成長率No.1の人材サービス企業が マーケティング改革で"弱点"を克服!
企業の新卒・中途採用支援をはじめ、人材紹介・派遣、個人の就職・転職支援など、人材関連の各種サービスを総合的に提供する株式会社ネオキャリア(東京都新宿区)。「人材・IT・グローバル」を3つの軸としてビジネスを展開し、現在、人材サービス業界ではトップの成長率を誇る。
そんな同社は今、人事領域のデータを横断的にマネジメントできる国内初のプラットフォーム「jinjer」の提供開始にともない、営業・マーケティングの大改革を行っている。その取り組みについて、専務取締役副社長の加藤賢氏、経営企画部の東出康義氏、小口敦士氏に話をうかがいました。
お客様プロフィール
専務取締役副社長
加藤賢氏
経営企画部
東出康義氏
経営企画部
小口敦士氏
設立 | 2000年 |
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従業員数 | 1698名(2016年5月末時点) |
資本金 | 3億5570万2890円 |
事業内容 | 人材総合サービス |
BtoCの"弱点"を克服しながらBtoBの強みを活かす
- 富田
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まずは御社の概要とサービスの特徴についてご解説ください。
- 加藤氏
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弊社は典型的なベンチャー企業の色が濃い会社です。中でも若手人材が活躍しているのが特徴で、20~30代が全社員の9割以上を占め、平均年齢は28~29歳です。
会社としてはこれまで、「人材・IT・グローバル」という3軸をかけ合わせることによって事業を拡大してきました。そして現在は、「ビジネスモデルの変革に力を入れています。
- 富田
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どんなことに取り組んでいらっしゃるのですか?
- 加藤氏
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人材サービス業界のビジネスモデルは、企業からどれだけ求人をいただくかと、どれだけ仕事を探している方を集めるか、この2つの要素で成り立っています。その中で、これまで弊社の成長の原動力となったのは前者、つまりBtoBのほうです。一方、BtoCについては、主に他社のデータベースやメディアに頼っている状況でした。
そこで今、力を注いでいることは大別して2点あります。1つは、取り組みの遅れていたBtoC領域の自社メディアを立ち上げること。もう1つは、弊社の強みをさらに活かすため、BtoB向けの自社プロダクトを作ることです。
- 富田
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そのプロダクトというのが、2016年1月にリリースされたクラウド型人事プラットフォーム「jinjer」ですね。
- 加藤氏
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はい。従来、人事という領域で主になされてきたことは、基本的に採用部分のみで、それ以降の社員の定着・育成・活性化の部分にはあまり目が向けられてきませんでした。人事戦略を立てる上で不可欠であるはずの勤怠や給与、人事評価などの情報がバラバラに管理され、ブラックボックス化されていたのです。
そうした課題を解決するものとして開発したのが「jinjer」です。これによって、人事領域に点在する採用・勤怠・労務などの情報を一元管理して課題を可視化し、業務効率の向上と経営の支援を実現できます。
- 富田
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人事領域のデータを横断的にマネジメントするプラットフォームとしては国内初のものだとうかがっています。
- 加藤氏
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そうですね。今、欧米では人事ビッグデータが"宝の山"として大きな注目を集め、HRテック市場が急成長しています。弊社としては日本でも、過去16年間でおつき合いのあった企業とのネットワークを活かし、「jinjer」という新たなプロダクトで人事戦略の最適解を提供していきたいと考えています。
ただ、今までの弊社の営業手法は、テレアポで新規提案するという形に限られていました。のちほど詳しくお話ししますが、これからは御社にご支援いただいているインバウンドマーケティングなど、営業の手段をいろいろと増やしていき、「jinjer」の初年度3,000社導入という目標を達成したいと思っています。
- 富田
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非常に高い目標ですが、どのような企業がターゲットになるのでしょうか?
- 加藤氏
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特にターゲットは絞っていませんが、今月はいわゆる中堅企業とのお取り引きが若干多めですね。
- 富田
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そうですか。いずれにせよ、すでに導入されている何らかのシステムをリプレイスするというより、人事に関して今まで何もしてこなかった企業が対象になる、と。
- 加藤氏
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おっしゃる通りです。営業してみて改めて、Excelや紙で人事データを管理している企業が思った以上に多いと感じているところです。
カギはインバウンドマーケティングと積極的なリスクテイク
- 富田
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初年度3,000社導入という目標を達成するため、どんな施策を立てていらっしゃいますか?
- 加藤氏
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まさしく御社にご支援いただいているマーケティングの部分が勝敗を分けると考えています。弊社はこれまで、テレアポによるいわゆる"地上戦"で勝負してきましたが、それだけで3,000社すべてを獲得するのは難しい。ですので、いかにマーケティングとかけ合わせて成約につなげていくかが重要になります。正直なところ、もともと弊社の得意とする分野ではないので、大きなチャレンジではありますが、御社にサポートしていただきながら戦い方を進化させていきたいと考えています。
- 富田
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目標達成のためには、テレアポのような直接的なものだけでなく、インバウンドマーケティングの手法を取り入れなければならないということですね。「jinjer」部門はどのような組織ですか?
- 加藤氏
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営業、企画・マーケティング、開発、デザイン、テクニカルサポートなど数十名で、組織としては他社とさほど変わりません。
- 富田
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それだけでひとつのベンチャー企業並の規模ですね。ASP事業というのは性質上、2~3年経ってようやく損益分岐点を超えるケースが多い。その中で、これだけの投資をするというのはなかなかできないことだと思います。
- 加藤氏
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最初の数年間、赤字が出るのは覚悟の上で、既存の人材サービスが生み出すキャッシュフローを新規事業へどんどん投資していく。そのようにリスクテイクできるところが弊社の強みだと思っています。
- 富田
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なるほど。リリースされてからまだ日の浅い段階ですが、すでにある程度の成果は出ていらっしゃいますか?
- 加藤氏
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現在は1,000社の導入実績となっております。実際の営業で鍛えて行動力でこなしていくというのが、弊社の地上戦における"勝利の方程式"。あわせて、社内の社労士経験者による人事労務に関する研修もみっちり行っています。
問い合わせへの即応体制を整備"3分以内の対応"が勝敗を分ける
- 富田
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では、マーケティングに関するより具体的な方針をお聞かせください。
- 加藤氏
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営業を増やすより、インバウンドマーケティングでお問い合わせを増やすほうに予算を投下しようと考えています。というのも、「jinjer」にはタイミングビジネスの要素があって、焦って導入したいというお客様はあまりいらっしゃらない。ですので、アウトバウンドの営業力を強化することより、新しい人事システムの導入を検討中の方が最初に「jinjer」を見つけてくださるタッチポイントを作ることに投資するほうが効果的です。プロモーションの方法はいろいろありますが、HRやクラウド系の展示会には基本的にすべて出展する予定です。
- 富田
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そうしたリード獲得のためのマーケティングにかなり力を入れていらっしゃる、と。
- 加藤氏
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そうですね。リード獲得にある程度のお金がかかっても、自分たちでテレアポするより効率がいいのでは、という仮説を立てて取り組んでいます。そのあたりは、SEOなどで他社に先行されているハンデがあるので、あの手この手で最終的に勝ち切れるようにしたい。10年先の読めない業界ですから、短期的な利益を出すことより、投資のためのキャッシュフローを生み出す次のプロダクトやサービスを創出することを強く意識しています。
- 富田
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営業に関しては、どんな指標を持って取り組んでいらっしゃいますか?
- 加藤氏
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アポイント数やコール数、訪問数、商談数、受注数などをかなり細かく管理し、KPIマネジメントを徹底しています。「質は量からしか生まれない」「プロセスがうまくいかないのは個人の努力不足、成果が上がらないのは上司の責任」というのが弊社のスタンスですから、とにかく量を確保することが大切。その意味では完全に営業会社ですね(笑)。
- 富田
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営業の何割ぐらいがインバウンドを担当する予定ですか?
- 加藤氏
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最初はアウトバウンドを中心に、習熟度の高いメンバーから順次インバウンドに回していきますが、アウトバウンドをゼロにするつもりはありません。ただ、インバウンドによる成約のほうが多いという状況にはしたいですね。
- 富田
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その中で業務内容ごとにチーム分けするイメージでしょうか?
- 加藤氏
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そうですね。営業チームとテクニカルサポートチームとに分けて、導入社数が増えるにつれて後者をどんどん拡充していく予定です。今まで弊社には、「売って終わり」という商材が多かったのですが、「jinjer」については、お問い合わせにすぐ対応できる体制を整えたいと考えています。
- 富田
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やはり、お問い合わせにいかに素早く、正確に対応できるかが、投資対効果を向上させる上では非常に大切ですよね。お問い合わせをいただいてから3分以内が勝負で、10分経ってから電話をしてもつながらないことが多いですから。
- 加藤氏
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そうですよね、そのあたりも勉強していきたいと思います。
自社メディア活用で問い合わせ急増
PV・問い合わせ数の目標達成が視野に
- 富田
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現在、弊社のITトレンドをご利用いただいていますが、Webからのお問い合わせとしては、ほかにどんな経路がありますか?
- 小口氏
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ITトレンド以外では、「jinjer」のサービスサイト経由のお問い合わせが多くあります。加えて現在は、先日御社からご提案いただいたホワイトペーパーダウンロード型メディア(※注)からのお問い合わせが好調です。比較的企業規模の大きなお客様からもお問い合わせをいただいていて、瞬間的にお問い合わせ全体の10%強を占めています。
- 東出氏
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従業員数約5,000名クラスのお客様のリストも獲得でき、このメディアに対する印象がかなり変わりましたね。
- 加藤氏
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この領域で成功事例がどんどん出てくれば、これまでアウトバウンドのプッシュ営業しかしてこなかった弊社の他の事業でもインバウンドマーケティングを取り入れていきたいと思っています。
- 富田
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人事領域の情報を発信する自社メディア「HR NOTE」は、どのぐらいの頻度で更新していらっしゃるのですか?
- 東出氏
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営業日には毎日更新しています。
- 富田
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毎日ですか、すごいですね。当然、そのために社内の体制を整えていらっしゃるわけですよね。
- 東出氏
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編集がメインの担当者を数名置いています。これまでの掲載記事の中で特にインパクトが大きかったのは、世の中に存在するあらゆる採用管理サービスを客観的な視点でまとめたもの。「jinjer」色の一切ない記事だったにもかかわらず、お問い合わせの数が一気に跳ね上がりました。つまり、ニーズのある情報を正しく伝えさえすれば、お客様の数を圧倒的に増やしていけるということです。2016年9月までに、人事領域メディアとしてはトップクラスまでPV数を引き上げることを目標にしています。
- 小口氏
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お問い合わせの数は毎月数倍のペースで増えているので、9月までの目標達成も見えてきています。今後は、いかに質の高いリードを獲得するか、という精度の部分に力を入れたいですね。
- 富田
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今は数が重要で、だんだん質の追求へと変わっていくということですね。今後の方針として、それ以外に考えていらっしゃることは?
- 加藤氏
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短期的にはITトレンドに代表されるリード獲得のためのマーケティングに力を入れつつ、中期的には運用型広告を使って「jinjer」の世界観を広めていきたいと考えています。
- 富田
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インターネットを使ったBtoBマーケティングで可能なことにはすべて取り組む、という感じですね。貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
編集後記
人材業界で破竹の勢いで成長されているネオキャリア様。 別領域のクラウドサービスへの新規参入にも関わらず、自社の強みを活かしながら、ネットをうまく活用した仕組みを構築されています。目標も大胆でさすが成長ベンチャー! 学ぶことが多い事例です。これからもご支援させていただきます。