コンテンツマーケティングの活用状況:日本とアメリカの比較

先日当ブログで米Content Marketing Institute (CMI)社が発表した2016年度のBtoB企業を対象としたコンテンツマーケティングについての調査結果をご紹介しました。
1年前ではありますが、実は日本でも株式会社エコンテにより同様の調査が実施されていますので、本日はその二つの調査結果を比較し、日米のBtoB企業のコンテンツマーケティングへの意識や取り組みの違いについて見ていきたいと思います。
※エコンテ社の調査レポートはBtoC企業も一部含まれていますが、回答者全体のうち72.7%はBtoB企業であることと、調査項目がContent Marketing Institute社のレポートと似ているため、比較対象とさせていただいております。
※記事内のグラフ画像等は、以下より引用しております。
米Content Marketing Institute (CMI)社 What Effective B2B Content Marketing Looks Like [New Research]
株式会社エコンテ 600名に聞いた!コンテンツマーケティング調査レポート 2015年版
コンテンツマーケティングの効果を実感しているかどうか
コンテンツマーケティングはアメリカでも日本でも新しい概念ではありません。BtoB業界では、コンテンツマーケティングを実施している企業が年々増えています。しかし、取り組んでいるコンテンツマーケティングの効果を実感しているかどうかは、日本企業とアメリカ企業に大きな差がありました。日本では、76.3%が取り組んでいるコンテンツマーケティングを「効果的」と答えたのに対して、米BtoB企業は30%しか「効果的」と感じていないことが判明しました。
「効果」の定義にもよりますが、(CMI社レポートは「全体の目標を達成できる」と定義)、アメリカの方が日本より早くコンテンツマーケティングが普及したため、比較的コンテンツマーケティングの経験豊かなアメリカ企業は日本企業より「効果」に対する見方が厳しいということも考えられます。
コンテンツマーケティングを実施する主な目的とは何か?
次にコンテンツマーケティングを実施する理由を比較してみましょう。二つの調査結果から見ると、どちらも「ブランド認知」、「売上」、「顧客獲得」、「顧客育成」、「エンゲージメント」「顧客のロイヤリティ向上」が上位になっています。しかし、それぞれの優先順位は少し異なっています。
アメリカ企業にとって一番の目的は「リードジェネレーション」であり、一方日本企業にとって「ブランド認知」のほうが重視されています。実は2015年まで、CMI社の同じ調査で「ブランド認知」は5年連続コンテンツマーケティングを実施する一番大切な目的という結果が出ていました。しかし、2016年の調査結果では初めて、「ブランド認知」は「顧客獲得」、「売上」、「顧客育成」に抜かれ、4位にまで下がりました。
つまり、企業がコンテンツマーケティングを実施すればするほど、抽象的な「ブランド認知」という目的より、実際に売上に繋がる明確なものを目的とするようになると考えられます。
どのような手法が主流なのか?
コンテンツマーケティングで取り入れている手法に関して、アメリカ企業と日本企業はどちらも「ソーシャルメディア」、「自社ブログ」、「リサーチ」、「メルマガ」が多数を占めています。
その中で、アメリカ企業が力を入れているのに日本企業が主な手法として挙げていないものが「オフラインイベント」です。実は、この「オフラインイベント」という施策こそが、アメリカのBtoB企業が6年連続で一番効果的な手法だと評価している手法なのです。
ここで不思議なのは、日本企業の中でもセミナーや展示会、イベントに力に入れている企業はたくさんある印象なのですが、なぜ主なコンテンツマーケティング手法として挙げられていないでしょうか?
それは、日本企業にとってリアルなイベントであるセミナーや展示会、イベントは、コンテンツマーケティング手法のカテゴリーとして認識されていないからだと考えられます。日本では『コンテンツマーケティング=Webコンテンツ』という考え方が一般的かもしれませんが、アメリカではWeb領域に限らず、リアルなイベントもコンテンツマーケティングを実施する上での戦略に含まれていることが判ります。
コンテンツマーケティングの実施効果はどのような基準で評価しているのか?
「コンテンツマーケティングの実施効果をどのような基準で評価しているか」という質問に、日米企業とも「顧客獲得数」や「リードの質」、「売上」など、直接利益に繋がる評価指標が上位に挙げられています。
しかし、日本の場合は、「ソーシャルメディアのシェア」や「サイトの滞在時間」、「外部リンク」など、SEOに関連する指標が多く挙げられています。一方アメリカ企業では「顧客の契約継続」や「導入動機」といった営業活動や利益に関連する指標が挙げられています。実は、前年の調査結果では米BtoB企業も「Webサイトへの流入」が主な評価基準でしたが、上の目的の部分で述べたように、コンテンツマーケティングが活用されるほど、直接利益に繋がる評価指標が重視されるようになりました。
コンテンツマーケティングを実施する時に直面する課題とは?
「コンテンツマーケティングを実施する時、一番苦労すること」という質問に対し、アメリカ企業も日本企業も「効果的なコンテンツの作成」が一番難しいと答えました。さらに、「コンテンツ量の確保」や「予算の少なさ」、「効果測定」、「コンテンツバリエーション」も共通課題だと発見されました。やはりどこ国のマーケターも限られている予算と時間の中、継続的に顧客の興味を引き出せるような魅力的なコンテンツを作成することに困っていることが判ります。
日本の場合、それに加えて、「コンテンツマーケティングへの知見の無さ」や「コンテンツマーケターの確保」等、ノウハウと人材不足という問題も直面しています。
まとめ
今回の比較から見ると、日本企業のコンテンツマーケティングへの意識や実際の取り組みは以前よりかなりアメリカ企業に近づいてきました。しかし、日本より2~3年ほど先に進んでいると言われているアメリカ企業の状況を把握することにより、日本企業の今後の傾向を予測することができると思います。
数年後の日本では、コンテンツマーケティングに取り組む企業が増え、より企業の利益に直接貢献できるような評価指標をもって実施されていくと考えられます。それに先駆けて、今のうちから営業や利益につながるような指標を用いてコンテンツマーケティングの評価と改善を行ってみてはいかがでしょうか。
1. B2B Content Marketing 2016: Benchmarks, Budgets, and Trends - North America Content Marketing Institute
http://contentmarketinginstitute.com/2015/09/b2b-content-marketing-research/
2. 600名に聞いた!コンテンツマーケティング調査レポート 2015年版株式会社エコンテ
http://econte.co.jp/resource/cmreport2015/
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