【最新】「セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)」とは?概念と必要性まとめ

近年、ビジネスをおこなう上で、デジタルテクノロジーやWebを活用するシーンが多くなってきています。FinTechやAdTech、EdTechなど、〇〇techという言葉を目にする機会が圧倒的に増えましたよね。それだけ、様々な業界や領域でのテクノロジーの活用が進んでいるということが言えます。
FinTech = Finance(金融) × Technology
AdTech = Advertisement(広告) × Technology
EdTech = Education(教育) × Technology
営業現場でも、ここ数年「SalesTech」という言葉をよく耳にしますが、その中でも、営業活動の改善や最適化を目的とした「セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)」という領域に注目が集まっています。
この記事では、セールス・イネーブルメントの概念や注目されている背景、具体的にどのようなツールがあるのかなど、ご紹介します。
セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは
セールス・イネーブルメントとは、「営業活動を改善し、最適化するための概念や取り組み」のことを指します。ちょっとわかりづらいので、具体的にしてみたいと思います。
部分最適的にツールを導入しても、最適化はされない
「営業」と一口で言っても、お客さまとの商談やメンバーの教育研修、営業資料の管理など、様々な業務があります。各業務を効率化するために、ツールなどを導入している企業も多いと思いますし、人事部が主導で研修を行ったり、情シス部門がシステムの設計や導入を行っている企業もあると思います。
もちろんそれぞれの施策によって改善はされると思いますが、それはあくまで部分的・分断的なものになってしまいます。それよりも、「営業プロセス全体を一貫して施策設計・管理することで、トータルで最適化する」というのがセールス・イネーブルメントの考え方なのです。
ポイントは2つ。ひとつめは、「全体設計」です。まずは、営業組織内だけでなく営業が関わる領域全てを視野に入れ、施策を設計しましょう。もうひとつは「数値の可視化」です。施策に対してどれだけ効果があったか、あるいは無かったかを把握して、最適化につなげていきましょう。
アメリカでは、専門部署を設けるのが一般的
セールス・イネーブルメントの概念が生まれたアメリカでは、この概念を企業に導入する時には専門部署を設けるのが一般的と言われています。この部署に配置されるのは営業人員だけでなく、マーケティング担当や人事担当、システム担当など、各業務に関わるメンバーが該当します。そうすることで、営業部門単独で取り組んだ時には実現できないような効果をあげることができるのです。
セールス・イネーブルメント市場
ここで、少しセールス・イネーブルメントの市場について触れたいと思います。ITRによると、セールス・イネーブルメントツールは、以下のように定義されています。
「セールスコンテンツを中核に据えた業務を効率化・高度化することで、営業力を強化するためのシステム」
「セールスコンテンツの作成・更新、保管・管理、活用状況の可視化、ならびに営業担当者の教育/トレーニングの4つの機能を有する製品」
セールス・イネーブルメントツールの市場は、2017年度に売上金額が14億円、前年度比6.1%増となっています。営業業務の効率化を求める企業が増えていること、そして参入ベンダーも増えているという背景もあり、今後はさらに高い成長が予測されています。
セールス・イネーブルメントが注目される理由
では、なぜ今セールス・イネーブルメントが注目を浴びているのでしょうか。もちろん冒頭にお伝えした「テクノロジー活用が進んでいる」という大きな流れもありますが、その中でも特筆しておくべき理由をご紹介します。
1、マーケティング活動が進んできた
マーケティングが進んできた背景として大きいのが、マーケティングオートメーションツールの普及です。2014年もしくは2015年が「マーケティングオートメーション元年」と言われていましたが、わずか4〜5年で、マーケティングオートメーションは一般的なものになりました。
国内企業のマーケティングオートメーションツール導入率は数%と言われてはいますが、「見込み顧客の継続的なフォローと興味喚起」「確度の高い見込み顧客の選別して営業にパスする」といったマーケティングオートメーションに関わる考え方や活動が広まりつつあり、それに合わせて、マーケティング部門から提供されるリードは増えつつあります。
さて、マーケティング部門から提供される見込み顧客の質や量が増えるは喜ばしいことですが、一方で量が増えることで営業が対応しきれないという課題がでてきます。せっかく獲得したのに対応できず取りこぼしてしまっていては、マーケティング部門への投資がもったいないですね。また、営業力が弱い企業では、見込み顧客をなかなか受注に繋げられません。
そのような課題を解決するために、営業力の向上や効率化の必要性が高まってきているのです。 今後ますますマーケティングオートメーションの導入が進むと、この課題に直面する企業が増えてくるのではないでしょうか?
2、ツールへの投資費用の回収ができていない
SFAやCRMなどのツールは、他の営業ツールより古くから知られていますし、比較的多くの企業が導入・活用しているのではないでしょうか。
しかし、ツールの投資対効果を可視化したり、費用をきちんと回収できている企業は多くないというのが現状です。営業ツールにかけた費用を回収するためには、より営業効率を高めていく必要があるのです。
これら2つの課題を解決するために、営業活動の改善や最適化の必要性が高まってきたというのが、セールス・イネーブルメントが求められる背景です。
セールス・イネーブルメントのメリット
では、セールス・イネーブルメントに取り組むと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? ここまでも触れてきましたが、改めてご紹介します。
営業力向上と平準化
ひとつめは、営業力向上と平準化が実現できることです。営業チームの実状に合わせた教育研修も実施できますし、成果が出ているメンバーの営業活動ノウハウをチームで共有することもできます。なかなか実現が難しい営業スキルの共有も、セールス・イネーブルメントに取り組むことで、実現に繋がるのです。
スキルのバラツキを無くし、チーム全体を底上げできるのが、セールス・イネーブルメントという概念の良さです。
施策毎の貢献度の可視化
セールス・イネーブルメントに取り組む際は、いろいろな活動を数値に落とし込む必要があります。逆に言うと、様々な活動が数値として表されることで、マーケティングのように「どの施策が」「どれくらい活用され」「どれくらい成果に貢献したのか」を見える化し、どこに課題があるか、どの施策がどれだけ改善に繋がったかが把握できます。
セールス・イネーブルメントを実現するためのツール
前段でも書きましたが、セールス・イネーブルメントに取り組むには、営業部門だけではなく横断的に取り組む必要がありますが、合わせて、ツールの活用も重要です。
ここでは、さまざまなツールが提供されている海外のツールを中心に、ご紹介します。
海外のセールス・イネーブルメントツール
- ・営業研修
- ツール:Impartaなど
営業担当の研修やコーチングを支援するツールです。
- ・評価、分析
- ツール:Lattice、amacusなど
営業担当の活動や成果をもとに評価や分析を行うためのツールです。
- ・営業資料、コンテンツマネジメント
- ツール:HIGHSPOT、CLEARSLIDEなど
営業資料の作成および営業担当間の共有を効率的にするツールです。
- ・営業プロセス改善
- ツール:hoopla、SalesSeekなど
営業活動の各プロセスを見える化し、ボトルネックの発見・改善を支援するツールです。
紹介したカテゴリ以外でも、「採用支援」「CRM有効活用支援」「競合分析」などの幅広いツールが「セールス・イネーブルメントツール」と呼ばれています。
日本のセールス・イネーブルメントツール
日本でもセールス・イネーブルメントツールが増えてきていますので、いくつかご紹介します。
ツール:Handbook/アステリア社
HTMLや動画を含むコンテンツの作成・管理・共有ができるツールです。
ツール:Sales Doc(セールスドック)/イノベーション社
https://promote.sales-doc.com/lp/01/
営業資料の管理や、送付した資料の閲覧状況がわかるツールです。
ツール:CallidusCloud Sales Enablement/SAP社
https://www.calliduscloud.com/sales-enablement
見込み顧客へ適切なタイミングでコンテンツを提供できるツールです。
ITRの定義によると、以下がセールス・イネーブルメントツールの機能範囲とされています。
- コンテンツの作成・更新
- 保管・管理
- 教育/トレーニング
- 見込み顧客および彼らと対面する営業へのコンテンツのレコメンド
- eメールやオンラインミーティング/デモなどを利用したコンテンツの共有
- コンテンツの活用状況の可視化
今後提供されるツールも増えてくると思うので、注目していきたいと思います。
さいごに
今後ますます営業分野のテクノロジー活用は進んでいくと想定されます。セールス・イネーブルメントの概念にあるように、営業部門だけでなく、関わる部門含めて一貫した施策設計をおこない、営業活動の最適化を実現しましょう。