CXとは?UXとの違いと顧客体験を高める5つの実践法

近年、マーケティングや営業の現場で「UX(ユーザーエクスペリエンス)」に加え、「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という言葉を耳にする機会が増えています。どちらも「体験」を意味しますが、UXは「製品やサービスの利用体験」、CXは「企業との関係全体を通じた体験」を指し、範囲も目的も異なります。
競合が増え、機能や価格では差別化しづらい今こそ、顧客に選ばれる企業になるためにはCXとUXの両立が不可欠です。この記事では、CXとUXの違いをわかりやすく解説し、顧客体験を高めるための5つの実践法を紹介します。
- ▼この記事でわかること
- ・CXとUXの違いと関係性
- ・CX・UXを高める重要性
- ・CXとUXを効果的に高める具体的な方法
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客(カスタマー)としてのあらゆる「体験」を指す言葉です。つまり、サービス・製品を認識してから購入を検討、購入した場合はそれを使用するという一連の流れのすべてにおける体験のことを意味しています。
競合が増え、商品や価格で差別化しづらい現在、CXは企業が選ばれる理由の一つとなっています。実際、オラクル社の調査では、89%の顧客が不満な体験を理由に他ブランドへ乗り換えた経験があると回答しています。
つまり、CXを高めることは「顧客の離脱を防ぎ、ブランドへの信頼を育む」うえで欠かせない要素なのです。
※出典:2011 Customer Experience Impact Report|Oracle
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、「ユーザーが一つの製品やサービスを使う中で得る体験」を意味します。たとえば、アプリの操作のしやすさ、Webサイトの見やすさ、購入フローのわかりやすさなど、個別の利用体験レベルでの満足度を表します。
一方でCXは、ユーザー体験(UX)を含む、顧客と企業のすべての接点での体験を指します。言い換えると、UXはCXの一部であり、優れたUXが積み重なることで、ブランド全体のCXが向上していくのです。
CXとUXの違いを5つの視点で比較
CX(カスタマーエクスペリエンス)とUX(ユーザーエクスペリエンス)はどちらも「体験」を意味する言葉ですが、対象の範囲や目的が異なります。ここでは、5つの観点から両者の違いを整理してみましょう。
| CX(カスタマーエクスペリエンス) | UX(ユーザーエクスペリエンス) | |
|---|---|---|
| 対象 | 顧客と企業の全体的な関係 | 個別の製品・サービス |
| 対象者 | 見込み顧客〜既存顧客 | サービス利用者 |
| 管理 | 経営・マーケ・営業を含む全社 | デザイン・開発チーム中心 |
| 分野 | マーケティング・ブランド戦略 | デザイン・UI・プロダクト |
| 施策 | 顧客満足・ロイヤルティ向上 | 使いやすさ改善 |
1.対象:UXは一部、CXは全体
UXは「一つのサービス・製品」に限定される体験です。一方でCXは、認知から購入・利用・サポート・再購入まで、顧客が企業と関わるすべての体験を指します。つまり、UXが部分的体験なのに対し、CXは企業全体を通した総合的な体験です。
2.対象者:UXはユーザー、CXは顧客全体
UXの対象は、すでに製品やサービスを「使っている人=ユーザー」。CXは、購入前の見込み顧客から既存顧客までを含む広い顧客層が対象です。たとえば、Web広告を見た瞬間から、サポート対応・口コミ投稿までがCXに含まれます。
3.管理方法:UXはデザイン主導、CXは組織全体で管理
UXはデザイナーやプロダクトチームが中心となり、UI設計・操作性改善などを通じて最適化されます。一方でCXは、マーケティング・営業・カスタマーサポート・経営層など、全社横断で設計・管理する領域です。
つまり、UXがプロダクト視点なら、CXは経営・ブランド視点で管理されます。
4.分野:UXはデザイン領域、CXはマーケティング領域
UXはUI設計やユーザビリティ改善といったデザイン・開発領域に近い概念です。CXはブランド体験や顧客ロイヤルティを扱うため、マーケティングや経営戦略の分野に位置づけられます。両者は異なる分野ですが、UXの最適化はCXの向上につながるため、密接に関係しています。
5.施策:UXは操作改善、CXは体験設計
UX改善の施策は、ユーザーが製品やサービスを「快適に使えるようにする」ことを目的としています。具体的には、サイトの導線設計やボタン配置の見直し、フォーム入力の簡略化、ページ表示速度の改善など、操作性や使いやすさを高める工夫が中心です。
一方でCX改善の施策は、顧客が企業やブランド全体に「心地よさや信頼」を感じられるように体験を設計することを目的としています。
UIとは?UXを支える「接点設計」の重要性

UI(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーと製品・サービスをつなぐ「接点」を指します。Webサイトでいえば、ボタンの配置・文字サイズ・色使い・メニュー構成など、ユーザーが実際に触れる部分がUIです。
良いUIは、操作のしやすさや見やすさを通じてUX(ユーザー体験)を支え、結果的にCX(顧客体験)全体の満足度を高めます。つまり、UIはUXを形づくる基盤であり、CX向上の第一歩といえるのです。
UI・UX・CXの関係を整理しよう
ここまで解説してきたとおり、UI・UX・CXはそれぞれ独立した概念ではなく、連続した体験の層として関係しています。
- ・UI(ユーザーインターフェース)
- ユーザーが直接触れる部分。ボタンやデザインなどの接点
- ・UX(ユーザーエクスペリエンス)
- UIを通じて得られる使用体験。操作のしやすさや快適さを指す
- ・CX(カスタマーエクスペリエンス)
- UXを含め、購入前からサポートまでを通じた顧客体験全体
つまり、UIが良ければUXが向上し、UXの積み重ねがCXの満足度を高めるという「UI → UX → CX」の関係性で成り立っています。ユーザー視点で設計されたUIは、快適なUXを生み、最終的に顧客が企業やブランドに抱く好印象(CX)へとつながるのです。
CXとUXを高める重要性
CX(カスタマーエクスペリエンス)とUX(ユーザーエクスペリエンス)は、それぞれ異なる範囲を扱う概念ですが、どちらも顧客満足度や企業成長に直結する重要な要素です。UXが「使いやすさ」や「操作性」の向上を通して顧客の好印象を生むのに対し、CXは「ブランド全体での信頼・感動体験」を生み出します。
両者を一貫して高めることで、企業は継続的な顧客関係を築けるようになります。
1.UXを高めることで顧客の離脱を防ぐ
ユーザーが最初に接するのは、WebサイトやアプリなどのUX(ユーザー体験)です。この体験がストレスなく快適であるかどうかが、購入や問い合わせといった行動に直結します。たとえば、操作が分かりにくいサイトや入力が面倒なフォームは、それだけで離脱率を高めてしまいます。
UI設計や導線改善、レスポンス速度の最適化などを通じてUXを高めることは、顧客との最初の接点を成功体験に変える第一歩です。
2.CXを高めることでブランドへの信頼と愛着を育む
UXの次に重要なのが、企業全体の体験価値=CXです。製品の購入体験からカスタマーサポート、アフターサービス、SNSでの対応に至るまで、顧客とのすべての接点がCXを構成します。
一貫したポジティブなCXを提供することで、顧客は企業に対して「この会社は信頼できる」「次も選びたい」と感じるようになります。これは、リピート率やLTV(顧客生涯価値)の向上、口コミ・紹介による新規顧客獲得にも直結します。
3.CXとUXを連動させることで得られる効果
CXとUXは独立した概念ではなく、密接に連動しています。どんなに優れた製品を提供しても、UIが使いにくければUXが悪化し、結果としてCX全体の満足度が下がってしまいます。
逆に、スムーズなUXが積み重なることで「この企業は使いやすく信頼できる」という好印象が形成され、CX全体の評価が向上します。
つまり、UXはCXを構成する要素であり、両者をバランスよく最適化することが顧客体験の質を高める鍵なのです。
CXとUXを高める具体的な方法
CXを高める方法(企業全体での顧客体験設計)
CXの改善は、マーケティングやサポートなど部門を横断した取り組みが重要です。どの接点でも一貫して心地よい体験を提供することが目的です。
- 1.顧客体験マップ(カスタマージャーニー)を作成する
- 認知から購入・利用・継続までの流れを可視化し、各段階での課題や感情を整理します。これによりCXの改善点が明確になります。
- 2.顧客の声をデータで把握する
- アンケートやNPS、問い合わせ分析などを活用し、満足度を測定。定期的なモニタリングで改善効果を確認します。
- 3.パーソナライズと一貫性のある対応
- MAやCRMを活用し、顧客データに基づいた最適な情報発信を行います。チャネル間でトーンを統一し、ブランドへの信頼感を強化します。
MAについては、以下の記事で解説しています。
【2025年版】MAツールとは?導入目的で選ぶタイプ別製品比較5選
- 4.カスタマーサポートとアフターケアの充実
- FAQやチャットボット、有人対応を組み合わせ、「すぐに解決できる安心感」を提供。購入後も快適な体験を維持します。
- 5.CXを共有する企業文化を育てる
- 顧客体験を共通指標として可視化し、社内で共有します。成功事例の共有を通じて、顧客中心の文化を根づかせましょう。
UXを高める方法(製品・サービス利用体験の最適化)
UX改善は、ユーザーが「ストレスなく心地よく使える」体験を実現するための施策です。UI設計や導線の見直し、情報設計の最適化が鍵となります。
- 1.ユーザー行動データを分析する
- ヒートマップやアクセス解析を使い、離脱ポイントや注目箇所を把握。データに基づいた改善がUX向上につながります。
- 2.情報設計と導線の最適化
- 必要な情報へ最短でアクセスできるようにナビゲーションを再設計。直感的な操作性で満足度を高めます。
- 3.UIデザインを改善する
- 配色・文字サイズ・ボタン位置などを統一し、視認性を高めます。シンプルで分かりやすいデザインが良いUXを生みます。
- 4.レスポンス速度とモバイル対応を最適化する
- 表示速度やモバイルでの崩れはUXを大きく損ないます。モバイルファーストの設計を徹底しましょう。
- 5.継続的にユーザーテストを行う
- 実際の利用状況を観察し、改善を繰り返します。UXは「作って終わり」ではなく、進化させ続けるものです。
まとめ
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、企業と顧客のすべての接点で生まれる体験の総和です。その中でUX(ユーザーエクスペリエンス)は、製品やサービスを利用する際の「使いやすさ・快適さ」を指し、UI(ユーザーインターフェース)はその体験を支える接点設計にあたります。
顧客が求めるのは「便利さ」だけでなく、「気持ちの良い体験」です。UI・UX・CXを一体的に高め、心地よい体験を提供できる企業こそが、これからの時代に選ばれ続ける企業となるでしょう。
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