【最新】セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは?概念と実現する方法まとめ

近年、ビジネスをおこなう上で、デジタルテクノロジーやWebを活用するシーンが多くなってきています。FinTechやAdTech、EdTechなど、〇〇techという言葉を目にする機会が圧倒的に増えましたよね。それだけ、様々な業界や領域でのテクノロジーの活用が進んでいるということが言えます。
- FinTech = Finance(金融) × Technology
- AdTech = Advertisement(広告) × Technology
- EdTech = Education(教育) × Technology
営業現場でも、ここ数年「SalesTech」という言葉をよく耳にしますが、その中でも、営業活動の改善や最適化を目的とした「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」という領域に注目が集まっています。
この記事では、セールスイネーブルメントの概念や注目されている背景、具体的にどのようなツールがあるのかなど、ご紹介します。
セールスイネーブルメントとは?
セールスイネーブルメントとは、「営業活動を改善し、最適化するための概念や取り組み」のことを指します。ちょっとわかりづらいので、具体的にしてみたいと思います。
「営業」と一口で言っても、お客さまとの商談やメンバーの教育研修、営業資料の管理など、様々な業務があります。各業務を効率化するために、ツールなどを導入している企業も多いと思いますし、人事部が主導で研修を行ったり、情シス部門がシステムの設計や導入を行っている企業もあると思います。
もちろんそれぞれの施策によって改善はされると思いますが、それはあくまで部分的・分断的なものになってしまいます。それよりも、「営業プロセス全体を一貫して施策設計・管理することで、トータルで最適化する」というのがセールスイネーブルメントの考え方なのです。
セールスイネーブルメントを成功させるポイント
- ・全体設計
- ・数値の可視化
セールスイネーブルメントでは、営業組織内だけでなく営業が関わる領域全てを視野に入れ、施策を設計しましょう。また、施策に対してどれだけ効果があったのか、あるいは無かったかを把握して、最適化につなげていくことが重要となります。
セールスイネーブルメントが注目される理由
では、なぜ今セールスイネーブルメントが注目を浴びているのでしょうか。もちろん冒頭にお伝えしたテクノロジー活用が進んでいるという大きな流れもありますが、理由の一つに「マーケティング活動の変化」があります。
マーケティングが進んできた背景として大きいのが、マーケティングオートメーションツールの普及です。2014年もしくは2015年が「マーケティングオートメーション元年」と言われていましたが、わずか4〜5年で、マーケティングオートメーションは一般的なものになりました。
国内企業のマーケティングオートメーションツール導入率は数%と言われてはいますが、「見込み顧客の継続的なフォローと興味喚起」「確度の高い見込み顧客の選別して営業にパスする」といったマーケティングオートメーションに関わる考え方や活動が広まりつつあり、それに合わせて、マーケティング部門から提供されるリードは増えつつあります。
さて、マーケティング部門から提供される見込み顧客の質や量が増えるのは喜ばしいことですが、一方で量が増えることで営業が対応しきれないという課題がでてきます。せっかく獲得したのに対応できず取りこぼしてしまっていては、マーケティング部門への投資がもったいないですね。また、営業力が弱い企業では、見込み顧客をなかなか受注に繋げられません。
そのような課題を解決するために、営業力の向上や効率化の必要性が高まってきているのです。今後ますますマーケティングオートメーションの導入が進むと、この課題に直面する企業が増えてくるのではないでしょうか?
このような課題を解決するために、営業活動の改善や最適化の必要性が高まってきたというのが、セールスイネーブルメントが普及した背景です。
セールスイネーブルメント市場
ここで、少しセールスイネーブルメントの市場について触れたいと思います。 セールスイネーブルメントツールの市場は、2017年度に売上金額が14億円、前年度比6.1%増となっています。
営業業務の効率化を求める企業が増えていること、そして参入ベンダーも増えているという背景もあり、今後はさらに高い成長が予測されています。
セールスイネーブルメントのメリット
では、セールスイネーブルメントに取り組むと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?ここまでも触れてきましたが、改めてご紹介します。
営業力向上と人材教育
ひとつめは、営業力向上と営業スキルの標準化が実現できることです。営業チームの実状に合わせた教育研修も実施できますし、成果が出ているメンバーの営業活動ノウハウをチームで共有することもできます。なかなか実現が難しい営業スキルの共有も、セールスイネーブルメントに取り組むことで、営業活動の属人化からの脱却に繋がるのです。
スキルのバラツキを無くし、チーム全体を底上げできるのが、セールスイネーブルメントという概念の良さです。
施策毎の貢献度の可視化
セールスイネーブルメントに取り組む際は、いろいろな活動を数値に落とし込む必要があります。
逆に言うと、様々な活動が数値として表されることで、マーケティングのように「どの施策が」「どれくらい活用され」「どれくらい成果に貢献したのか」を見える化し、どこに課題があるか、どの施策がどれだけ改善に繋がったかが把握できます。
ツール投資費用の回収
SFAやCRMなどのツールは、他の営業ツールより古くから知られていますし、比較的多くの企業が導入・活用しているのではないでしょうか。
しかし、ツールの投資対効果を可視化したり、費用をきちんと回収できている企業は多くないというのが現状です。セールスイネーブルメントに取り組むことは、営業効率を高めることができ、それにより成果の向上も見込め、営業ツールにかけた費用を回収することにもつながるでしょう。
セールスイネーブルメント実施の5つの手順
セールスイネーブルメントを実施するには、これから解説する5つの手順を踏んで進めていく必要があります。
1. データ管理体制の構築
セールスイネーブルメントでは、顧客情報だけでなく売上や受注率、商談履歴などさまざまな情報を蓄積し、データとして活用します。そこで、まずはデータを管理・活用する体制の構築が必要です。
SFAやCRMといったツールを活用することで、より効率的にデータ管理を行えるようになるでしょう。
2. 部署・人材の設定
セールスイネーブルメントの概念が生まれたアメリカでは、この概念を企業に導入する際には専門部署を設けるのが一般的とされています。
この部署に配置されるのは営業人員だけでなく、マーケティング担当や人事担当、システム担当など、各業務に関わるメンバーが該当します。そうすることで、営業部門単独で取り組んだ時には実現できないような効果をあげることができるのです。
そこでセールスイネーブルメントを実施する際は、部門を分けずに管理や設計のできる体制作りが不可欠といえるでしょう。
3. プログラムの開発と提供
体制の構築ができたら次に、これまで成果を出している営業担当者のデータをもとにして、他の社員に活かすことができるトレーニングプログラムを作成します。 作成したプログラムは実際に社内で実施していきましょう。
4. 効果検証
これまで蓄積されたデータや、実施したトレーニングプログラムの効果検証に移ります。プログラムを実施したことで、社内やチーム内にどのような変化、効果があったのかしっかり検証しましょう。
また実施したプログラムの履歴や、結果はいつでも閲覧できるようデータとして残しておくことも大切です。
5.評価と改善
実施したプログラムの評価結果を踏まえ、必要な改善を実施します。例えば、トレーニングプログラム内容の見直し、情報のアップデート、ツールの改良などです。またこれを繰り返し行うことで営業プロセスの標準化、営業スキルの均質化へとつながっていくのです。
以上が一般的なセールスイネーブルメントの実施手順です。しかし企業や業種によっては具体的な手順や内容が異なることもあるため、自社にとって適切な手順を検討することが大切です。
セールスイネーブルメントを実現するためのツール
前段でも書きましたが、セールスイネーブルメントに取り組むには、営業部門だけではなく横断的に取り組む必要があり、合わせてツールの活用も重要です。 ここでは、さまざまなツールが提供されている海外のツールと日本のツールをそれぞれご紹介します。
また、ITR社によるとセールスイネーブルメントツールは、以下のように定義されています。
- ・セールスコンテンツを中核に据えた業務を効率化・高度化することで、営業力を強化するためのシステム
- ・セールスコンテンツの作成・更新、保管・管理、活用状況の可視化、ならびに営業担当者の教育/トレーニングの4つの機能を有する製品
海外のセールスイネーブルメントツール
セールスイネーブルメントツールの種類や機能は多岐にわたります。比較の際に考慮すべきポイントは以下のようなものがあります。
- ・営業研修
- ・営業評価・分析
- ・コンテンツ管理
- ・営業プロセス改善
ここでは、それぞれ得意とする領域に分けてツールを紹介していきます。
・営業研修
- Imparta
- URL:https://imparta.com/
営業担当の研修やコーチングを支援するツールです
・営業評価、分析
- Lattice
- URL:https://www.latticesemi.com/ja-JP
営業担当の活動や成果をもとに評価や分析を行うためのツールです
・コンテンツ管理
- HIGHSPOT
- URL:https://www.highspot.com/
- CLEARSLIDE
- URL:https://www.clearslide.com/
営業資料の作成および営業担当間の共有を効率的にするツールです
・営業プロセス改善
- hoopla
- URL:https://hoopla.net/
- SalesSeek
- URL:https://www.salesseek.com/
営業活動の各プロセスを見える化し、ボトルネックの発見・改善を支援するツールです
紹介したカテゴリ以外でも「採用支援」「CRM有効活用支援」「競合分析」など、セールスイネーブルメントには幅広いツールがあります。
日本のセールスイネーブルメントツール
これまでのセールスイネーブルメントツールは海外のものが主流でしたが、最近では日本でもセールスイネーブルメントツールが増えてきていますので、いくつかご紹介します。
また、セールスイネーブルメントツールの機能範囲は以下の6つとされています。
- ・コンテンツの作成・更新
- ・保管・管理
- ・教育/トレーニング
- ・見込み顧客および彼らと対面する営業へのコンテンツのレコメンド
- ・eメールやオンラインミーティング/デモなどを利用したコンテンツの共有
- ・コンテンツの活用状況の可視化
- Handbook/アステリア株式会社
-
HTMLや動画を含むコンテンツの作成・管理・共有ができるツールです
- Sales Doc(セールスドック)/株式会社Innovation X Solutions.
-
URL:https://promote.sales-doc.com/
営業資料の管理や、送付した資料の閲覧状況がわかるツールです
- KNOWLEDGE WORK/株式会社ナレッジワーク
-
URL:https://knowledgework.cloud/
営業資料・動画や営業ノウハウが簡単に共有できるツールです
セールスイネーブルメントツールを活用して営業成果を最大化させた事例
Sales Docの営業チームでは、個人の営業経験や勘だけに頼らない営業活動を目指し、セールスイネーブルメントに取り組んでいます。
Sales Docの営業チームは、営業経験の少ないメンバーで構成されており、かつ人数が少ないためリソースが限られていました。そのため、行動量を増やすにも限界があり、いかに見込み確度の高い顧客を優先的にアプローチするかが課題でした。
そこで、商談の量と質を担保することにフォーカスし、リストの優先順位付け、商談獲得方法や頻度、回数、トークを標準化しました。しかし、リストの優先順位の付け方は営業担当者の感覚に頼らざるを得ない状況でした。
新規顧客開拓をする際、お客さまと連絡がとれても「まずは資料をください」と言われることが多いということに着目し、送った資料の閲覧分析をして、ご提案したいサービスへのニーズがあるのかどうか判断することにしました。Sales Docの資料閲覧トラッキング分析を活用し、「資料をよく見ているお客さま」から優先的にアプローチすることで、商談獲得率がアップし、前年比150%を達成することができました。
当社では、個人の営業経験や勘だけに頼らない営業活動を目指し、セールスイネーブルメントに取り組んでいます。今回は、その事例を一つご紹介します。
Sales Docの営業チームは、人数が少なく、かつ営業経験の少ないメンバーで構成されており、営業活動のリソースは量・質ともに不十分でした。このような状況下でも成果をだすため、営業活動をできる限り標準化する方針を立てたのですが、ここで一つの課題が出てきました。アプローチの方法や頻度、回数、トーク内容は、スクリプトなどを活用すればある程度標準化できますが、アプローチの優先順位については、客観的な指標が少なく、標準化が非常に難しかったのです。
そこで、新規アプローチ時、「まずは資料をください」と言われることが多い事実に着目し、送った資料を「いつ」「誰が」「どこを」「どれくらい」見ているか分析することで、ニーズと検討タイミングの可視化を図りました。
結果、経験の浅いメンバーでも初月から成果を出し、一人当たりアポイント獲得率は前年比2倍、商談獲得数は150%を達成することができました。「資料をよく見ているお客さま」から優先的にアプローチすることで、不要なアプローチを減らしつつ、商談数を増やすことに成功したのです。
さいごに
今後ますます営業分野のテクノロジー活用は進んでいくと想定されます。セールス・イネーブルメントの概念にあるように、営業部門だけでなく、関わる部門含めて一貫した施策設計をおこない、営業活動の最適化を実現しましょう。