoneに搭載されている"Siri"のようなデジタルアシスタントも、AIによる「識別」機能によるものなのです。
映画に出てきたような、自らの意思を持って課題解決に取り組むようなAIも今後出てくるのでしょうが、現在実用化されているAIは、意外にも我々の生活にすでに溶け込んでいるようです。
AIをめぐる市場動向
米Tech Pro Researchによる北米のIT関連企業534社に対する調査によると、24%の企業はすでにAIを導入しているか、来年から導入を予定しているそうです。驚きですね。

また57%もの回答者が、「今後5~10年のうちにAIは主流な考え方/プロダクトになる」という見解を示しています。このようなデータを見ると、AIの活用は、加速度的に浸透していくと考えられますね。

実際に、有力企業による動きも活発化しています。例えば米Salesforce社は近年、AI関連企業の買収を積極的に行っていて、2016年4月にはMetamind社の買収を発表しました。自然言語の習得やディープラーニングに秀でたMetamind社のソフトウェアを、現行のCRMに取り込むことで、ビジネスにおける種々の過程をより自動的に、より個人に特定されたものにし、自社のデータサイエンスの可能性を大きく広げようとしているようです。
また、シリコンバレーの大物たちによる、AI関連事業に対する巨額投資も加熱する一方です。人工知能プラットフォームを開発しているVicarious社に、Facebook社CEOのマーク・ザッカーバーグ、Paypal社創業者のピーター・ティール、Amazon社CEOのジェフ・ベゾス、Yahoo社の共同創業者ジェリー・ヤン、Skype社の共同創業者ヤーヌス・フリース、Salesforce社CEOのマーク・ベニオフが揃って投資をしていたようで、後々Vicarious社からはとんでもないマシンが発表されるでしょう。
このように、AIがテクノロジー市場を盛り上げていることはわかりましたが、BtoBマーケティングという領域はどうなのでしょうか?
BtoBマーケティングにおいてAIが使われている事例
では、海外で実際にマーケティングにAIが活用されている例をいくつか見てみましょう。
Routific社の例
カナダ・バンクーバーに本社を置くRoutific社は、AIを用いた物流のプラットフォーム作りを通じて、バンクーバー内の流通ネットワークの効率化を図っている企業です。
共同創業者のマーク・クオ氏は、物流において、「ノンストップで目的地へと向かうルートが必ずしも良いとは限らない。複数回停車をしたとしても、最短距離かつガソリンを消費しないようなルートを見つけることこそが、交通網と流通に関する無駄を省くことにつながる」という事実をAIによって発見しました。
クオ氏曰く、「我々のアルゴリズムは、従来ドライバーが選ぶルートと比べ、最大で40%も所要時間を短縮できる。もしも配達トラック10車両を使って1000の目的地へ配達するプランを設計しようとすると、積載容量や配達時間帯といった考慮すべき事項も重なり、プランニングは至難を極める。我々の顧客はこの難題をクリアするために毎日数時間かけているが、AIは数秒でこれをやってのけてしまう」のだそうです。
Conversica社の例
BtoB企業のリード獲得やインサイドセールスを支援するソフトウェアを展開しているConversica社では、企業の保持するリード(見込み顧客)に対して、AIを用いたバーチャルアシスタントによるメールでのフォローアップを行っています。そこで見込み顧客が企業に対して興味を持てば、バーチャルアシスタントが「検討段階に入ったリード」として営業チームに情報を渡し、営業マンからのアプローチを通じてクロージングに導いていく、というモデルです。
「AIは知能労働者に対して、機械には出来ないような、戦略思考やプランニング、コラボレーションや新たな発明、コミュニケーションに執筆活動、制作活動といった活動を精力的に行えるような余力を生み出す。」と同社・上級副社長兼CMOのカール・ランダース氏は言います。
「またAIは、人が行える作業においても、人力では不可能な正確さと速さを生み出すことができる。これによって、今までなら諦めていたような難しい問題も処理出来てしまうのだ。AIを使えば、見込み顧客のフォローアップだけでなく、膨大なデータの中から重要な見識を拾い集め、ある一定のパターンを見つけ出し、課題に対して最も効果的な打ち手を選ぶ、というような、これまで工数がかかりすぎて不可能だったことが、同時に行えてしまうのだ。ROIを直接割り出すことは難しいが、企業にとってはとても価値のあるサービスであろう」
結局マーケティングの何が変わるの?
前出のTech Pro Researchによる調査から、現在AIが実用化されている分野の多くは、BtoBマーケティング施策の鍵を握る「自動化システム」「データ分析」「データマイニング」という分野である、という事がわかりました。この事実からも、BtoBマーケティングにAIを取り入れることはとても自然である、と言えるでしょう。

AIを用いれば、マーケティングにおける日々のルーティーン業務のための時間を減らすことができ、戦略策定や人の胸を打つようなコンテンツ制作等、人にしかできないような事のための時間を確保できます。さらにはAIによって、今までは人力では不可能だった緻密な分析ができ、あらゆる項目の組み合わせから、人には見つけられないようなクリティカルな関連性を見出す事ができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「AIを取り入れる事こそが、現在の市場で競争優位性を保つ唯一の手段だ」とRoutific社のマーク・クオ氏は語っています。しかしながら、現状だとAIに取り込むべきデータの量を確保できている企業は、そうそうないでしょう。
まずは、様々な事象のデータ化を進めることが、今後AI導入において効果を上げるための鍵となりそうです。まだまだ得体の知れない印象が先行しているAIですが、BtoBマーケティングに関わる皆様は、積極的にAIに関する情報収集を始めてみてはいかがでしょうか?
引用:TechCrunch
http://techcrunch.com/2016/04/04/saleforce-acquires-metamind/
http://techcrunch.com/2014/03/22/vicarious-grabs-a-huge-new-40m-growth-round-to-advance-artificial-intelligence/TechCrunch/JP
http://jp.techcrunch.com/2014/04/08/20140407vicarious/Direct Marketing News
http://www.dmnews.com/crm/salesforce-aims-to-up-its-ai-game/article/487764/B2B News Network
http://www.b2bnn.com/2015/09/bringing-artificial-intelligence-to-your-b2b-company/Tech pro reseach
PDF"Artificial Intelligence and IT: The Good, The Bad and the Scary"
by Tech pro reseach
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