ROI(投資利益率)とは?ROASとの正しい使い分け・計算方法を徹底解説

ROI(投資利益率)とは、「Return On Investment」の略称で、投資額に対してどれだけ利益を上げたかを示す指標です。ROIの数値が高ければ高いほど効率良く投資ができていると判断できます。事業やビジネスの成果を評価する指標として多くの企業で活用されていますが、「名前は知っているが、どういうときに使うのかわからない」「詳しい計算方法がわからない」という方もいらっしゃるかと思います。
今回は、ROIを正しく理解し、その求め方まで知ることで、投資金額に対しての費用対効果の見極めができるようにご説明します。
- ▼この記事でわかること
- ・ROIの基本的な意味と計算式
- ・ROIと関連する指標
- ・ROIを活用するメリット・デメリット
- ・ROIを改善・向上させるための実践的な方法
ROIの正しい意味とは?ROASとの違いとは何なのか?
まずはROIについて正しい意味を確認していきましょう。
ROIとは?
ROIは「Return On Investment(投資収益率)」の略称で、投資によってどれだけの利益が得られたかを示す指標です。日本語では「投資収益率」や「投資利益率」とも呼ばれます。
ROIの数値が高いほど、少ない投資で大きなリターンを得られていることを意味し、効率的な投資判断をするうえで非常に重要な指標とされています。マーケティングや広告運用、事業投資など、幅広いビジネスシーンで活用されています。
ROIが重要視される理由
ROIが重要視される最大の理由は、「限られた予算の中で、どれだけ効率的に利益を生み出せたか」を客観的に評価できるからです。
ビジネスにおいては、費用をかければ必ず成果が出るとは限りません。どの施策が成果につながっているのかを見極め、無駄な投資を避けるためには、ROIを把握することが不可欠です。また、ROIは経営層や投資家への説明資料にもよく使われる指標です。数値で裏付けされた説明ができるため、社内外の合意形成をスムーズに進めるうえでも有効といえます。
ROIと似ている「ROAS」との違いは?
ROIと同じくらいROASという言葉を耳にすると思います。ROASは「Return On Advertising Spend」の略称で、「広告費用の回収率」や「費用対効果」と表現されます。両方とも「投資した費用に対する効果」を見る指標ですが、ROIは投資効果、ROASはその後の売上効果であることが大きな違いとなります。
両方とも、数値が大きいほど事業やビジネスで成功していると考えてよいでしょう。事業成功を測るにはどちらも必要な指標です。
ROIの正しい計算方法
ROIの求め方自体は、複雑ではありません。考え方を理解しれば誰でも求めることができるようになります。 ここではROIの求め方を学んでいきましょう。
ROIの計算式は「利益金額÷投資金額」の式で求められる
ROIは、次のような式で求めることができます。
(売上ーコスト)÷ 投資額×100(%)
(売上ーコスト)は、「利益」と置き換えて考えるとわかりやすいでしょう。簡単に言うと「利益」を「投資額」で割ることによってROIを算出することができます。 つまり利益が投資額よりも小さい場合、ROIは100%を切ってしまいますので、ビジネスが赤字に終わってしまう可能性が高いことがわかります。
次にROASの求め方もご紹介しましょう。ROASは以下の計算式で求められます。
広告からの売上÷広告費(コスト)×100(%)
たとえば、広告からの売上が10万円、かかった広告費が5万円としましょう。この時の計算式は、10万÷5万×100=200%となり、この施策は成功していると考えられます。
ほかにもマーケティング施策ごとのROIは下記があります。
- ■メルマガ配信のROI
- 利益・効果:配信したメルマガをきっかけに発生したリード獲得数、商談数、売上
投資額:メール配信ツール費、マーケティングオートメーションツール費、人件費 など
- ■展示会出展のROI
- 利益・効果:展示会で獲得した名刺数、展示会がきっかけとなった売上
投資額:出展料、販促物制作費、展示ブース製作費、当日の人件費 など
上記のように、施策ごとにROIを算出し、分析することによって、費用対効果の高い施策に注力でき、事業の成長につなげることができます。
事例:ROIの計算を例題に当てはめて実践してみる
計算式について理解ができたところで、今度は実際にROIの計算をしてみましょう。次に挙げるA社とB社、どちらがより良い投資をできているでしょうか?
- 【A社】
- 1,000万円投資をして、2,000万円の利益をあげた
- 【B社】
- 10万円投資をして、50万円の利益をあげた
まずはA社のROIを求めてみましょう。
【A社】2,000万÷1,000万×100=200(%)
A社のROIは200%であることがわかります。では、B社はどうでしょうか。
【B社】50万÷10万×100=500(%)
B社の利益の額はA社よりも少ないですが、ROIで考えると、投資対効果が大変優れていることがわかりますね。
ROIと混同しやすいマーケティング指標とその使い分け
ROIはビジネスにおける代表的な指標ですが、ROI、ROASのほかにもROMIやROEなど、似たような指標も多く、違いが分かりづらいと感じたことはありませんか?これらの指標はそれぞれ役割や活用シーンが異なるため、正しく理解して使い分けることが重要です。
ここでは、ROIと混同されやすい指標について、それぞれの意味や計算式をわかりやすく整理します。
特徴・用途 | 計算式 | |
---|---|---|
ROE 自己資本利益率 | 株主が投資した資本に対する利益率を示す、企業の収益性分析に活用 | (当期純利益 ÷ 自己資本)× 100 |
ROIC 投下資本利益率 | 借入金も含めたすべての資本に対する利益率、事業全体の効率性を見る | (税引後営業利益 ÷ 投下資本)× 100 |
ROA 総資産利益率 | 企業が持つ資産全体をどれだけ有効活用しているかを測定 | (当期純利益 ÷ 総資産)× 100 |
ROMI マーケティング投資利益率 | マーケティング施策単体の費用対効果を評価 | (マーケティングによる利益 ÷ マーケティング費用)× 100 |
CPA 顧客獲得単価 | 一人の顧客を獲得するためにかかった平均コスト | 広告費 ÷ コンバージョン件数 |
CVR コンバージョン率 | Webマーケティングでよく使われる、成果率を示す指標 | (コンバージョン数 ÷ アクセス数)× 100 |
LTV 顧客生涯価値 | 一人の顧客から生涯で得られる利益の目安、長期的な戦略に活用 | 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間 |
ROIを活用することのメリット
ここまで、ROIの意味や計算式をご紹介してきました。では、なぜROIがこんなにも利用されているのでしょうか。ROIを活用することのメリットをご説明しましょう。
規模の違う事業の効果測定ができるようになる
先述したA社とB社の例のように、規模の異なる企業や事業間の比較が容易にできるのがこのROIの良いところです。
会社は必ず、さまざまな事業に対してどこにどれくらい投資をするべきか検討をします。その考え方の基となるのがこのROIです。ROIが良い、つまり投資対効果が優れている事業に集中して投資をしていくことで、会社の発展につながりやすくなるでしょう。
ちなみにROIの目安は業種や各企業の考え方によって変わりますが、一般的に飲食業などはROIが高く、小売業は低くなる傾向にあります。
事業の効果を比較できる
ROIを活用する最大のメリットは、異なる事業やプロジェクトの投資効果を客観的に比較できることです。限られた資源でどの施策が最も効果的かを見極めるために、ROIは欠かせません。
たとえば、広告キャンペーンと新製品開発の2つの投資に対して、それぞれROIを計算することで、どちらがより高い利益を生み出したかを明確にできます。これにより、次回の投資判断や施策の選定をデータに基づいて行えるようになります。
さらに、ROIを活用することで、投資の無駄を省き、より効率的な資金運用が可能となります。成果が見込めない施策に投入した資金を他の有望な施策に振り向けることで、事業全体のパフォーマンスを最大化することができます。
事業の効果を数値的に判断することで改善のきっかけになる
ROIは、投資した費用でどれくらい利益が出ているのかを知りたいときにも活用できます。つまり、実際に行った事業がどれだけ効果があったのかを正確に見極める材料になるのです。また、案件の成否についての判断基準としても活用することができます。
さらに、ROIを通じて事業の成果を数値で確認することで、どの部分に改善の余地があるのかを特定することができます。たとえば、ROIが低ければ、投資額の見直しや施策の内容を改善する必要があることが明確になります。これにより、次回の戦略に向けて具体的な改善策を立てやすくなり、継続的な成長へとつながります。
ROI活用のデメリットも知っておこう
ROIは非常に有用な指標ですが、すべての状況に完璧に適応できるわけではありません。活用する際には、いくつかのデメリットも理解しておく必要があります。
長期的な評価には向いていない
ROIは、投資とその利益を短期的に評価するのに適していますが、長期的な影響や効果を測るには限界があります。たとえば、新規顧客の獲得に投資した場合、その顧客がどれくらいの期間にわたって利益をもたらすかは、ROIの計算には反映されにくいでしょう。
長期的な事業成長やブランド構築といった、時間をかけて現れる効果を評価するには、LTV(顧客生涯価値)やブランドの認知度など、他の指標と組み合わせて評価することが重要です。
数値化できないものは評価できない
ROIの計算は、あくまで投資と利益を数値で表現することです。そのため、数値化できない要素、たとえば顧客の満足度やブランドイメージのような定量的でない要素を評価するのは難しいでしょう。
これらの要素は、事業にとって非常に重要であっても、ROIだけでは十分に評価できません。これを補うためには、定性データを別途収集して分析する必要があります。
ROIの活用シーン
ROIは、投資に対してどれだけの成果が得られたかを数値で把握できる指標です。その汎用性の高さから、さまざまなビジネスシーンで活用されています。ここでは、特にROIが役立つ代表的なシーンとして「経営戦略」と「マーケティング施策」における活用方法を紹介します。
経営戦略での活用
ROIは、経営戦略を立てる際にも非常に有効な指標です。特に、複数の事業や投資案件を比較する際に役立ちます。たとえば、新規事業に対してどれだけの投資を行い、その投資がどれだけの利益を生んだのかをROIで算出することで、事業の方向性やリソース配分を最適化できるでしょう。
ROIを活用することで、経営層は資源を最も効果的に分配し、事業ごとの収益性を明確に把握できます。これにより、効果が薄い事業への投資を抑え、より利益が見込める事業にリソースを集中させることが可能となります。
マーケティング施策での活用
マーケティング施策において、ROIは広告費やキャンペーン投資がどれだけの利益を生んだかを測るために不可欠な指標です。たとえば、広告キャンペーンにかけた費用に対して、売上や新規顧客獲得数がどれだけ増加したかをROIで評価することができます。
このように、マーケティング活動の成果を数値的に示すことにより、施策の改善点を明確にし、次回のマーケティング戦略に活かすことができます。また、ROIが低い場合には、マーケティング手法やターゲット層の見直しを行い、次のアクションを計画するための指標として活用できます。
ROIを改善する方法
ここまでROIの概要や計算方法についてご紹介してきました。ROIは算出して終わりではなく、より事業成長するための分析や改善が大切になります。先述した計算式を元に、具体的にどの数値を改善することでROIを高められるのかは下記になります。
コストを抑える
ROIを高めるためには、投資額を抑えることが基本です。無駄な支出を見直すことで、同じ収益でもROIを向上させることができます。
- ・マーケティングの投資額を減らす
- 効果の薄い広告チャネルの見直しや、オーガニック流入を狙ったSEO施策へのシフトなどにより、広告費を最適化できます。
- ・人件費を抑える
- 業務の自動化や外部リソースの活用で工数を削減し、人件費の抑制を図ることでコスト全体を下げられます。
収益率を向上させる
ROIの改善には、単にコストを下げるだけでなく、利益の拡大も重要です。収益率を向上させるためには以下のような施策があります。
- ・商品・サービス単価を上げる
- 価格改定や上位プランの導入、付加価値の提供によって、1件あたりの売上を増やすことができます。
- ・商品・サービス原価を下げる
- 仕入れルートの見直しや業務効率化により、利益率を改善できます。
- ・商品・サービスの販売数を増やす
- クロスセル・アップセルの強化、リピート施策、販路拡大などによって販売数を増加させ、収益全体を押し上げます。
このように、コスト削減と収益最大化の両面からROIを改善することで、投資効率を高めることが可能になります。現状の施策を振り返り、どの改善策が合っているか自社、競合、市場の状況に合わせて改善していきましょう。
ROIの向上にはツールの活用が効果的
ROIを高めるためには、業務の効率化や人件費の削減、そして成果の最大化が欠かせません。そこで近年注目されているのが、IoTやAIを活用したIT投資です。これらの技術を取り入れることで業務の自動化が進み、コスト削減と成果拡大の両立が可能になります。中でも、マーケティング分野では*MAツールの活用がROI向上に大きく貢献します。
MAツールの活用でROIを改善する
MAツールは、見込み顧客へのアプローチを自動化・効率化できるツールです。具体的には、メール配信、スコアリング、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)、顧客分析といった機能があり、営業やマーケティングの工数を大幅に削減できます。
これにより、人件費や広告費といったコストを抑えつつ、最適なタイミングで最適な顧客にアプローチできるため、成果につながりやすくなり、ROIの改善に直結します。さらに、どの施策が効果的だったかを可視化できるため、無駄な投資を削減し、継続的な改善にも役立ちます。
MAツールに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
【2025年版】MAツールとは?おすすめツール5選を徹底解説!
さいごに
ROIの意味や基本の計算式についてご説明しました。ROIを活用することで、実際にかけた投資に対してどれくらいの効果があるのかだけではなく、規模の異なる事業の比較をすることが可能になります。こうした正しい物差しを持つことで、より明確に指標を決定したり、評価を適切にできるようになるので、ぜひ積極的に活用していきましょう。