INNOVATION

インタビュー 「マーケティングイノベーター」 -BtoBマーケティングの変革事例-

株式会社Donuts

同じ営業人数で契約数を10倍に!圧倒的な成果を実現した「サービスと業務の自動化」とは。

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株式会社Donuts石山瑞樹氏と株式会社イノベーション富田直人

2007年、高田馬場にある10坪のアパート1室からスタートした株式会社Donuts。今や売上高88億円(2015年度実績)、社員数150名の規模へと拡大しています。ゲーム事業に加えて、もう一つの事業の柱になっているのがWebサービス事業であり、Donuts唯一のBtoBサービスであるジョブカンもここ数年で急速に成長しています。もともと自社のために開発したクラウド勤怠管理サービス「ジョブカン」を2010年にサービス化し、販売を開始。2015年度ITトレンド年間ランキングの勤怠管理カテゴリーにおいて1位を獲得しています。急成長を生み出した営業戦略とWebマーケティング手法について、ジョブカングループサービス責任者の石山瑞樹氏に話を伺いました。

お客様プロフィール

株式会社Donuts

株式会社Donuts

ジョブカングループサービス責任者

石山 瑞樹 氏

設立 2007年2月5日
従業員数 150名(2015年4月現在)
資本金 7,777万円(2015年1月末現在)
事業内容
  1. モバイルゲーム事業
  2. Webサービス事業

イノベーションのサービス利用実績

  • ITトレンド

当初は全く売れなかった 勤怠管理サービス「ジョブカン」。
サービスの改善から着手。

富田

このたびはお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。まずは御社のことを教えていただきたいのですが、我々のイメージではゲームなど、BtoCのイメージが強いのですが、創業からBtoBサービスの立ち上げまでを教えていただけますか?

石山氏

そうですね。当社はDeNAの新卒1期生だった代表の西村と取締役の根岸が、自分たちでサービスを作っていきたいという思いから会社を立ち上げ、今年で10年目となります。最初の数年は受託開発で生計を立てながら、利益構造ができてからは自社サービスに力を入れ、実は最初に作ったものの1つが、クラウド勤怠管理サービス「ジョブカン」なんです。ただ、その後の2年間くらいはうまくいかなくて、ゲーム事業で潤ったところで、ちょうど4年前「もう一度チャレンジしたい」となったときに、僕が参加しました。

富田

BtoC事業を展開している会社が、BtoB事業を始める際、一般的に立ち上げが難しいと言いますが、御社の場合はどうだったんですか?

石山氏

サービスを立ち上げるまではスムーズに出来たみたいですが、そこからの拡販については少し苦労していました。ただ、僕の方で営業をしてみたところ、このサービスは良いサービスだから工夫すれば大きく成長する可能性があると感じました。理由としては2つありまして、1つ目は他の勤怠管理システムと比べUIが良く使いやすいと感じた事。2つ目はクラウドの勤怠市場がブルーオーシャンだったことです。現状売れていないのは、販売方法や営業体制、機能拡張の強化が足りていないだけだと考え、着任してすぐに、料金体系の変更、メンバーの増員、必要機能の洗い出しをおこないました。

富田

マーケティング面での取り組みはいかがですか?

石山氏

色々と試してみた結果、アウトバウンドの営業は非効率だということがわかった為、インバウンドの営業に力を入れる事にしました。そのため、いかにして問い合わせ数を増やせるかを意識し、Webマーケティングに注力しました。もちろん最初に取り組んだのはSEOやリスティングです。ちょうど3年前くらい前でしょうか。ある程度、上位表示されるようになり、業界でも最上位のリード件数を集められるようになりました。
競合のリード数をヒアリングしてみると、だいたい同件数まで迫っていたので、このあたりが勤怠管理市場の限界かと一瞬感じた事もありました。普通ならここで辞めてしまうと思います。けれど、満足することなく、いろいろとチャレンジを続けてきたことで、現在はその10倍くらいにまで増えたのです。

株式会社Donuts石山瑞樹氏

Webアカウント発行を自動化。
資料請求に至る前のお客様の取り込みに成功。

富田

10倍ですか、それはすごいですね。無料トライアルを始めたことも大きいのでしょうか。

石山氏

それは秘密でよろしいでしょうか(笑) ただ、何か一つの施策が劇的にヒットしたというよりは色々な成功要因が合わさったからここまで来れたんだと感じています。我々の結論としては、どんなにSEOとかSEMで上位をおさえられても、プラスアルファの魅力がないと相乗効果は生まれないのかなと。

富田

具体的にはどんな取り組みをされたんですか?

石山氏

当社では毎年、事業計画にイノベーティブなテーマを掲げるようにしていまして、2014年は無料プランをはじめとした「販売方法の改定」、2015年はWebアカウントなどの「自動化」をテーマに変革を行いました。実際この二つに関しては成功したと感じています。ただ実は、無料プランもWebアカウントの自動化も、追加した当初はそれほど大きな効果はなかったんです。単体で見れば、そんなに効果は高くなかったということですね。けれど、そういった様々なチャレンジを行い、他にはないジョブカンの魅力的なサービス内容を伝え続けてきたことで少しずつ認知があがり、ブランディングが確立していったのだと思います。ITトレンドさんで上位にくるようになったのも、認知度拡大やブランディング効果としては非常に大きかったと感じています。

富田

Webアカウントの自動化とはどういったものですか。

石山氏

Web経由の資料請求とは別に、公式サイトから自動でWebアカウントの発行をできるようにしました。

富田

無料であることに加えて、問い合わせをしなくても試用ができる、ということがお客様のハードルを下げたということですね。

石山氏

そうですね。Webサービスやモバイルゲームでもそうですが、今や無料で試してみるというのは当たり前の時代になってきていますから。そこで試して良さそうなら有料版も検討するといった流れができてきたと思います。

富田

BtoBのサービスの場合、資料請求したら絶対と言っていいほど営業かけられますから。営業されたくないけどどんなサービスか見てみたいというお客様にはありがたい機能ですよね。あとは、ITトレンドで上位をとったのも大きかったと。

石山氏

ランキング上位を目指して、様々な工夫を凝らしました。競合がやっていない新たなサービス内容の追加や機能の追加開発、それらを差別化して訴求したり、ABテストとして毎週のように文言を修正したり。そして昨年ようやく1位を獲得できました。今はもうITトレンドを活用しないことは考えられないですね。それと1位を取ったことで、ITトレンドさん経由での資料請求がくるだけでなく、もう少し詳細を調べようとHPに来て資料請求をされる方もいて、その恩恵は大きいですね。

富田

我々はそこも含めてサービスをつくっているつもりでして、そう言っていただけるとありがたいですね。

インタビュー風景

サービスの自動化に加えて営業の自動化も進めることで、
少人数での営業体制を確立。

富田

Webアカウント発行の自動化は、クラウド型サービスを展開しているIT企業にとっては非常に参考になるお話かもしれませんね。ただ、なかなか踏み切るのも難しい。競合にも情報がオープンになるし、営業がリーチしにくくなるかもしれない訳ですから。連絡をしてほしくないお客様の割合が増えるなかで、そこに対してどんなアプローチをされたんですか?

石山氏

最初は全部電話をするという方法を約1年続けました。成果もあがっていました。けれど、中には嫌がるお客様もいて、そこだけは改善しないといけないと思っていました。結果たどり着いたのが、アカウント発行直後に管理画面内のポップアップで「営業の電話を希望するorしない」といったアンケートを差し込むという手法です。営業には参考にしながら優先順位を決めるように言っています。

富田

でも営業としては、リードがほしいので、全部電話したくなりますよね?

石山氏

資料請求だけでもかなりの数があるので、数が減って喜んでいましたよ(笑)。あと、営業を希望するお客様だけに力を使う事ができるようになり、むしろ効率が上がったと思います。

富田

ここまでリード数を大きく増やしながらも、営業の人数が変わっていないのは凄いですね。

石山氏

そうですね。人数をあえて増やさないわけではなく、適正化していった結果、増やす必要が無かったというだけですが。半年〜1年かけて手動でテストしてきた内容をマーケティングオートメーションツールに落として、アプローチ方法、クーポン発行のタイミング、お客様の設定状況によるスコアリング化、それによって電話をかけるタイミングを決めるなど、いろいろとブラッシュアップして、今に至る感じですね。結果、契約数は約10倍に増えたにもかかわらず、メンバーは1.2倍程度とほぼ変わらずの構成で回すことに成功しました。

富田

それはすごい。サービスだけでなく、業務の自動化も進めているわけですね。

石山氏

ほかにもいろいろと自動化を進めていまして、2015年にクレジット決済機能と、自動で申し込む機能も付けました。入口と出口を自動化したわけです。さらにチュートリアルも実装し、操作説明動画も作りました。また、営業面でも効率化を追求していて、最近では「ジョブカン」の説明会なども開いています。実は3年前くらいに1回、説明会を開いた事があるんですけど、1か月告知して1社も集まりませんでした。それが、今は週2回開いていつも満員御礼です。これはITトレンドさんなどで知名度があがったおかげかなと思っています。

株式会社Donuts石山瑞樹氏

勤怠管理業界の「ゼクシィ」を目指して、
新たな挑戦は続いていく。

富田

少ない人数で大量のインバウンドをこなして、ナーチャリングをしていくというのは、すごい自動化をされているんですね。BtoBですけれど、BtoCくらいの数と運営をされているのがすごいなと。これまで苦労もたくさんあったと思いますが、実績を出してこられた秘訣があれば教えて下さい。

石山氏

そうですね。入社してから4年間、毎週、1〜2個は新しい施策をみつけてくるというのをコミットし続けている事ですかね。あと、広告施策などについてはCPAで撤退ラインをきっちり決めた上で、良さそうな施策は全て試してみてみるというスタイルですかね。良いところは続け悪いところはやめるという作業をひたすらしていますよ。一方で、営業の感覚なんですけれど、数字だけで判断しないようにもしているんです。

富田

一見矛盾していますよね?

石山氏

マーケティングだけで営業をやったことのない人にありがちなのが、例えば、アンケートで8割の人がそう思っているらしい、という結果を見て進んでしまうこと。僕が客観的に思うのが、これはあくまでアクティブなユーザーに、アクティブな意見を聞いただけですよね。その後ろにはアンケートを書かないという大半の人がいる。だから、数字はあくまで参考レベルとし数字が出ない部分で見落としている事はないかと考え、最終的に仮説や結論を出すようにしています。

富田

当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないってよくありますよね。いかに本質を見抜くか。人は一般的に流されてしまいますよね。いいお話です。最後に今後のマーケティング戦略を教えてください。

石山氏

僕は、勤怠管理業界の「ゼクシィ」を目指そうと思っています。結婚式をあげようと決めたカップルの7割が最終的に「ゼクシィ」にたどり着くという話を聞きまして、それって知っている人は当たり前に「ゼクシィ」を選び、知らない人も広告で見つけやすい状態になっているということですよね。「ジョブカン」もそんな風にブランディングや認知を広げていきたいと思っています。あとは、サービス領域の拡大と海外展開にも挑戦していきたいですね。

富田

これからも楽しみですね。今日は本当にありがとうございました。

編集後記

絶えず新しいチャレンジを続けて大きな実績を挙げている、まさにイノベーターの事例です。特に問い合わせをしない、営業されたくない見込み顧客にフォーカスし、「自動アカウント機能」を実装。仕組み化して成果を上げている所が参考になります。スピーディなPDCAがポイントです。商談単価が安価なクラウドサービスを扱うIT企業への最高のお手本だと思います。ありがとうございました。

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