営業とマーケティングの業務の分断を見直し、アポイント獲得数前年比130%!"細々セミナー"を"満席セミナー"に一変させた工夫とは?|株式会社イノベーション
株式会社ネットレックスは、バーコードを活用してモノとデータを連携させ、企業の資産管理・棚卸しを支援するクラウドサービス「Convi.BASE」を開発・提供する企業だ。2005年の発売以来、資産や文書原本などの管理と活用に課題を抱える企業を主なターゲットとして多くの顧客を獲得し、導入実績は500社以上にのぼる。しかし、執行役員マーケティンググループマネージャーの須藤悟氏によれば、そんな同社にも営業およびマーケティングにおける課題はいくつもあったという。それらをいかに克服してきたかについて須藤氏にお話を伺いました。
お客様プロフィール
執行役員マーケティンググループマネージャー
須藤 悟 氏
設立 | 2000年 |
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従業員数 | 34名(2016年3月時点) |
資本金 | 4700万円 (2016年3月時点) |
事業内容 | 物品管理・棚卸し支援クラウドサービス「Convi.BASE」の開発、提供 |
人的リソースの不足、"待ち"の営業......
競合の出現でさまざまな課題が表面化
- 富田
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まずは「Convi.BASE」を中心とする御社のビジネスについてご解説ください。
- 須藤氏
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もともと別の会社でお客様の資産管理に携わっていた私を含むメンバー6名が独立し、2000年にこの会社を立ち上げました。当初はアメリカのIT企業のパッケージソフトを扱っていたのですが、「もっと簡単にオフィス資産を管理したい」というお客様からのご要望が多く、また独自製品を持ちたいという思いもありました。
そこで、バーコードを利用した資産管理支援ツールの開発に着手、「Convi.BASE」を2005年にリリースしました。2012年からクラウド型のソフトウェアとなり、現在では導入実績500社以上、全社売上の約8割を占めるまでになりました。
- 富田
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主なターゲット層はどんなお客様ですか?
- 須藤氏
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業種を問わず、管理する資産が多い大企業の経理や総務などの管理部門のお客様が中心です。加えて、従業員数は少なくても管理しなければならないモノがたくさんある企業、たとえばアミューズメント業やレンタル業などのお客様も多いですね。
- 富田
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そうしたビジネスを展開する中、営業やマーケティングにおいてどんな課題を抱えていらっしゃいましたか?
- 須藤氏
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創業当初、営業・マーケティング担当が私ともう1名しかおらず紹介いただいたお客様対応するだけの反響営業しかしていませんでした。2005年に「Convi.BASE」を事業の中心に据えた頃から徐々に営業担当者を増やし、展示会に出展するなどしてリードを集めるようになりました。
2008年頃までは市場に競合製品がなかったこともあり、展示会に参加する目的は、製品の認知度を高める程度。あとは、たまにダイレクトメールを出したり、セミナーを数か月に1回開催したりするぐらいで、お問い合わせをいただいてから対応するという、ある意味で甘いマーケティングしかできていませんでした。
- 富田
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それでもコンスタントにお問い合わせが来ていたのですか?
- 須藤氏
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ええ。製品の性質上、Webサイトの訪問数や検索数は決して多くないものの、それなりの数のお問い合わせをいただいて、年間30社ぐらいのペースでお客様を増やしていました。
- 富田
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そうした状況が、競合製品の登場によって一変したわけですね。
- 須藤氏
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そうです。弊社の製品は柔軟性や操作性が強みなのですが、競合製品と機能一覧だけで単純に比較すると大きな違いはないように見え、結局、価格や見せ方の勝負になってしまう。
営業担当者を6名まで増やしましたが、その割に売上は伸びませんでした。それで、リスティングやSEO、セミナー、展示会にこれまで以上に力を入れ、もっと積極的にお客様とつながっていける体制にしなければならないと考えるようになったのです。
体制見直しで既存顧客への対応力を強化
案件につながるニーズの掘り起こしが可能に
- 富田
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そうした課題を解決するために、どんなことに取り組んでいらっしゃいますか?
- 須藤氏
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まずは営業およびマーケティングの体制の見直しです。それまで、6名の営業担当者全員が、新規顧客を開拓しながら得意先回りも行っていたため、既存のお客様に対する営業活動を手厚くするのが難しい状態でした。
それを改めるために、新規顧客と既存顧客の担当を3名ずつに分け、既存のお客様にプラスアルファの対応を取ることのできる体制にしようと考えました。
加えて、私はそれまでずっと商品開発とマーケティングを兼務していたこともあって、リスティングやSEOを効率的に案件につなげることができず、Webからの集客に苦労していました。そこで、開発メンバーを増やしたのを機に、マーケティングに専念することにしました。
- 富田
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競合の出現によって、体制を整備する機会が生まれたわけですね。それよる既存顧客へのクロスセルやアップセルの効果は出ていらっしゃいますか?
- 須藤氏
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実は、もともと「Convi.BASE」のお客様は、解決したい課題を明確にお持ちの方が多いので、追加機能やサービスの営業は難しいかもしれない、という懸念がありました。ところが、実際に伺ってみると、「Convi.BASE」の従来とは異なる利用法や機能追加など、何かしらのご意見やご要望をお持ちだったりする。成果が出るのはこれからですが、そうしたニーズを掘り起こして案件につなげられるようになりつつあります。
- 富田
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すばらしいですね。リスティングやSEOについてはいかがですか?
- 須藤氏
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御社のITトレンドを利用するようになって、従来は検索で引っかからなかった「物品管理システム」などのキーワードでも弊社のWebサイトが上位表示されるようになり、非常に助かっています。
- 富田
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もともとWeb経由のリードの獲得というのは、Webサイト訪問者1000名で1件お問い合わせが来るかどうか、という世界です。ただ、訪問者に社名や製品名を知っていただくという、それ自体が非常に大事なことで、ITトレンドにはそういう利用方法もあると考えています。
- 須藤氏
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実は先日も1件成約したんですよ。電話でお問い合わせがあって、きっかけについて伺ったところ、「ITトレンドで最初に出てきたから」と。
- 富田
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それは嬉しいお話ですね。
- 須藤氏
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ITトレンドは1リード当たりの単価が明確で使い勝手がよく、本当にありがたく思っています。
アポ獲得数前年比130%という目標を現実的なものにした、
営業とマーケティングの業務の"切り分け"
- 富田
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マーケティングに関して、そのほかに取り組んでいらっしゃることは?
- 須藤氏
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展示会などでいただく名刺の情報をいかに活用するか、そこがスタートでした。以前は、名刺情報を手で入力してリストを作っていたのですが、さすがに非効率的ということで、名刺管理サービスを導入しました。
御社のリストファインダーのことを知ったのはちょうどその頃です。Webサイトを訪問した企業や個人を特定できると聞いて、それはいいなと。名刺情報とリストファインダーのデータを連携させ、メールを配信するようにしました。
- 富田
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なるほど。
- 須藤氏
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ただ、最初のうちはあまりうまく活用できていかなかったのです。その理由のひとつは、マーケティングがリードを集め、それを受けて営業がアポイントを取って受注に結びつける、と役割分担していたことにありました。
マーケティングは、お問い合わせや展示会での名刺交換の際にアンケートを取って、確度の高そうな方をいわゆるホットリードとし、アポイントを取る前の段階で案件登録していたのですが、それを営業に引き渡しても、そこから先へなかなか進めなかったのです。
- 富田
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つまり、実際にはホットリードではなかったと。
- 須藤氏
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おっしゃる通りです。そこで2015年秋頃から、営業とマーケティングの業務の"分断"を見直し、ホットと思われる方に積極的に電話をかけてアポイントを取るところまでをマーケティングで受け持つ、という形に変えてみました。
- 富田
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よくある話として、マーケティングはスキルやリソースの問題でアポイントの獲得を営業に押しつけ、かたや営業は「ホットでない見込み客に営業なんかできない」とはねつけてしまう。そんな中で御社は、マーケティングの業務範囲をアポイント獲得にまで拡大し、営業をコア業務に専念できるようにしたわけですね。マーケティングがアポイントを取る件数は、月間でだいたいどのぐらいですか?
- 須藤氏
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季節変動はありますが、月間20~40件ぐらい、年間320件が目標です。この年間目標は前年比130%に相当する数値ですが、おかげさまで今のところ順調なペースで進んでいます。
- 富田
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売上アップもかなり期待できそうですね。営業の方からはどんな声が聞かれますか?
- 須藤氏
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もちろんありがたいという声が多いですが、最近ではそれが当たり前になっているところもあります。この"切り分け"をきっかけとして、「このリードはよかった」「この案件は外れてもいいからリストに入れて欲しい」などと営業とマーケティングが密にコミュニケーションを取るようになったのもいい効果ですね。
リストファインダーの活用で
"細々セミナー"が"満席セミナー"に一変!
- 富田
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展示会やセミナーに関しては、どんな工夫をしていらっしゃいますか?
- 須藤氏
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かつての弊社にとって展示会は"待ち"が基本で、興味のありそうな方にだけ声をかけるような、消極的なものでした。名刺を交換しても、それを活用する手法がなかったからです。それが、先ほど申し上げた名刺管理サービスとリストファインダーの導入で大きく変わりました。
名刺やWebサイトのデータをもとに定期的にメールを送り、展示会への再度の来場を促したところ、来てくださる方の数がドンと増え、そこからの案件も増えていったのです。
- 富田
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それはすばらしい!
- 須藤氏
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セミナーについても同様です。以前はセミナーの情報をただWebサイトに載せるだけ。本当に興味のある方が2~3組来てくださればいいという感じで、社内では密かに"細々セミナー"と呼んでいたほどでした。それが、リストファインダーでメールを配信するようになって、毎回定員オーバーの"満席セミナー"に変わったのです。
- 富田
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ただメールを送るだけではなかなかそこまで変わらないと思いますが、どんな工夫をしていらっしゃるのですか?
- 須藤氏
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発信元を実際に名刺交換した担当者の名前にするなどしてOne to Oneっぽく見せたり、コンテンツの内容を変えたりしています。対象者は以前に弊社の製品に多少なりとも興味を持ってくださった方なので、弊社がどんな会社で、どんな製品を作っているかが伝わりやすい文面にし、「そういえばこういう製品があったな」と思い出していただけるよう心がけています。
- 富田
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弊社のお客様にとって非常に参考になる情報です。
- 須藤氏
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セミナーはここ1年半ほどほぼ満席ですので、1回15~20人の規模をこの春からもう少し拡大しようと考えています。
業務革新と売上増に満足せず、商談数1.5倍を目指す
- 富田
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まとめると、体制を見直してマーケティングの業務範囲をアポイント獲得まで広げたことと、リストファインダーをうまく活用して"攻め"の展示会やセミナーを実現したこと、大きくこの2点の改革によって売上を伸ばしていらっしゃるということですね。
最後に、今後の展開や解決したい課題についてもお教えください。 - 須藤氏
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名刺管理サービスとリストファインダーのデータをSFAと連携させて、顧客・案件管理の一元化を実現したいと考えています。現状では、名刺管理サービスで新しく登録されたデータをリストファンダーに移し、メールを配信するところまでは自動で行えますが、そこから発生した案件の進捗状況などの情報については、別のシステムに手で入力して管理しなければならないので。
- 富田
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確かにそこは改善の余地がありそうですね。
- 須藤氏
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もうひとつの課題は、営業がまだリストファインダーを使いこなせていないことです。今はマーケティングが案件を登録し、それを受けて営業が動く形ですが、営業自身がリストファインダーを使えれば、たとえば展示会の来場者やWebサイトの訪問者にすぐにお礼のメールを送りたい場合にも、自分の判断で実行できるようになります。
- 富田
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実はその点については、リストファインダーについての新たな取り組みとして、名刺管理サービスなどを通さず、スマートフォンのスキャナで名刺情報を読み取り、その場でお礼のメールを送れる機能を搭載したいと考えています。相手がメールのURLをクリックすると個人を判別できる仕組みです。既存のお客様のWebサイトへの訪問がわかるのは非常に価値のあることですから。
- 須藤氏
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それはぜひ利用してみたいですね。弊社は、今夏をめどに「Convi.BASE」の大幅なバージョンアップを予定していて、それに合わせてWebサイトやお客様へのアプローチの方法を変えようと考えています。現状、商談につなげるきっかけとしてのWebサイト経由の流入がまだまだ少ないので、その向上に力を入れて、商談数を1.5倍ぐらいに増やしたいですね。
編集後記
会社の成長とともにマーケティングを変革していったとても参考になる例です。
一般的にネットレックス様と同程度規模の法人営業では、営業マン1人が見込み客の獲得からアポ取り、サービス説明、商談管理、クロージング、そして既存顧客対応とすべてを行っているケースがほとんどです。すべてのことを同じ営業が行うため多くのムダが生まれます。これを整理して組織化することで効率よく部門運営が図れるようになりました。
また、セミナー運営も興味を持っている方だけにメール配信をしたりなど、種々の工夫をすることでも生産性を向上させています。 弊社サービスも上手にご利用されている事例です。さらなる生産性向上のためにお手伝いをさせていただければと思います。