【後編】自治体が取り組む前例なきデジタルマーケティング MAとの出会いが企業誘致活動に革新をもたらす
自治体の企業誘致活動にデジタルマーケティングを取り入れた事例として、札幌市東京事務所 シティセールス担当課長の北川雄次郎氏に、取り組みを始めた経緯や、これまでの成果などについて聞きました。今回はその後編となります。前編はこちらを御覧ください。(インタビュアー:営業担当 北島、Urumo!編集部 遠山)
お客様プロフィール

シティセールス担当課長
北川雄次郎
事業内容 | 中央省庁との連絡調整や情報収集、シティPR、企業誘致など |
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ホットリードを見極め効率的なアプローチが可能に
- 遠山
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今、実際に取り組んでいるデジタルマーケティングについて伺えますか?
- 北川氏
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昨年度末に2か月半ほど、デジタル広告を展開しました。それによってWebサイトへの流入量は激増しましたが、コンバージョンは当初の想定より少ない件数でした。デジタル広告を実施してわかった事は、いろいろな企業からのアクセスがある中で、MAツールで分析すると、閲覧数が多い、閲覧時間が長いなど、やはり"光るアクセス"があるわけです。こういったアクセスの傾向を把握することで、アプローチすべき対象があぶりだされていく、そういうことは、流入量の増大なくしては決してわからない事であり、大きな収穫であると考えています。
- 遠山
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以前のアプローチとの差を感じることはありますか?
- 北川氏
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はい、手応えを感じています。また、先方の状況が分からない中でのアプローチは断られることも多く、精神的なストレスが負担になってくると思いますが、効率的にアプローチをかけられるようになりましたので、スタッフのストレスをおさえることにも繋がり、マネジメントの側面からも、デジタルマーケティングの活用は意義があると捉えています。
なぜデジタルマーケティングの実施に踏み切れたのか?
- 北島
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自治体におけるデジタルマーケティングの事例が少ない中で、ここまでやり抜くことができた要因はなんでしょうか?
- 北川氏
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直接的には、私たち自身が興味を持って取り組めたからだと思います。ではなぜそういう姿勢で臨めたかというと、先ほど述べたように、やはり上司の理解や本庁を含めた組織の協力体制があったから。それは間違いないと思います。
- 北島
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サポートしていて、本庁含めた皆さんの協力体制は札幌市の良い部分だと感じます。自治体さんと思えないぐらいの機動力は、実際に立地する企業側からすると嬉しいのではないでしょうか。サポートを強くしてくれそうだな、と思います。
- 北川氏
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ありがとうございます。この取り組みに対しては、我々自身も非常に面白がって実行できましたね。
デジタル以外の施策も、可視化することで効率良くしていきたい
- 遠山
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今後、営業・マーケティングでどんなことに取り組みたいですか?
- 北川氏
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デジタルの分野では、Webサイトへのより興味、関心の高い企業の流入を促すための仕掛けですね。デジタル広告は一定の成果を得られたものの、現状、札幌市のWebサイトは札幌の情報が主なものですので、コンテンツ自体の力が弱く、自然検索による流入が少ない。読者に対してお役立ち情報などのコンテンツを充実させることで、札幌市を比較検討する前の段階の企業を取り込んでいきたいと考えています。
- 遠山
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デジタル以外の施策については?
- 北川氏
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セミナーの開催など、オフラインのマーケティング施策とデジタルを連携させて、成果につなげたいと考えています。ただ、そもそも拠点開設というのは検討までのハードルが高いものなので、そのテーマでセミナーを開いても人が集まるのかな、という懸念はあります。いろいろなやり方を試して、工夫しなければならないでしょう。
"東京"にいる優位性を活かして、札幌市のマーケティングを引っ張る存在に
- 遠山
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札幌市、またこの東京事務所が目指す姿を教えてください。
- 北川氏
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東京は、最新の技術やビジネスがいち早く展開されているという、地方にはない優位性があります。我々はそれを活かし、率先していろいろな手法を試して、その結果を踏まえて本庁の施策に取り込んでもらうような、いわば突破口的な役割を担うべきだと考えています。
- 北島
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オフィスもすごくオープンですよね。会議室もガラス張りですし、カフェスペースもある。
- 北川氏
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本庁側で最初にこのような取組を実現するのは時間がかかるのではないかと感じます。ですが、我々がまず試して「良いじゃないか」となれば実行しやすい。こういった役割はどんどん担っていきたいですね。
札幌市についての話ですが、先端技術によって地域の課題を解決する、先端的な都市になるポテンシャルがあると考えています。札幌市の課題解決モデルが、ひいては全国的な課題解決のロールモデルのような存在になれれば最高ですよね。
- 遠山
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今回お話をうかがっている中でも、非常に風通しがよく、新しいマーケティングの取り組みも積極的にされていると感じました。多分、そういった取り組みがまだまだできていなかったり、気づいていなかったりする自治体もいらっしゃると思います。そういう自治体へ向けて、何かアドバイスがあればお願いします。
- 北川氏
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各々の自治体の強みを、伝えるべき人に適切なタイミングで伝える。その手段として、デジタルマーケティングは非常に有用です。私たちもまだ勉強中の身で、アドバイスできる立場ではありませんが、プロセスごとの「見える化」「可視化」が可能になるのがデジタルマーケティング。このことによって、導入から運用へ、また、運用上の課題やその改善といったPDCAも回しやすい。これからは、住民に対するマーケティングも重要度合いが増すでしょうから、企業誘致に限らず、様々な政策で活かせるのではないでしょうか。
法人営業・マーケティングのやりがいとは?
- 北島
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最後に、法人営業の取り組みをされている方にお話をうかがっているのですが、今、企業に向けてアプローチやマーケティングをしている中で、何かおもしろみややりがいは感じていますか。
- 北川氏
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単純に取り組みが功を奏して、立地につながったときというのは、われわれの仕事の醍醐味ですよね。喜びを一番感じます。ですが、現実はシビアでまだまだ企業誘致については改善すべき点がたくさんあります。だから、「これをやったらうまくいくかもしれない」といった可能性を内部で議論しながら進めていこうと思います。いきなり大きな成果が出せるわけではなく、小さな成功を積み上げていくことが将来的に立地につながる。これは今回のデジタルマーケティングの取り組みで勉強させていただいて確信しているので、まだまだ楽観できる状況ではありませんが、今すごくやりがいを感じています。
- 遠山
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そこを少しずつ取り組んでいくことで、どんどん成果につながっていくといいですよね。本日はありがとうございました。
編集後記
自治体と聞くと新しい取り組みに慎重なイメージもありますが、その中でも札幌市東京事務所様は先進的なマーケティング施策に取り組んでいるとても素敵な事例でした。今後も様々な施策に取り組んでいくことで、ぜひ他の自治体の事例となっていただきたいと思います。ありがとうございました。