KSFとは?KGIやKPIとの違い・設定方法を紹介
ビジネスの成果を判断するためには目標設定が欠かせません。そこでよく活用される指標の1つが「KSF(Key Success Factor)」です。この記事では、KSFの概要から、KGIとの違い、KSFの設定方法まで詳しく解説していきます。
KSF(Key Success Factor)とは
KSFとは、「Key Success Factor」の頭文字を取ったもので、目標を達成するために必要な「重要成功要因」のことです。市場の動向や競合の参入などの外部環境と、自社の強みや目標達成に必要な指標といった内部環境の2つの分析からKSFを設定し、具体的な事業戦略の立案を行います。
KSFと似た用語として、CSF(Crtical Success Factor)がありますが、KSFとほぼ同義語として捉えられます。
KSFが必要とされる理由
KSFが必要とされている背景として、昨今の顧客ニーズの多様化があります。多様化したニーズに迅速に対応していくためにも、事業の戦略立案が重要とされており、効果的な戦略立案のためにもKSFを設定することが求められています。
また適切なKSF設定は、組織全体としてのゴールが明確になり、無駄を省いてより効率的に戦略を実施することにもつながります。
「KGI」や「KPI」との違い
KSFと似た指標として、「KGI」や「KPI」があります。ここでは3つの指標の違いについて整理しておきましょう。
KGIとは
KGIとは、Key Goal Indicatorの略で「重要目標達成指標」の意味です。
目的に対して、最終的にどの程度成果を達成できているのか判断するために設定される指標で、全体的な方向性を定める要因となります。
KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」の意味です。
最終目標であるKGI達成に向けたプロセスの中で、設定する中間指標となります。最終的な目標を達成するために必ず到達すべき指標として、具体的な数値で設定します。
KSFとの違い
KGIは達成すべき目的であるゴールを数値化した指標です。それに対してKPIとKSFはKGI達成のためのプロセスの中の指標となります。
KGIを達成するために到達すべき具体的な要因がKSFとなり、その要因を数値化した指標がKPIとなります。
KSFの設定に有効な5つのフレームワーク
KSFを設定する際には、フレームワークの活用が効果的です。考えるべき要素を整理することで、適切なKSFを抽出することにつながります。ここでは、KSFの設定に活用できる5つのフレームワークをご紹介します。
3C分析
3C分析は、顧客(Customer)・自社(Company)・競合(Competitor)の3つの要素の情報収集と市場環境を分析します。
比較的少ない情報量で分析を行うことが可能なフレームワークです。企業の置かれている状況を客観的に把握することで成功要因や課題を発見し、自社が今取り組むべきことを明確にすることができます。
- ・顧客(Customer)
- Customerの分析では、市場や顧客といったターゲットについての分析を行います。
市場分析では、自分たちではコントロールできない部分である、消費や景気、流行などについての分析をします。さらに、競合状況や自社の収益性についての分析を行い、2つの分析結果から、顧客のニーズや価値観への影響を把握します。 - ・競合(Competitor)
- 次にCompetitorについての分析を行います。先に分析した顧客・市場の変化に対応した競合がどのような結果だったのか、またその結果につながった要因について把握します。
- ・自社(Company)
- Companyの分析では、自社がこれから取り組むべき戦略を洗い出します。これまでに分析してきた顧客・市場、競合分析の結果と照らし合わせることで、競合企業に対抗できる手段となる差別化ポイントを見つけだします。
この3つの分析により、顧客ニーズを満たし、自社の強みを発揮して競合に対抗できる要素をKSFとして抽出します。
5F分析
5F分析では「業界内の競合の脅威」・「新規参入の脅威」・「代替品の脅威」・「買い手の交渉力」・「売り手の交渉力」という収益性に影響を及ぼす5つの要因を分析します。
- ・業界内の競合の脅威
- 業界が寡占状態であれば競争は穏やかなものとなり、反対に業界に同程度の規模の企業がたくさんある場合には、競争が激しくなり収益性が減少します。業界内の競合が激しい場合は、他社との差別化や価格競争などの戦略を行う必要があります。
- ・新規参入業者の脅威
- 新規参入のハードルが低く競合企業が増えれば、価格競争が起こるなど収益の減少に繋がります。反対に参入のハードルが高い場合には、収益を確保できる業界と判断することができます。
- ・代替品の脅威
- 既存の商品やサービスが、他の代替商品で同様のニーズを満たせてしまうという脅威です。代替品が登場することで、市場シェアが縮小し収益性が減少します。
- ・買い手の交渉力
- 買い手である顧客が商品を購入する際の交渉力によって利益が少なくなる可能性のことです。例えば、競合が多い場合には自社製品を選んでもらうために買い手の要求に応える必要があり、自社の収益性が低くなります。
- ・売り手の交渉力
- 自社にとって仕入れ先となる業者が、売り手となります。材料の仕入れ先である売り手が、寡占状態であったり独自技術を持つ場合だと売り手が力を持ち、買い手である企業は仕入れ価格が上がり収益性が低くなります。
このように収益性に影響する5つの力を分析することで、自社を取り巻く業界を客観的に把握し、状況に合わせた事業展開をKSFとして設定します。
PEST分析
PEST分析とは、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの要素を踏まえ、自社を取り巻く外部環境を短期的、または長期的に把握し分析することで、自社に与える影響や機会と課題を洗い出します。
- ・政治的要因(Politics)
- 法律や法改正、減税や増税など事業に関連する政治的要因は多くあります。法改正など市場のルールを変化させるものは市場競争に関わる場合も多く、自社にどのような影響があるかしっかりと把握し分析する必要があります。
- ・経済的要因(Economy)
- 景気の変化や株価など経済の動向も事業に影響することは多くあります。国内だけでなく各国の経済状況なども踏まえ、中長期的に分析する必要があります。
- ・社会的要因(Society)
- 人口動態の変化や流行、ライフスタイルの変化、社会問題などが要因として挙げられます。例えば少子高齢化などの需要構造に影響を与える環境変化が起きたとき、タイムリーに変化に対応することができればビジネスチャンスとなることもあるため、事前の分析が必要といえます。
- ・技術的要因(Technology)
- ITやインフラ、特許の取得などは事業に大きく関連します。新しい技術により既存事業の競争力の低下が起きたり、反対に新規市場が生まれることもあるため、技術革新の流れを踏まえた事業戦略の設計が重要となります。
この4つの要素から自社への影響を把握し、KSFを抽出します。
SWOT分析
SWOT分析は、市場環境を分析できるフレームワークです。内部環境である強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)と外部環境である機会(Opportunities)・脅威(Threats)の4つの要素から構成されており、自社の強みだけでなく、課題となる弱みなど、さまざまな角度から自社を客観的に判断し、KSFとなる要素を抽出しましょう。
バリュー・チェーン
バリュー・チェーンとは企業活動の中で生み出される価値を、一連の流れとして捉える考え方です。原材料の調達から顧客に商品が届くまでを分類した上で、それらを「価値のつながり」として表します。このバリューチェーンを分析することで、自社の活動が価値創造にどのように貢献しているのかを知ることができます。
価値(Value)・希少性(Rareness)・模倣可能性(Imitability)・組織(Organization)の4つの視点をもとに分析を行い、内部要因である自社の強みや弱みを把握し、KSFとして設定します。
KSF設定時の注意点
適切なKSFを設定するためにも、意識しておきたい注意点について見ていきましょう。
重要度の高いものに絞り込む
KSF設定の際には、重要度の高いもののみに絞り込むことが大切です。様々な分析を行った結果、複数のKSFが抽出されることもありますが、数が多くなってしまうことで重要度の高さがわからなくなる原因となります。そうならないためにも、設定したKSFが目的の達成に必要な要素であるかどうか考え、選定する必要があります。
設定後も定期的な見直しが必要
KSFは一度設定して終わりではなく、設定後も定期的な見直しを行う必要があります。内部環境や外部環境は時間の経過とともに変化していくことから、最初に設定したKSFが適切でなくなってしまうことがあります。ビジネス環境の変化の早い昨今において、変化に合わせ適宜KSFを変更していくことが大切です。
まとめ:KGI達成のためにはKPI・KSFの設定が重要
ビジネスの成果を判断するためにも、目標設定は欠かせません。さらに最終目標であるKGIを達成するためには、中間指標となるKPIやKSFの設定が重要といえるでしょう。重要成功要因であるKSFを適切に設定することができれば、より成果を出しやすくなります。適切なKSF設定のためにも、多角的に分析を行い、重要度の高いものに絞り込むことが大切です。